30%という高い致死率から“人食いバクテリア”と呼ばれる感染症の2023年国内の患者数が941人となり、過去最多となった。専門家にこの感染症の脅威について聞いた。

バイクで転倒後「打撲」と診断された

60代の女性が訴えたのは、過去最悪のペースで広がる深刻な症状だった。

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女性が感染したのは、手足などの壊死を引き起こし最悪の場合死に至ることもある「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」。30%という高い致死率から“人食いバクテリア”とも呼ばれている。

国立感染症研究所によると、2023年国内の患者数が941人となり、1999年の調査開始以降、過去最多となった。

加藤恵子さん(60):
(バイクで)右に行こうと思って発進したらそのまま転んで。大きな事故じゃないんですね。

和歌山県田辺市に住む加藤恵子さん。8年ほど前、仕事中にバイクで転倒した。
その時に撮影したという写真を見ると、脛の周辺から出血はあるが、痛みはそれほどなかったという。

加藤恵子さん(60):
打撲で(病院に)行くのは恥ずかしいと思って。けがを我慢していたんですよ。

しかし、その後も痛みが消えず、けがから4日目には…。

加藤恵子さん(60):
歩くのも痛い、脚も曲げれないパンパンで腫れて。自分の部屋2階なんですけど、2階から階段に下りられない、足つくのも痛いって感じで。

不安になった加藤さんは、けがから5日目にして初めて、病院へ行った。

加藤恵子さん(60):
レントゲン撮りました。「骨折はないです」って言われて、CT撮りに行ってヒビも入っていない、「ただの打撲です」って言われて。

検査の結果、「打撲」と診断された。
そのとき撮影した写真を見ると、ふくらはぎが腫れ上がり内出血もしているように見える。

「右足を切断したら助かるかもしれない」

通院の翌日、けがから6日目には、加藤さんの症状は更に悪化。

加藤恵子さん(60):
朝から嘔吐と下痢とで、はいながらトイレに行っても座ってられないんです。お昼くらいに母に「救急車呼んでほしい」って言って、そこから意識ないんですよ。

あまりのつらさに意識を失い、その後病院に搬送された加藤さん。
次に目を覚ましたのは、けがから8日目だった。

加藤恵子さん(60):
先生に起こされて「このままだと命がなくなるよ。でも、右足を切断したら助かるかもしれないけど、どうする?」
ちょうどそのときに、足元に娘がいて、泣いて。「お母さん脚なくなってもいいから生きといて」って言われたのが聞こえて、先生に「脚切断してください」って私が決めたんで、(次に)目が覚めたらここから(下が)なかったんです。

加藤さんは、現在義足で生活。
感染から約8年たった今でも、週2回リハビリを続けている。

「いつもとは違う、何かおかしい」が大事なサイン

この感染症の脅威について、感染症に詳しい専門家に話を聞いた。

長崎大学・森内浩幸教授:
命に関わるっていうことですね。この病気が起こった後は非常に進行が早いので、すぐに対応しないと命を救うことができない。
そのスピードの早さということが、非常に大きな問題点になっています。

初期症状による診断が非常に難しく、感染経路もまだ明確にわかっていないという“人食いバクテリア”。
どのように対処すればよいのだろうか。

長崎大学・森内浩幸教授:
特効薬や「これさえすれば大丈夫」という予防法があるわけではない。溶連菌そのものは、ごくありふれたもので、最初からどの溶連菌がこの劇症型を起こすかは、わからないわけですから、「いつもとは違う」というのは、どんな病気の場合でも“とても大事なサイン”。

尋常じゃない痛さ、腫れとか色の変化とかに気づいたら、すぐに医療の力を借りるということになります。
1日〜2日という経過で亡くなってしまう患者さんも多い。そういう非常に怖い病気ですので、「何かおかしい」と思った時にすぐに対応できるかどうかがとても大事なところ。
(「イット!」1月26日放送より)