元日に発生した能登半島地震では、多くの場所で、「液状化」による被害が確認された。2011年の東日本大震災でも発生した「液状化」。専門家は、全国どこでも起きる可能性があると指摘し、「自分事」として捉える必要性を訴える。
浮き上がる歩道 溢れる泥水
元日に発生した能登半島地震。
地震発生時の石川県内灘町で撮影された映像では、町が大きな揺れに襲われ、歩道が割れるように浮き上がり、泥水が溢れてくる様子が撮影されていた。
この記事の画像(14枚)このように今回の地震では、多くの場所で”液状化”とみられる現象が起きた。地震の発生から1カ月以上が過ぎ、復旧への歩みを進めようとする被災地に、”液状化”が今も大きな爪痕を残している。
「液状化」発生のメカニズムは?
森口准教授によると、建物を支えている地盤は、砂や土、地下水、空気などが混ざりあってできていて、平常時は、砂の粒同士が支え合いその間に空気や地下水がある。
これが、地震により地盤が揺さぶられると、支え合っていた砂の粒はバラバラになり、地下水に浮いたような状態になる。やがて、重いものは沈み軽いものは浮かび上がる。
この時、地盤が沈下したり地下水や泥、砂が地表に噴き出したりする現象が”液状化”だ。
液状化が発生することで、「マンホールが地面から出てくるような被害や、家が沈下したり、横に動いたりというような被害が出る」と森口准教授は話す。
東日本大震災でも“避難行動”に影響
液状化は、2011年に発生した東日本大震災でも確認されていた。
宮城県南部の亘理町荒浜地区。この場所にある宿泊施設で液状化による被害があった。水道管が破裂したと思うほど、水と砂がボコボコ湧き出てきて、地面が隆起しているのが、見える状況だったという。
当時この施設に勤めていた、町内に住む佐藤さやかさんは、身近な場所で町をゆがめてしまう液状化の被害を目の当たりにした。
佐藤さんは、災害発生直後の”避難行動”にも少なからず影響があったと振り返り、「(液状化で)道路が使えないというのは命にかかわることなので、こういう現象があることを、心の片隅にでも残してほしい」と訴える。
全国どこでも 「液状化」の可能性
地盤工学を研究する東北大学大学院工学研究科の加村晃良准教授は、能登半島地震の被災地で起きたことは、全国どこでも起きる可能性があり、特に埋め立て地や造成された場所では発生しやすいという。
その一方で、対策には難しさもある。加村准教授は、「費用面を考えないとすれば、人口集中地域を改良するという選択もあるかもしれないが、費用面以外にも、今動いているインフラとか、動いている社会を一旦止めて改良するというのは、非現実的な話」と、費用面に加え、地盤を改良する場合は”地区単位”で行う必要性があると話す。
リスクを正しく理解 「自分事」として想像を
では、液状化の危険性に備えるためにはどうすればいいのか。
国土交通省のホームページには、47都道府県のハザードマップが公開されていて、そこから、自分が住む市区町村の液状化の危険性を確認することができる。
加村准教授は、こうした情報を踏まえたうえで、「リスクを正しく理解し、もしもの時を想像することが大切」と考えていて、「地盤が揺らされて液状化が起こって、沈下したり地盤が流れてしまったりして、水道管が切れるとか、電線がずれるということが考えられるので、そのような時に公的支援がくるまで自分たちで備えられるか。準備しておけるかどうかが重要な観点」と指摘する。
いつ、どこで起きるかわからない災害。自分事として捉えることが大切だ。
(仙台放送)