必要な許可を受けていないにも関わらず静岡市の業者にインドネシア国籍の男4人を派遣し、働かせたとしてブローカーの男ら4人が逮捕された。また、派遣された男4人はすでに逮捕されていて、3人は起訴されている。

“悪質”派遣業者と“闇”ブローカー

労働者派遣法違反の疑いで1月24日に逮捕されたのは東京都板橋区在住の自称・建設業の男(44)ら日本人3人とインドネシア国籍のブローカーの男(34)で、警察によると4人は2021年6月から2023年11月にかけて、厚生労働大臣の許可がないにも関わらず、静岡市内の業者にインドネシア国籍の男4人を派遣し、働かせた疑いが持たれている。

男らを連行する車両(1月24日)
男らを連行する車両(1月24日)
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捜査関係者によると、逮捕された4人は派遣先の業者に対して外国人労働者の在留カードを示していたものの、いずれも偽造されたものだったという。

また、4人は派遣事業の手数料に加え、労働者の給与の一部を天引きするなど不当な収益をあげていた可能性もあり、余罪について調べが進められている。

“派遣された”男4人も逮捕

一方、この事件をめぐっては警察が2023年11月、派遣されたインドネシア国籍の男4人をいずれも不法残留の疑いで逮捕。その後、3人が起訴されている。

このうち36歳の作業員の男の初公判が1月15日に静岡地裁で開かれ、男は起訴内容を認めた。

静岡地裁
静岡地裁

被告人質問によれば、男は結婚していて子供も3人いる。インドネシアでは運転手を生業としていたものの、「高水準の教育を受けた人には高い給料が払われるが、私は高くなかった」と話し、「外国での仕事は給料がとても高い」と思ったことから、現地に家族を残したまま2020年3月に来日。

検察の調べでは、日本には“旅行”と称して入国し、その後、観光ツアーから抜け出した上で知人に紹介された人物に15万円を支払い、群馬県での仕事に就いたという。

ただ、突然「仕事を辞めろ」と告げられたことから、仕事を紹介してくれた人物に再び連絡を取ると、今度は今回逮捕されたインドネシア国籍のブローカーの男に電話をするよう言われた。

すると、茨城や八王子での仕事を経て、静岡で働くよう指示される。

仕事を紹介してもらうにあたって、作業員の男はブローカーの男に対して自身の顔写真とパスポート、それに現金3万円を渡していたそうだ。

また、給与明細にはブローカーの男の名前が記された項目もあったが、「詳細はわからない」と証言。こうしたことから手取りは13万円から15万円ほどで、男は「十分に稼げなかった」とこぼすと共に、「本当にごめんなさい」と後悔や反省の態度を示した。

検察は「不法就労が目的で動機に酌量の余地はなく、不法残留期間が約3年8カ月と長期間に及んでいる」として懲役2年を求刑したが、弁護側は「家族のために日本で働くことを夢見ていたもののブローカーに搾取された悲しい運命」と述べた上で「仕事先で問題を起こしたこともなく、低賃金で重労働をこなしていただけ。『家族を楽にさせてあげたい』という思いからで強い非難には値しない」と執行猶予付きの判決を求めた。

外国人労働者が増加…現状は?

厚生労働省によれば、2021年10月末時点における国内の外国人労働者数は182万2725人と過去最多を更新。ただ、これは事業主が厚生労働大臣に届け出た人数なので、不法就労者を加味すれば実際にはもっと多い可能性がある。

外国人労働者の雇用問題に詳しい杉田昌平 弁護士は「外国人がどの国で働こうかと選ぶ際、必ずしも賃金の高さで決めているわけではない」と前置きした上で、「(申請手続きが)早くて安いものの“危険”というのが中東の産油国。日本は高くて遅いが“安全”で“確実”に稼げるという点が魅力」と解説する。

杉田昌平 弁護士
杉田昌平 弁護士

このため、正規の手続きを経ず書類を偽造するなどして違法に職を斡旋する“闇ブローカー”のような存在が増えているという。

他方で不法就労者の場合、仮に賃金が支払われなくても自らが不法残留などで逮捕されることをおそれて警察や労働基準監督署などに被害を訴える可能性が極めて低いため、違法とわかりながら受け入れる事業主もいるのが現実だ。

こうした状況から入管法では不法就労助長罪が定められていて、不法就労が認められた場合には労働者本人だけでなく、仕事を斡旋した仲介者や受け入れた事業主も罰せられる。

さらに不法就労であることを知らずとも事業主に過失が認められた場合や今回のように派遣労働者で直接の雇用関係がなかった場合でも処罰対象となるので、杉田弁護士は「会社を守るためという意味でも、本人の同意を得た上で(在留カード)を見て記録した方がよい」と呼びかけている。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
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