天皇皇后両陛下は、1月23日、明治神宮ミュージアムを訪れ、正倉院の宝物を忠実に再現した模造品を鑑賞されました。

1300年の時を経て破損や劣化が進んだ正倉院の宝物は、明治以降、修理や模造品の製作が続けられています。会場では、宝物の材料や技法を限りなく再現した精巧な模造品30点あまりが展示されました。

両陛下がご覧になったのは、正倉院を代表する宝物「螺鈿紫檀五絃琵琶(らでんしたんのごげんびわ)」の精巧な模造品。

平成23年から8年かけて製作されたもので、「紫檀(したん)」の木材に夜光貝などを使って「螺鈿(らでん)」という技法で装飾が施されています。琵琶の弦は通常4本ですが、これは5本。5弦の琵琶は、世界中で正倉院に一つしか残っていません。

忠実に再現されたこの琵琶は、いにしえの音色を奏でることができます。弦には、上皇后・美智子さまが皇居(の紅葉山御養蚕所)で飼育された蚕「小石丸」の生糸が使われています。

養蚕農家ではほとんど扱われなくなった日本の固有種・小石丸。上皇后さまの提案で、皇居での飼育が続けられてきました。小石丸の極めて繊細な糸は正倉院宝物の復元や文化財の修復に欠かすことのできないもので、現在も皇后さまが育てられています。

琵琶の弦に小石丸が使われているという説明に、皇后さまは「こういうふうに役立っているのはとてもありがたいです」と話されたということです。

お帰りの際、両陛下は「大変素晴らしい展示で感激しました」と関係者を労っていらっしゃいました。
(「皇室ご一家」2月4日放送)