死亡交通事故が一転、殺人事件に

2020年5月8日午後11時すぎ、福岡・福津市の国道で起きた正面衝突事故。

近所の人:
(午後)11時すぎでしたかね、ガチャーンっていう

警察は、現場の状況から殺人事件として立件できると判断。
福津市の無職・阿部大介容疑者(40)を死亡のまま、殺人の疑いで書類送検した。
阿部容疑者は普通乗用車を運転、福津市の国道で対向車線の軽乗用車と正面衝突し、軽乗用車を運転していた30代の男性を殺害した疑いが持たれている。

警察の捜査で、容疑者の殺意を裏付ける状況が、徐々に浮き彫りになっていった。
阿部容疑者の車は、事故現場の約500メートル手前で別の1台の車を追い抜き、被害男性の車に向かって逆走を始めた。
この時、被害車両までの距離は約200メートル。
付近の防犯カメラや目撃証言から、事故直前のスピードは時速150kmにも達していたことがわかった。

向かってくる車を前にした被害者は、ハンドルを左に切ったが、阿部容疑者は、ハンドルを右に切り追うように衝突、現場にブレーキの痕は残されていなかった。

さらに警察が捜査を進めたところ、異様なことがわかった。
阿部容疑者の車内には、植木などを切るための刈り込みバサミが、喉に当たるようにハンドルに固定されていたことが判明した。
刃先は、開かないようにひもで巻かれていた。

「あの世で幸せに、とか言いたくない」

自殺するために対向車を巻き添えにし、面識のない男性の命まで奪った事故。
亡くなった男性は、魚釣りやアウトドアが好きな3人の子どもを持つ父親だった。
仏壇の横に置かれているのは、子どもが書いた父親の似顔絵。

亡くなった30代の男性は、妻と子ども3人と5人暮らしで、いつも子どもと一緒にいる明るい父親だったという。

被害男性の親族:
悔しいとしか言えない。なんで、そこでたまたま…。帰ってきてと言いたい。あの世で幸せにとか言いたくない。帰ってきてと言いたい

"死ぬ時ぐらい注目を”…第三者を巻き込む「拡大自殺」

阿部容疑者は、事故の2~3日前に家族に自殺をほのめかしていた。
犯罪心理学の専門家は、こうした自殺の仕方を次のように指摘する。

筑波大学(犯罪心理学)・原田隆之教授:
全く関係のない第三者を巻き込んで自殺することを「拡大自殺」という。非常にショッキングで悲惨な事件だと思う

原田教授が指摘する拡大自殺は、神奈川・川崎市で2019年、スクールバスを待っていた小学生ら20人が殺傷され、容疑者の男が自殺した事件などと類似するとして、「自分の社会への怒りをアピール」している可能性があるとしている。

筑波大学(犯罪心理学)・原田隆之教授:
恨みを抱えたまま、大きな敵意を抱えたまま、ひっそり死んでいくのではなく、せめて死ぬときぐらい注目を集めたい、そんなゆがんだ心理が背景にあると考えられる。本人にどこまでサポートが届いていたのか検証して、追い詰められた人へのサポートを充実することがますます必要になる

被害男性の親族は、「今回のように 事故に巻き込まれて悲しい被害者が出ないことを願うばかりです」と最後にコメントした。

(テレビ西日本)