3Dプリンターで作られた「土」の家が、熊本・山鹿市で公開された。
高温多湿な日本の気候風土に適した材料を使用し、湿度調整機能や断熱性が特長。
将来的には廃棄物を最小限に抑え、自然に返すことが可能で、職人不足の解決も期待されている。

3Dプリンターと土でやさしい家

3Dプリンターでつくった「土」の家に迫った。

3Dプリンターで作られた土が原料の家
3Dプリンターで作られた土が原料の家
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28日、熊本県の山鹿市で報道陣に公開されたのは、円柱の形をした小さな家。

3Dプリンターで作られたモデルハウス
3Dプリンターで作られたモデルハウス

熊本竜太記者:
こちらが、3Dプリンターで作られた住宅です。高温多湿な日本の気候風土に適しているといわれる土が、主な原材料に使われています。

国内で初めて土を原料に、建設用3Dプリンターで建築した住宅。土と石灰などを混ぜ、壁を積み上げていき、乾燥させる。

湿度を調整する機能や断熱性に優れているのが特長で、従来の建築に比べて、二酸化炭素の排出を削減。

廃棄物を最小限に抑えるほか、最終的には自然に返すことができるという。

従来の建築方法より工期を短縮できることから、職人の高齢化や、人材不足の課題解決も期待されている。

開発したメーカーは ──。

Lib Work・瀬口力社長:
土はいろんなところで古代から使われてきた建築素材だったので、そこに着目して、耐震性能という点でもクリアできるのではないかと、土を活用した。    

地球にやさしい持続可能な家づくりを目指し、2025年からの一般発売を目標に、3Dプリンターハウス事業の拡大を狙う。

土地に適した素材活用の最適化へ

「Live News α」では、コミュニティデザイナーで、studio-L代表の山崎亮さんに話を聞いた。

堤 礼実 キャスター:
── 住宅建築にくわしい山崎さんは、3Dプリンターでつくる家、どうご覧になりますか?

コミュニティデザイナー・山崎亮さん:
デジタルデータをもとに、土や木、あるいは金属などの素材を加工するデジタルファブリケーションは、3Dプリンターの登場で飛躍的に可能性が広がり、今回のように「土の家」もつくれるようになった。

デジタルデータは世界中で共有することができて、必要な人のところに必要なデータを届けて、空間を出力することができる。

さらに、もう1つのポイントとして、デジタルデータを一部変更し、自分たちの国や地域の気候風土に合うようカスタマイズすることもできる。

そうなったとき、どんな素材を使って出力するかが次のテーマになる。これは3Dプリンターを活用した家づくりにおいて、特に重要になってくると思う。

堤 礼実 キャスター:
── 今回は主に「土」を使った家づくりということですが、これについては、いかがですか?

コミュニティデザイナー・山崎亮さん:
快適に過ごせて、長持ちする家づくりでは、地域の気候風土が育んだ自然な素材を使うと良いとされている。

コンクリートと鉄でつくる建築が一般的になった今では、「土」で家をつくるというと意外に感じる方もいるかもしれないが、瓦や西洋建築のレンガは、「土」を焼いたものだし、日本建築のしっくいの壁も、「土」を練ってつくっている。土蔵など「土」でつくった蔵もあるので、建築の素材としての「土」は、地域の風土や実情に合わせて使われてきた。

何でも活用=適した材料問われる

堤 礼実 キャスター:
── 土や木などの自然な素材を使った、ものづくりの可能性が広がるといいですね。

コミュニティデザイナー・山崎亮さん:
今は扱いやすいプラスチックのような素材がよく用いられているが、3Dプリンターを活用すると、木くずを集めて成形することもできるし、土や砂から成形することもできる。

それぞれの国や地域に合った材料を使って出力できるようになれば、使用後にまた自然に戻すこともできる。さらに、材料だけを再利用して、新しいデータを出力することもできるだろう。

世界のどこでも、データさえあれば、ものを出力できるようになるからこそ、何を材料にするのかが問われる時代になっていくだろう。

堤 礼実 キャスター:
最新技術と自然が掛け合わさることで、運搬や加工のコスト削減につながるだけでなく、環境にも優しいものづくりが進んでいくことを期待したいです。
(「Live News α」2月28日放送分より)

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