リニア中央新幹線をめぐり静岡県の川勝平太 知事の“独創”が止まらない。直近では県が懸念を示す南アルプスの生態系への議論について、全線が開通する予定の「2037年までに解決すればいい」と述べ、多くの人を困惑させた。

リニア開業は後ろ倒しの可能性も

リニア中央新幹線の静岡工区をめぐっては、静岡県が大井川の水資源や南アルプスの生態系に与える影響を懸念していることから工事に必要な許可を出しておらず、今なお着工に至っていない。

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このためJR東海は2023年12月、「静岡工区の未着工」を理由に品川・名古屋間の開業目標を「2027年」から「2027年以降」へと変更する申請を国土交通省に提出し、その後、認可されている。

独自の解釈を披露する知事に元側近は…

こうした中、川勝知事は1月4日の年頭会見で「2027年という数字が実質消えた」と独自の解釈を披露し、「南アルプスの自然・生態系を保全することとリニアの両立という件についても(全線が開通予定の)2037年までに解決すればいいと私は受け止めている」と主張した。

川勝知事の年頭会見(1月4日)
川勝知事の年頭会見(1月4日)

一方で、この認識に公然と異を唱えた人物がいる。静岡市の難波喬司 市長だ。

難波市長は副知事を2期8年務めた川勝知事の“元側近”。さらに、元は土木工学を専門とする国交省の技術官僚であるためリニア中央新幹線をめぐる問題にも精通し、副知事在任中も最前線で対応にあたってきた。

その難波市長が、12日の定例会見で川勝知事の発言を念頭に「開業時期と環境影響評価の問題を直接関連付けるべきではない」と苦言を呈した。

川勝知事の発言に苦言を呈した難波市長(1月12日)
川勝知事の発言に苦言を呈した難波市長(1月12日)

そして、「静岡県も適切な環境影響評価がなされるように努めなければならない。行政の手続きの場合は標準処理期間のようなものがあるが、適切な期間にちゃんと処理をして、判断するのが大事なので、いつまでも延ばしてよい、猶予がどこまであるという話ではない」と指摘した上で、「だから、環境影響評価の問題と開業時期の猶予の問題を関連付けるのは私には理解できない。開業時期が遅くなったこととは関係なく、環境影響評価を適切にやるべき」と強調。

さらに最後にもう一度、「開業時期と環境影響評価の適切な実施について関連付けるという考え方は私には理解できない」と繰り返した。

難波市長が示す議論の“現在地”

また、4日の会見ではリニア新幹線・静岡工区をめぐるJRとの議論の進捗状況について、登山に例えて「南アルプスが守られたという意味では1回下山したということではないか」と、こちらも独特のニュアンスを口にした川勝知事。

難波市長はこの発言そのものに対しては「本人の考えなので私が申し上げることではない。別の人が評価した『どのあたりにいる』ということを議論しても生産性は無いと思っているので、そこについては立ち入らないようにしたい」と笑みを浮かべながら直接の評価は避けたが、実は12日の会見で静岡市としての考えを明確に示している。

図を使いながら”現在地”を説明する難波市長
図を使いながら”現在地”を説明する難波市長

その説明によれば、大井川の水資源の問題については「今後は社会的な合意形成を目指して最終調整を行う段階なので9合目以上に達している」との見解で、南アルプスの生態系の問題については「新たにものすごく詳細な調査をしないといけない状況ではないと思うので、そういう観点から言って8合目までは行っている」という。その上で、全体としては「最後の詰めにある」との認識だ。

難波市長は言う。「(登頂出来る)ルートはある。ただ平坦ではないので、道を誤らないようにすればゴールに達することが出来る。私たちの認識はいま県も8合目までは来ているはずだ」と。

(テレビ静岡)

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