リニア中央新幹線についてJR東海が開業目標を変更したことを受け、年頭会見で静岡工区をめぐる問題は「2037年までに解決すればいい」と述べた静岡県の川勝平太 知事。しかし、元側近が猛批判したからか軌道修正を図った。
発言が波紋…“遅滞行為”を推進?
「2037年までに東京から大阪までの全線開通というのが残された最後の期限。南アルプスの自然・生態系を保全することとリニアの両立という件についても2037年までに解決すればいい」
静岡県が工事に必要な許可を出していないため、いまだ未着工となっているリニア中央新幹線 静岡工区について、川勝知事は1月4日の年頭会見で“独自”の見解を披露した。
この記事の画像(5枚)なぜこんな発言をしたかと言えば遡ること約1カ月。JR東海がリニア中央新幹線の品川・名古屋間の開業目標について「2027年」から「2027年以降」へと変更したからだ。
元側近の批判受け?知事が軌道修正
ところが、“遅滞行為”を率先して推進するとも受け取られかねない発言に、かつて副知事として川勝知事に仕えた静岡市の難波喬司 市長が噛みついた。
12日の定例記者会見で、難波市長は「開業時期と環境影響評価の適切な実施について関連付けるという考え方は私には理解できない」と断罪した上で、「環境影響評価は速やかに適切な評価をしていくというのは行政機関として当たり前の話。時間を延ばすということはあり得ない。速やかに評価していくのが大事」と手厳しく指摘。
こうした“元側近”による痛烈な批判が耳に届いたのか、15日に行われた定例記者会見では川勝知事の発言に変化が現れる。
川勝知事は「2027年というくびき(=自由を束縛するもの)がなくなったことは大きい」と独特の言い回しを使いつつ、「(環境影響評価を)別に遅くしろと言うことではない。しっかりやればいいということ。2037年までになるべく早く解決すればいいということ以上でも以下でもない」と軌道修正を図った。
JR東海の見解は無視?持論を力説
一方で、この日も“川勝節”は止まらない。
「『2027年以降』になったのが静岡県のせいと言われているので、それ以外のところ、甲府(山梨県)から品川まで、また中津川(岐阜県)から名古屋までは2027年までに開通させるというのは少なくともJR東海の今回の変更の中に含有されていると私は思っている」と、皮肉交じりにJR東海が全否定している部分開業を“自らの理解”として示し、「それは推進してくれた方がいいということで私も応援したい」と述べた。
また、静岡県は2022年にリニア中央新幹線建設促進期成同盟会への加盟が認められているが、川勝知事は「早期にリニアを全線開通に向けて促進するように動いているのが期成同盟会なので、その趣旨に即した発言はしたいと思っている」と話す反面、「そういうこと(部分開業)を主張する人もいると思う」と口にし、「私としては出来るところからやっていくということ以外に促進する方法はないと思っている」と、今後、期成同盟会の中で部分開業を主張していく可能性を示唆。
さらに、「(リニア新幹線に関する)大きな事業計画の変更を国交省が認めた。ですから、事業計画の変更があったので期成同盟会もいろいろと考えるところがあると思うので、国としてもどうするのか?(開業が)『2027年以降』になるのだとすれば、大阪から名古屋までを先に工事するのはありなのか?1回下山するというか虚心坦懐に議論しなければいけない」と、リニア新幹線の建設促進についてゼロベースでの協議を求めるかのような発言まで飛び出した。
川勝知事の本心がいよいよわからない。
(テレビ静岡)