日銀が、今年初めての金融政策決定会合で、金融緩和策の維持を決定した。植田和男総裁は、賃金の上昇分を価格に転嫁する動きが「少しずつ広がっている」としたが、賃金と物価の好循環が進んでいるものの、不確実性が高いため緩和を継続する姿勢を崩さなかった。

日銀が現在の金融緩和策継続を決定

日本銀行が今年初めての金融政策決定会合で、大規模な金融緩和策の維持を決定した。

この記事の画像(10枚)

日銀は金融政策を決める会合で、マイナス金利政策を続け、長期金利はゼロ%程度に抑える今の枠組みの継続を決定した。

植田和男総裁:
物価上昇率が2%に向けて徐々に高まっていく確度は、引き続き少しずつ高まっていると判断した。

植田総裁は、会見で賃金の上昇分を価格に転嫁する動きが「少しずつ広がっている」と述べ、賃金と物価の好循環が強まっていると判断したものの、不確実性は高いとして、緩和を継続する姿勢を崩さなかった。

こうした植田総裁の発言を受けて、外国為替市場の円相場は、一時1ドル146円台まで1円以上円高が進んだ。

取引の電話が相次ぐ証券会社
取引の電話が相次ぐ証券会社

一方、日銀の決定を受け、東京都内の証券会社「岩井コスモ証券」では、発表直後から取引の電話が相次いだ。

東京株式市場の日経平均株価は400円以上値上がりしたが、その後は利益確定の売りが広がった。

確実な「賃上げ」今後も焦点に

「Live News α」では、市場の分析や企業経営に詳しい経済アナリストの馬渕磨理子(まぶち・まりこ)さんに話を聞いた。

堤 礼実 キャスター:
今回、金融緩和の解除は見送られましたが、いかがですか。

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
焦点は「金融政策を正常化する時期」です。マーケットも「出口もそろそろだ」と捉えたことで、23日の株価は一旦、下落し、為替もおよそ1円、円高に推移しています。

1月23日に発表された「日銀展望レポート」に、「物価目標の達成は少しずつ高まっている」というメッセージが追加されたインパクトは大きいです。

金融緩和を解除する条件として、日銀が掲げている賃金上昇を巻き込んだ物価上昇2%の達成の度合いは、次第に高まってきています。

堤 礼実 キャスター:
やはりポイントは、物価高に追いつく賃上げの実現ということなのでしょうか。

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
コスト高に直結する輸入物価の上昇について、日銀はピークを過ぎたという認識です。一方、国内の動きに目を向けると、賃金上昇や販売価格への転嫁が起きています。

そこで日銀としては、しっかりと春闘で、「賃上げ」ができるかどうかを確認してから、金融緩和を考えたいわけです。

慎重な検討・国民へ説明が不可欠

堤 礼実 キャスター:
「金利のない状態」が解除される時期について、馬渕さんは、どうご覧になりますか。

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
まず「マイナス金利の解除」を行い、それから経済の状況を見ながら「ゼロ金利の解除」を進めていくことが考えられます。

「マイナス金利」とは、民間の銀行が日銀におカネを預けるとマイナスになる。つまり、お金を取られる状態をいいます。

銀行から企業への貸し出しが増えることを狙っている訳ですが、銀行の収益を圧迫するなどの副作用があるため、春ごろに解除に向かう可能性が高いです。

堤 礼実 キャスター:
一方の「ゼロ金利の解除」については、いかがですか。

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
企業経営や個人の暮らしに関連する「短期金利」をゼロ近辺から引き上げることは影響が大きいため、慎重さが求められます。

「マイナス金利」と、それに続く「ゼロ金利」の解除の時期をどれくらいの時間軸で考えているのか、23日の会見では深掘りできませんでしたが、今後、重要なポイントになりますし、国民への丁寧な説明も必要だと思います。

堤 礼実 キャスター:
日本の経済について何が有効なのか、最良の選択をして欲しいと思います。
(「Live News α」1月23日放送分より)

この記事に載せきれなかった画像を一覧でご覧いただけます。 ギャラリーページはこちら(10枚)