大規模山崩れで“せき止め湖“が・・決壊の危機に住民が避難
湖北省の西部・恩施トゥチャ族ミャオ族自治州で7月21日、大規模な山崩れが発生。土砂が長江の支流の清江になだれ込み、川をせき止めた“せき止め湖”が出来た。清江はこれまで水位が上昇し、17日には自治州の中心部・恩施市に水が流れ込み街が冠水する大きな被害が出ていた。山崩れ現場では川がせき止められて水位が上昇し、決壊の恐れもある。
決壊すればさらに大きな被害になるのは目に見えている。地元当局は、死傷者はいないとし、周辺の住民約8400人を緊急避難させた。たまった水を流す措置をとってある程度、水を排出し、徹底監視を続けており、水位は下がり決壊の恐れは低くなっているとしている。
この記事の画像(10枚)しかしSNSには、一帯では道路に大きなひびが入り、家屋が傾き、住民の目の前でがけ下に崩れて落ちる様子などが投稿されている。さらなる土砂崩れが起きないとは限らない。水道も一時供給が出来なくなるなど住民の苦境は続いている。
三峡ダムは“第3のピーク”が来る~批判とダムへの疑問の声
世界最大級の三峡ダムは、依然として高い水位が続く。最高水位175mに対し、7月20日に164mまで迫った水位はいったん下がり始めた。7月24日には159m台となり水の排出量が流入量を上回っている。ただ、中国メディアによると、当局は、長江流域でさらに雨が降ると予想されるため、27日ごろにかけてダムへの水の流入量が再び増加し、第3の洪水ピークが来ると想定。三峡ダムの水の排出量が引き続き増えるため、長江下流域の各地でさらに水位が上昇することになると警戒を呼び掛ける。すでに被害が出ている地域でまた水位上昇が懸念されている。
ダムの水位上昇が伝えられ始めて以降、決壊しないか、など不安の声が絶えない。ダムの運営当局は中国メディアに対し、「ダムの運営状況は安全で、変形するなどの問題は起きていないし脆弱ではない」と安全性を強調した。中国のネット上でも、「三峡ダムがなかったら被害はもっと広がっていた。感謝しないといけない」「ダムは十分頑張ったから責めないで欲しい」という声がある。
ただ一方で、そもそも長江流域の洪水対策が大きな目的で建設された三峡ダムの治水効果に疑問の声があがる。ネット上には「結局、洪水の時期にはダムを守るために大規模に放水し、下流域の被害を拡大させる」「あってもなくても同じだ。作らないほうが良かった」などの批判が根強い。
中国共産党機関紙・人民日報は「これまでダムは107億立方メートルもの水をせき止めた」と効果を強調するが、長江やその支流、多くの巨大な湖などで警戒水位を超え、記録的な貯水量になっている現状がある。ダムや水門を開き放水せざるを得ない状況で、家が冠水し避難する人が多数にのぼっている。ある中国人は「そもそも洪水を防ぐために金をかけて多くの人に影響を与えて巨大ダムを造ったはずだが、これだけの被害が出ているのを見れば、三峡ダムは役立たずではないか?」と怒る。
被災者4500万人・・記録的被害の洪水に中国政府はどう対応するのか
中国メディアは7月22日、政府発表として6月からの被害状況を伝えた。被災者が27の省や市などでのべ4552万3000人、死者行方不明者142人、倒壊家屋が約3万5000棟、経済損害は1160億5000万元(約1兆8000億円)にのぼるとしている。記録的な被害は一層拡大しているが、同時に「直近5年の同期の平均値と比べると、被災が原因の死者・行方不明者の数は56.5%減、倒壊した家屋は72.4%減、経済損害は5%減」と、今回の被害がことさら大きいわけではないと強調するような言及をしている。
被害拡大を受け、中国政府は15日、17億5500万元(約265億円)を水害対策の資金に充てると発表している。経済への悪影響を少しでも食い止めようとするものだが、、ネット上には「これだけの被害が出ているのに、足りるのか」など、政府対応への批判の声が多い。だが、削除されている書き込みは少なくない。
収束が見通せない中、対応が遅れれば政府批判が強まりそうだ。
【執筆:FNN上海支局 城戸隆宏】
【中国マップデザイン:さいとうひさし】