4日、東京・日本橋で三井不動産と竹中工務店による、地上18階・高さ84メートルの日本で最も高い木造賃貸オフィスビルの建設工事が始まった。
木造ビルの可能性として、熱伝導性の低さや国産木材の林業振興があり、森林保全や大気汚染抑制にも寄与するという。

国内最高「木造賃貸ビル」建設開始

東京・日本橋で、地上18階建ての日本で最も高い木造賃貸オフィスビルの建設工事が始まった。

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このビルは、三井不動産と竹中工務店が1月4日から建設を始めたもので、地上18階・高さ84メートルと、日本で最も高い木造の賃貸オフィスビルになる。

木材を使用することで、鉄骨ビルに比べて建設コストは上昇するものの、建設の際の二酸化炭素の排出量は3割減らせるとしている。

柱や梁(はり)には日本で初めて、3時間火に耐えられる、燃えにくい木造部材を使用したという。

三井不動産 ビルディング事業一部・西山慎一郎グループ長:
オフィスワーカーの方が木のぬくもりを感じられるような、行きたくなるオフィスというのを目指して、今後計画していきたい。

竣工(しゅんこう)は2026年の予定で、完成時点では国内最高層の木造ビルになる見通し。
木造ビルをめぐっては、2028年度に東京海上グループが、高さ100メートルのビルを完成させる予定となっている。

日本の自然環境にマッチ

「Live News α」では、コミュニティデザイナーで、studio-L代表の山崎亮さんに話を聞いた。

堤 礼実 キャスター:
── 火事などへの懸念もクリアした18階建ての木造賃貸オフィスビル、いかがですか

コミュニティデザイナー・山崎亮さん:
歴史的に西洋が石造りの建物であるのに対して、日本は大きな建物も木造建築であった。それが近代のある時期から、大規模な建築は鉄とコンクリートでつくり、木造は住宅などに限られていた。

今回、本格的に木造の高層ビルがつくられる。これは昔への回帰ではなく、日本が進むべき未来なのではないか。

堤 礼実 キャスター:
── 木造建築には、どんな可能性があるのでしょうか?

コミュニティデザイナー・山崎亮さん:
最近では、建築環境における断熱性能が問われるようになってきたが、木材は熱を伝えにくいため、夏涼しく、冬暖かい環境性能に優れている。

日本は国土の7割が森林であり、その大部分がスギやヒノキなどの人工林である。つまり、人間が製材用に植えた木が生い茂っているのが森となっている。

この森から定期的に木材を切り出して活用しなければ、逆に森が荒れてしまう。すると地盤が弱くなり、地すべりなどが起きやすくなる。

国土の保全や、持続可能な林業の振興という観点からも、国産の木材が活用される機会が増えればと思う。

木材の使用は「大気を守ること」

堤 礼実 キャスター:
木造の高層ビルを増やしていく。これは新しい形の森づくりなのかもしれませんね。

コミュニティデザイナー・山崎亮さん:
樹木は、成長途中に最も多くの二酸化炭素を吸着する。大木になると吸着率が低下するため、しかるべき時期になると木を切り出し、その後には植林をして若い木を育てるのが望ましい。

さらに木材に定着した二酸化炭素は、建築材料として使われると、建物が使われている間はずっと二酸化炭素を大気中に出さないでいてくれる。森で育った木を、材料として長く使えば使うほど、大気中に放出される二酸化炭素を抑えることになる。

より多くの人に、木造オフィスの気持ちよさを体感してもらい、その機運が高まることを期待したい。

堤 礼実 キャスター:
木造ならではのメリットはたくさんありますよね。
日本は森林大国でもあるわけですから、こうした取り組みが、国内の林業の発展にもつながっていくといいなと思います。
(「Live News α」1月11日放送分より)

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