元日の能登半島地震で、富山での家屋被害は4000件を超えた。長い時間ゆっくり揺れた‟長周期”の地震波が液状化を招いたと指摘する専門家は、今後噴出した泥の飛散による肺炎などに注意するよう呼び掛けている。
富山で相次いだ「液状化現象」

元日に北陸地方を襲った能登半島地震。そのわずか1分後…電柱は徐々に沈み始め、辺り一面、轟音のあと噴出した泥水に覆われた。高岡市伏木地区にある防犯カメラが、商店街の「液状化」の瞬間を捉えていた。

別のカメラでは、地震で駐車場に亀裂が走り、揺れが収まった直後、道路の裂け目から濁った水が溢れ出していた。
能登半島地震による県内の住宅被害は4000件を超え、県西部を中心に家屋の傾きや建物の沈下が相次いで確認された。
その大きな要因とみられるのが「液状化現象」だ。
「なぜ、液状化は相次いだ?」
本来くっつきあっていた砂の粒子が、激しい揺れによって動かされ、揺れが止まった直後に沈下。地表に水が押し出されて建物を支える力を失うのが、液状化現象のメカニズムだ。

富山大学 立石良准教授:
「(高岡市)伏木は海抜が低い土地。地下水位が高くて被害が大きくなったと考えられる」
地震や津波について研究する富山大学の立石良准教授は、今回の地震で液状化が多発した原因の一つに、震源に近い県西部で引き起こされた強い揺れが、海岸付近の住宅地や埋め立て地に影響を与えたと指摘する。
富山大学 立石良准教授:
「県西部、新湊や伏木の小矢部川や神通川流域は、(急流な県東部の)黒部川や常願寺川と比べて流れが緩い河川。比較的細粒な砂が下流にたまることで、液状化が起こりやすい状況になる」「おそらく海の砂が(地層に)使われている。新湊でも同じような液状化が発生しているが、貝殻が砂に混じっていた。海の砂は細かくて粒が揃っており、液状化が起こりやすい材料」
さらに、揺れが大きく、周期の長い長周期地震動が液状化の被害を拡大させたという。
富山大学 立石良准教授:
「今回、非常に長い時間、ゆっくり揺れた。長周期の地震波。波が遠くまで届き減衰しにくい。ゆっくりと(地層の)砂が、長い時間揺らされ続けて液状化被害が大きくなった」

富山大学 立石良准教授:
「あの住宅の傾きはこの地域でも最もひどい。建物右側が液状化がひどく、傾いて沈下している。傾きは6度。住める角度ではない。大変なことだと思う」
「対策は困難」
液状化を防ぐ有効な対策は、地盤改良だが、住宅が建った後に改良を施すのは困難だ。
富山大学 立石良准教授:
「建物を建てる前であれば、地下水位を下げる、砂地盤を入れ替える、薬液を加える『地盤改良』などの対策を取ることができる。ただ、元から家が建っている状態で対策を取ることは難しい」
立石准教授は、住んでいる場所が液状化の可能性があるのか把握し、被害が起きた時のために避難先を調べ、備蓄を確保することが必要だと話す。
国土交通省北陸地方整備局が作成した富山県の「液状化しやすさマップ」では、各市町村、地域ごとの液状化被害の危険度を、スマートフォンやパソコンからでも確認できる。
立石准教授は、今回の地震による被害場所の分布はマップにかなり近かったとし、液状化の被害にあった地域では今後、乾燥した泥の粒子やホコリが空気中を飛散し、肺炎などの呼吸器疾患を増加させる懸念も高まると注意を呼びかけている。
「復興基金」の創設を

液状化現象による被害は、18日に開かれた知事と市町村長でつくるワンチーム連携推進本部会議で取り上げられ、多くの被害が出た氷見市と高岡市の市長から「復興基金」の創設を求める声があがった。
熊本地震では、原則として公共事業の対象とならない「宅地」の復旧費用を支援する「復興基金」を創設したことが住宅の再建を後押ししたとし、富山でも同様の制度を検討するよう求めた。
ワンチーム会議では、来年度の重要項目に、「災害対応・危機管理体制の連携強化」を加え、県と市町村が災害対策について重点的に協議していくことを決めた。
(富山テレビ)