遊びだけでない、職場での活用も進んでいる電動キックボード。様々な新しい移動手段をまちなかにも導入して観光の盛り上げにもつなげようと、長崎市の企業の“未来を見据えた”狙いがあった。
敷地内の移動には「電動キックボード」
1月から”ある場所”で、電動式のキックボードが本格的に導入された。
この記事の画像(8枚)KTN 松永悠作記者:
佐世保市のSSKです。従業員がキックボードに乗って移動しています
船の修繕などを行う佐世保市のSSK(=佐世保重工業)では、電動キックボードが従業員の「新たな足」となっている。
佐世保重工業 阪本修司さん:
事務所から各ドッグ、岸壁への移動。一番遠いと1キロを超える
船の状況確認や来客への対応のため、1キロを超える距離を徒歩や自転車で何度も往復していたが、不便さがあったという。
佐世保重工業の従業員:
自転車だとゆっくりしか行けない。工場と船と事務所と移動する中で時間短縮が図れて、空いた時間を業務に充てることができる
移動手段の変化が業務の効率化にもつながっている。導入した10台はいずれも購入したものではなくレンタルで、貸し出したのはオフィス機器などを扱う長崎市の「イシマル」だ。
創業140年の企業の新たな挑戦
キックボードの取り扱いは、創業140年にして初めての挑戦だった。
イシマル 石丸太裕さん:
大規模な私有地を所有する企業の中には「移動」に課題があるのではないかと。最初にキックボード事業を始めたいと声をあげたときには、事業とは全く違うところなので、社内でも反対意見はあった。我々が提供しているのは、ただのキックボードではない。中にGPSが入っている
いま誰が使用しているかを確認できたり、エリアごとに速度を制限できるシステムも搭載されている。“安全に運行できる”という口コミが広がり、県外の造船会社などからの問い合わせも来ているという。
イシマルは、このノウハウを生かした新たな挑戦にも乗り出している。 それが「シェアサイクル」だ。
福岡の企業が、福岡や熊本、東京などで展開する「チャリチャリ」の長崎進出をサポートしている。
利用者はスマートフォンアプリで二次元バーコードを読み取り、その自転車を借りることができるシステムだ。料金は1分6円から。福岡市内ではポートと呼ばれる貸し出しと返却の場所が685カ所あり、4,200台の自転車が稼動している。
すでに長崎での実証実験は終わっていて、「年内」のサービス開始を目標としている。
イシマル 石丸太裕さん:
実証実験で、長崎の学生や東京から来ていた出張者に乗ってもらった。9割の方々が、電動自転車があれば問題なく走ることができて楽しかったという声があった
見据えるのは“長崎の観光業への貢献”
しかし、長崎は坂の町。1世帯あたりの自転車保有台数は「0.38台」で全国ワーストだ。そこで、当面は観光客をターゲットに、JR長崎駅やグラバー園などの観光関連施設にレンタルスポットを配置する考えで、先に見据えるのは、長崎の観光業への貢献だ。
イシマル 石丸太望・代表取締役社長: コロナも収束してインバウンドが戻ってくることによって、長崎に観光に来ていただける人も増えていくと思う。今ある交通手段だけではなく、選択肢が広がることによって観光客のニーズに応えられる可能性は十分にあると思う。シェアサイクルを使うことによって、普段とは違う場所にリーチできる可能性もある
仕事の現場や観光地を「新たな足」が支える日も近いかもしれない。
(テレビ長崎)