「こうのとりのゆりかご」や「内密出産」に関わる、子どもの出自を知る権利について議論している、熊本市と慈恵病院の検討会。
1月11日に開かれた5回目の会合では、慈恵病院が直面している現実が明かされた。

「経験ない者が対応する危うさ」

熊本市の慈恵病院は、2023年までの2年間に21例の「内密出産」があったと公表している。

慈恵病院の「こうのとりのゆりかご」
慈恵病院の「こうのとりのゆりかご」
この記事の画像(5枚)

同じく慈恵病院が2007年に開設した「こうのとりのゆりかご」には、2022年度までの16年間に170人が預け入れられている。

5回目となった1月11日の検討会で、委員の一人である慈恵病院の蓮田理事長は今直面している現実について語った。

直面する課題について述べる慈恵病院・蓮田理事長
直面する課題について述べる慈恵病院・蓮田理事長

蓮田健理事長:
現実に今、ゆりかごに預け入れられたお子さんが大きくなって慈恵病院に出自情報の開示を求められています。「何とかなりませんか」と相談を受けていて、私たちは今そこに直面しているわけです。悩んでいて手つかずだが、何とかお子さんの気持ちに応えないといけないと思っています。専門家でない産婦人科医など経験のない者が対応することの危うさを感じています

その上で蓮田理事長は、「出自情報の収集や管理、開示などについては国の機関の専門家に担ってほしい」と述べた。

出自情報の範囲や開示時期にも議論

また「出自情報については、母親の口述記録だけでなく、身元を客観的に証明できるマイナンバーカードなどの写し、それに子どもの出生日時や性別・体重などを記録し、病院が作成する出生証明書も合わせて残すようにしてはどうか」と提案。
そして、こうした情報を子どもに開示する時期については「特定の年齢を定めず個別の対応でよいのではないか」と述べた。

蓮田理事長が考える出自情報の案
蓮田理事長が考える出自情報の案

このあと検討会は非公開で意見交換。終了後の会見で森座長は次回以降の議論について、次のように述べた。

森和子検討会座長:
子どもの出自情報の範囲あたりから深めていく流れになると思います。現実、蓮田先生も本当に困っている部分もあるので、実際に使えるような形で議論を進めていくべきじゃないかと考えています

記者の質問に答える森検討会座長
記者の質問に答える森検討会座長

どのように母親の情報を得て保存・管理し子どもへの真実告知につなげるのか、起きている事例に直面しながら現実的な議論に入る。

検討会は2024年12月に報告書をまとめる方針で、次回は3月に開かれる。

(テレビ熊本)

テレビ熊本
テレビ熊本

熊本の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。