年間約5メートルの雪が降り、190万人以上が暮らす札幌市。
世界的にも珍しい“豪雪大都市”で私たちの生活を守るため、日夜働く除雪作業員の24時間に密着した。
未明にガタガタ路面を削る除雪グレーダ
札幌市手稲区の幹線道路。
午前1時30分、住宅街の除雪が進められている。

交通量の減る未明に働く除雪グレーダ。
車体中央のブレードと呼ばれる大きな板でガタガタ路面を削り取っていく。
オペレーターは9つのレバーを操り角度や押し付ける力を微妙に調整し、まさに熟練の技だ。
削り取られた雪は後続のショベルカーが集め、ガタガタ路面はものの30分できれいに。
雪のシーズン中、これが札幌の未明の日常だ。
手稲区南地区の排雪実状
「これが南地区の排雪。オレンジが通学路で通学路を優先。次に黄色が狭小バス路線」(手稲区南地区除雪センター 佐藤友洋センター長)
手稲区にある南地区除雪センターだ。

ここでは手稲山付近のほか稲穂、富丘などの地区の道路と歩道の除排雪を担当。
地元の建設会社8社が市から委託されている。
「(Q:どのくらいの距離を?)道路は280キロほど。そのほか歩道も別に90キロくらいやっている」(手稲区南地区除雪センター 佐藤センター長)
24時間態勢で除排雪の指示
センターは24時間態勢で除雪業者が待機し、除排雪の指示を出す。

「基本は10センチ以上の降雪があった時に除雪。道路状況によって昼に解ければ夜に出ない場合がある」(佐藤センター長)
札幌市の基準では、降雪量が10センチを超えると新雪除雪として出動。
このほか重要なのが除雪を計画的に行うための毎日のパトロールだ。
「(Q:道路がガタガタしている?)新雪除雪だと結構降ったから除雪に出ようとなり、わかりやすい。部分的にザクザクして(除雪に)出ようというのは見て歩かないとわからない」(手稲区南地区除雪センター 寺本亮介 副センター長)
路面の雪が解けると交通に支障が
1月29日の札幌市は日中3度まで上昇。
このようなプラス気温で市民が困るのがザクザク路面だ。
圧雪された雪が解けて交通に支障が出る。
密着したこの日も路面の雪が解けてザクザクに。

「吹きさらしに近いから抜けていたので、場所によって吹き溜まりがひどかった」(除雪業者)
気温がプラスの時は“路面を平らにする作業”
「(Q:きょうはどんな作業をする?)きょうは路面整正」(除雪業者)
「路面整正」とは圧雪路面の「でこぼこ」や「わだち」を削り、平らにする作業。安全確保のため2人一組で行う。

山側の住宅街で、ショベルを巧みに動かし、たまった雪も難なく除雪。
市民からセンターに電話が相次ぐ
そのころ除雪センターでは。
「すいませんご住所は?」(除雪業者)
「これから現地に確認しに行く」(除雪業者)

市民から除雪の問い合わせが相次いでいた。
多いときは一日50件以上となることも。この問い合わせで緊急性が判断されると急遽、出動することもある。
除雪車も悩む「雪の捨て場」
一方、豪雪都市ならではの悩ましい問題も。
「除雪車も(雪を)捨てるところがない。置くところもないし大変」(手稲区民)
雪の置き場所は常に悩みの種だ。
すると除雪車に声をかける男性が。

「そこにバーッて置いていいから」(手稲区民)
「ありがとうございます」(除雪業者)
「雪を持って行くところがない。自分の家で空き地だから。結構、子どもたちが通る。登下校で」(手稲区民)

「すごくうれしい。運んで行ってどこに置こうか考えている。『(雪を)ココに押していっていい』といってくれた時はすごくありがたい」(除雪業者)
1日平均約3000トンを排雪
さらに市民の関心が高いのが排雪だ。
大型ロータリー除雪車が路肩の雪を次々とダンプカーに積み込んでいく。

「(Q:何台くらいダンプが必要?)50台くらい必要だけど、2024年はまだ雪が少ない」(手稲区南地区除雪センター 佐藤センター長)
この除雪業者の1日の排雪量は平均して約3000トン。
排雪後はバックホーやショベルカーが登場する。

「電柱すれすれまで当たらないようにバックホーをかけています」(井戸ディレクター)
未明から午前6時まで続く作業
排雪作業は通勤通学ラッシュ前の午前6時ごろまで続く。
このように昼夜問わず働き続ける除雪作業員。現場からは変則的な労働環境に不安の声も。

「これから労働の時間の問題が出てくる。結構うちの従業員も時間の管理をしているけどギリギリ」(寺本 副センター長)
一方で市民は。
「きれいに持って行ってくれてありがたい」「見通しを良くしてくれて助かった」(いずれも手稲区民)
きょうも除雪業者が市民のために、“冬の交通インフラ”を支えている。