岸田首相は、中小企業の経営者らと車座対話を行い、「人手不足や物価高を乗り越える賃上げが必要だ」と強調した。経営者からは賃上げの成功例とともに、為替相場の安定が求められた。
エコノミストの崔真淑さんは、地方の中小企業における賃上げの難しさや、災害保険の重要性、政府の介入の必要性を指摘する。

能登半島地震の被害含めた経済活性に重点

対話の中で岸田首相は、能登半島地震で企業が受けた被害に強い危機感を示した上で、中小企業を含め、経済を盛り上げる必要性を強調し、次のように述べた。

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岸田首相
人手不足ですとか、物価高といった課題を乗り越えていただき、投資・賃上げ、こうした取り組みを広げていただく。

一方、経営者からは価格転嫁に成功し、賃上げにつなげた例が紹介されたほか、円安による原材料の高騰を踏まえ、為替相場の安定を求める声も出た。

地方中小企業では賃上げの悪循環も

「Live News α」では、エコノミストの崔真淑さんに話を聞いた。

堤礼実キャスター:
中小企業をとりまく環境について、崔さんはどうご覧になりますか。

エコノミスト・崔真淑さん:
民間企業に勤めている働く人の約7割は、中小企業に勤務しています。これを地方圏だけに限ると、地方の従業員の約8割の人が中小企業に勤めています。中小企業を取り巻く環境というのは、実は地方経済をとりまく環境にも似ています。

大企業を中心とした都市圏では賃上げの話が聞こえてきますが、実際に地方で中小企業経営者の方々と話をすると、賃上げの厳しさを訴える経営者は多いです。肌感覚だけでなく、データでもそういう傾向は強く見て取れます。

堤キャスター:
データから見て取れる現状は、どうなっているのでしょうか。

エコノミスト・崔真淑さん:
例えば、日銀が発表しているアンケート調査では、2期ぶりに中小企業においても、景況感の改善が見られました。ただ、人手不足に関しては、1983年の調査開始以来の深刻な状況になっているんですね。

特に地方の小売業などでは、最低賃金の引き上げもあり、アルバイトの賃金引き上げにより、正社員に対しての給与アップが厳しいとの声も出ています。人手が足りないから賃上げをしよう、という状況ではないということです。

地方のコストの大部分が人件費が占めるような産業においては、厳しい状況が続いています。なので、こうした状況に対して、政府が何かしらの介入をするというのは非常に有益だと思うんです。ただ、私としては、今回の会合ではまだ足りていないところもあるのではないかと思っています。

政府は中小企業の災害対策支援を

堤キャスター:
具体的には、どのような部分で国によるサポートが必要なのでしょうか。

エコノミスト・崔真淑さん:
2024年は災害対策について、個人だけでなく、企業も注意を払う必要があります。

しかし、大企業の2社に1社以上は災害対策の保険に加入している一方で、中小企業の加入企業は5割にも達していないとの研究報告があります。こうした状況になっているのは、災害保険の費用の高さなんかも指摘されています。

政府としては、賃上げのサポートだけでなく、もしもに備えて中小企業の災害保険の認知向上、災害対策の計画立案サポートが必要になるのではないかと思っています。

堤キャスター:
賃上げといっても、企業にとって決してハードルの低いものではありません。こうした機会が企業の現状と課題を明確にし、そこに対するサポートに繋がることを期待したいです。
(「Live News α」1月15日放送分より)

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