1月に羽田空港で起きた日本航空と海上保安庁の航空機による衝突事故を受け、2月6日、国土交通労働組合が求めたのは航空管制官の大幅な増員です。

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国土交通労働組合:
乗客や乗員の命を守るためには増員が必要不可欠であります。私たちの要求に対しまして十分に配置されているとは言えない状況となっています。

多くの命を預かる現場が、直面している厳しい人繰り。
さらに、会見から見えてきたのは、航空管制の現場が直面している厳しい現状でした。

国土交通労働組合:
オープンスカイやインバウンド政策による国際線の増加、国内線においても、LCCをはじめ、機材の小型化による管制取り扱い機数が増加をする中で、定員合理化による削減により、思うように実員の配置が増えず一人当たりの業務負荷は、増加する一方となっています。

事故後、国交省は再発防止のため、滑走路への誤侵入を常時レーダー監視する人員を配置。
しかし 労働組合によると、この人員は新規の増員ではなく、内部で役割分担を調整することで、ねん出しているため「1人当たりの業務負担が著しく増加している」と指摘しています。

元管制官「業務量が増えているのは間違いない」

現場で働く人たちの負担を抑えつつ、「空の安全」を守るには、どうすればいいのか?
中部国際空港などで17年間、航空管制官として勤務した田中 秀和氏に話を聞きました。

国土交通省が公表したデータによると、航空機の数はコロナ直前の2019年まで右肩上がりで増加。コロナ禍で大きく減少するものの、その後は増加傾向にあります。
一方、航空管制官の人数は、航空機数が増えているのに対して減少しているのです。

――会見はどうご覧になりましたか?
元管制官 田中 秀和氏:

労働組合の方は不足とまでは言っていないのですが、取り扱い機数が増えている中、管制官が増えていないので業務量が増えているのは間違いないと言えますし、今回の主張はよく分かります。ただ、今回の声明を全文私も拝見しましたけども、客観的な情報の発信を労働組合が求めているにもかかわらず、事故調査の結果が出ていない現段階において「増員が必要不可欠」と言うことは論理破綻ではないかなと思いますし、人員に余裕がないことが事故原因であるかのような誤った印象を与えるのではないかと思っています。

――原因の究明と今後の対策が大切だと?
元管制官 田中 秀和氏:

そうですね、やはり原因の究明が何よりも大切で、それまでにできることをやるというのが大切だと思います。

今回の事故をめぐっては複数の人的ミスが重なって起きたとの見方が強まっています。

出発の順番を取り違え、滑走路に誤侵入した海保機。それを視認できなかった日航機。そして、管制官は、誤侵入を知らせるシステムを見落としてしまった可能性が指摘されています。

元管制官 田中 秀和氏:
まず現状において、テクノロジーは万全ではなくて、穴があるといいますか、人に頼る部分が大きいと思います。その上で、今回ヒューマンエラーの重なりにおいて事故が起きたのではないかという指摘がありますので、そのような中、人の補充だけで再発防止となるのか? それで十分なのかというところに関しては慎重な議論が必要だと思います。

――海保側と管制室で言葉の認識の違いなどは?
元管制官 田中 秀和氏:

それはまず無いと思います。それは断言できると思います。我々管制官からすると、どちらかというと海上保安庁機は民間機の扱いで、自衛隊機のような軍用機ではありません。ですから旅客機と常に同じような扱いをしますし、運行もより民間機に近い。任務は違いますけども、航空機の運航に関して差はありませんし、通常であれば「ナンバーワン」を離陸許可と取り違えることはあり得ないです。

現在行われている緊急対策としては、滑走路進入に関する管制用語の周知徹底など「基本動作の徹底」、管制官が誤進入を常時監視、「ナンバーワン」などといった離陸順を伝えることは当面停止する。また、パイロットによる外部監視の徹底・視覚支援として滑走路手前の停止標識を高輝度にするなどがあります。

――このような対策が負担を減らすことにつながると思いますか?
フジテレビ解説委員 風間晋氏:

あくまでもこの対策は緊急対策ということなので、一時的に付加が高まったとしてもやらなくてはいけないと言う観点から作っているのだと思いますが、基本的に手が回らない状況になっていて何かあったときに、それをヒューマンエラーと言うのだろうかという基本的な疑問があるんですよ。ある意味そんな環境を作ってしまっていること自体がヒューマンエラーじゃないのと。

元管制官 田中 秀和氏:
緊急対策という意味では、これまで安全を守ってきた仕組みの再徹底・再周知の部分は問題ないと思います。一方で新たな取り組みとなっている管制官の(誤進入)常時監視という業務や、離陸順を伝えることを当面禁止ということに関しては、作用反作用がありますので、新たな取り組みがよりリスクを招くのではないかという検証は必要だと思います。
ただ、緊急対策、暫定的な対策という意味では意味があるとおもますので、そこについては今後反作用の部分をしっかりと見極めていく必要があると思います。
(めざまし8 2月7日放送)