自民党の派閥政治資金事件を受け、29日、国会で異例の審議が行われ、岸田首相は説明責任を強調したうえで、不記載に関する聞き取りと調査の意向を示した。
エコノミストの崔真淑さんは、「既存勢力ありきでない新しい議員の層を増やす努力をすることが、今の日本で求められている」と指摘している。

岸田首相「連座制」に前向き姿勢

自民党の派閥の政治資金事件を受け、国会では施政方針演説に先立ち、予算委員会で集中審議が行われる異例の日程で、派閥の政治資金問題の実態解明や政治資金規正法の改正などについて論戦が行われた。

この記事の画像(9枚)

立憲民主党・小西議員:
事件の真相を闇に葬り、受けるべき犯罪の処罰を受けず、納税の義務を回避して、脱税にお墨付きを与えようとしている。岸田総理、改革なんかするつもりないんじゃないですか。

岸田首相:
説明責任と法的責任について、党としても判断をしなければならない。

岸田首相は、派閥パーティー収入の不記載について、議員の聞き取りを行う考えを示したほか、今後、外部の有識者も加えて自民党内で調査する意向を示した。

また、政治資金規正法の改正に関し、国会議員に会計責任者との連帯責任を負わせる「連座制」の導入について「党として考え方をまとめ、各党と議論したい」と前向きな姿勢を示した。

一方、野党は使い道を公開する必要がない「政策活動費」の廃止を岸田首相に求めた。これに対し、岸田首相は「政治活動の自由」を強調し、「各党と真摯に議論したい」と述べるにとどめた。

国民が求めるのは「見える化」と「新しい風」

「Live News α」では、エコノミストの崔真淑(さい・ますみ)さんに話を聞いた。

堤礼実キャスター:
政治とカネの問題、崔さんはどうご覧になりますか。

エコノミスト・崔真淑さん:
いま国民が求めているのは、2つあると思います。一つは、政治とカネの「見える化」。具体的には国民に、お金の流れが分かるようにする必要があります。そしてもう一つは、政治に「新しい風」を吹かせることです。つまり、若手や女性など、多様なバックグランドをもった次世代のリーダーを入れて、さまざまな国民の声を、政治に届きやすくすることが必要だと思います。

堤キャスター:
確かに、「新しい風」で政治が変わることを望みたいですよね。

エコノミスト・崔真淑さん:
「新しい風」を入れることは、政治に先行する形でビジネスの場では進んでいます。多様性がある方がイノベーションが起きやすいことは経済学の研究でも指摘されています。

さらには、政治に「新しい風」を入れることの効果は、ノルウェーを舞台に「クオータ制」の導入という実践と、その効果の研究が蓄積されています。

堤キャスター:
それは、どういう制度なんでしょうか。

エコノミスト・崔真淑さん:
クオータ制というのは、選挙の候補者や議会の議席の一定数を、女性などに割り当てることです。ノルウェーのある地域では、圧倒的に年配の、しかも、既存の繋がりありきの男性議員が多く、さまざまな声が政治に反映されにくいとも指摘されていました。

そこで、リベラルな党が与党になった時に、男女の議員比率を半々にすることを目指して、クオータ制度を導入しました。

既存勢力に頼らない議員層増やす努力を

堤キャスター:
性別など、ある特定の理由によって、優先的に政治家になることに懸念はないのでしょうか。

エコノミスト・崔真淑さん:
ノルウェーでもクオータ制の導入に際して、能力のある男性よりも、能力の低い女性が優先されるのではないかと、そういう声がありました。

しかし、実際にクオータ制が導入されると、性別によって政治家としての能力に差があるということはなく、むしろ既存のつながりありきの、能力が相対的に低い政治家が変わる契機にもなったと指摘されています。

ノルウェーのような政策をただちに行うことは難しいとは思いますが、既存勢力ありきでない新しい議員の層を増やす努力をすることが、今の日本で求められているとは思います。

堤キャスター:
政治は国の在り方を示すものでもあります。日本という国を変えていくためにも、政治の透明化や、風通しを良くしていく必要があるように思います。
(「Live News α」1月29日放送分より)

この記事に載せきれなかった画像を一覧でご覧いただけます。 ギャラリーページはこちら(9枚)