22日から2日間開かれる日銀の金融政策決定会合では、賃金と物価の両方が上昇する見通しについて議論される。市場ではマイナス金利政策を含めた、今の大規模緩和は維持されるとの見方が優勢だ。

金融政策決定会合「賃上げ」焦点に

会合では、賃金と物価がともに上昇する、好循環が実現する見通しについて議論する。

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判断の最大の材料となるのは賃上げだが、大企業の一部で賃上げ方針の表明が相次ぐ一方、中小企業では慎重な姿勢を示す企業もあり、ばらつきが見られる。

能登半島地震の経済への影響が不透明なこともあり、市場関係者の間では、今の金融緩和策の維持を決めるとの見方が多くなっている。

金融緩和に明確な賃金上昇が不可欠

「Live News α」では、エコノミストの崔真淑(さい・ますみ)さんに話を聞いた。

堤礼実キャスター:
日銀の金融政策決定会合、今回のポイントについていかがですか。

エコノミスト・崔真淑さん:
日銀が「金利のない状態」を改める金融政策の転換があるかどうかに注目が集まっています。
金利が低いと、返済の際に利子が減る。すると、個人は住宅などの大きな買い物がしやすくなり、企業も設備投資などに積極的になるため、景気をテコ入れする狙いがありました。ただ、一方では金融機関の収益を圧迫したり、企業の新陳代謝を遅らせるなど副作用が懸念されていました。

日銀は金利政策の変更を早ければ1月、あるいは、4月以降に行うのではないかと非常に注目されています。

堤キャスター:
金融政策の行方について、崔さんはどうご覧になりますか。

エコノミスト・崔真淑さん:
過去には賃金上昇が明確でない中で、ゼロ金利政策を解除したことで、経済もマーケットも混乱したことがありました。ですので、今回も慎重になるのではないかと思っています。

金融緩和を解除していくには、明確な賃金上昇を確認できることが重要です。ただ、賃金上昇をめぐっては、まだ心配することが多いです。

実質賃金、中小の賃上げをクリアに

堤キャスター:
具体的には、どのように給料がアップすることが望まれるのでしょうか。

エコノミスト・崔真淑さん:
大きく二つのポイントがあります。一つは物価上昇の動きを考慮した実質賃金の動きです。

先日発表された2023年11月の実質賃金はマイナスとなっていて、この状態が20カ月連続で続いています。マイナス幅が縮小する兆しが出てきているとの指摘もありますが、ただ日本の場合、アメリカのように平均労働時間がタイムリーに発表されないので、単に副業を増やしているだけの人が増えている可能性も指摘されています。ですので、力強い給与上昇というのは、まだ確認できていないのではと思っています。

堤キャスター:
もう一つのポイントについては、いかがですか。

エコノミスト・崔真淑さん:
雇用の7割を担う中小企業の賃上げが明確になるかどうかだと思います。やはり、取引価格の引き上げがないと賃上げは難しいです。なので、大企業などの発注企業に価格転嫁の協議に応じるよう、「振興基準」改定を行うなど、政府が介入することを発表しています。

ただ、一時的な改定だけでは持続的な賃上げとならないだけに、中小企業の生産性アップのための施策もさらに拡充することは重要かと思います。

堤キャスター:
物価の安定は、日本銀行が果たすべき役割の一つです。そのために今の日本の動向を踏まえて、どう政策の方向性を示していくのか、引き続き注視していきましょう。
(「Live News α」1月22日放送分より)

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