能登半島地震による揺れでやかんの熱湯がかかり、やけどを負った5歳の男の子が、入院できずに亡くなった。母親が取材に応じ、悲痛な胸の内を明かした。
「入院させてもらえたら…守ってあげられとったら…」
布団の上に寝そべる男の子。
地震の揺れでやかんの熱湯がかかり、やけどを負ったものの、入院できずに亡くなった中川叶逢(かなと)ちゃん(5)をとらえた最後の動画だ。

動画には、「ねぇ、ママ。かゆい。あつい……」とつらそうな表情を見せる叶逢ちゃんに、母・岬さんが「かいたらダメ」と優しく声をかける様子が記録されていた。
叶逢ちゃんの母・岬さん:
入院させてもらえたら、もしかしたら何か変わったかなという気持ちと、守ってあげられとったら生きとったんかなとか……。
もう帰らない我が子との思い出が詰まったスマートフォンを手に、母・岬さんが取材に応じ、悲痛な胸の内を明かした。

叶逢ちゃんの母・岬さん:
この前まで、何色のランドセルがほしいって話しとったところやったんで、もう一回聞こうと思ってたんですけど、聞くこともできなくなっちゃったので……。
「やけどは軽傷でも重傷でもない。入院はできない」
元日の夕方、2人は最大震度7を観測した石川・志賀町の親戚の家にいて、石油ストーブの上で餅を焼いていた。しかし、大きな揺れでストーブの上のやかんが倒れ、叶逢ちゃんに熱湯がかかった。
やけどがお尻や両足など広範囲に及んでいたため、岬さんはすぐに救急車を呼んだが、地震直後の混乱で来てもらえなかったという。

その後、叶逢ちゃんは病院に搬送されたが、診察した医師からは「やけどは軽傷でも重傷でもないから、入院はできない」と、思わぬ言葉が告げられた。
叶逢ちゃんの母・岬さん:
診察した日は(病院の)ロビーで寝たっていうか、泊まらせてもらったんですけど、その間はもう「痛い」とか「かゆい」とかも言っていて……。
入院することができず、自宅に戻らざるを得なかった叶逢ちゃん。3日朝に39度の高熱が出たため、翌日、診察を受けた病院に行った。しかし、この時も「熱があるので、集中治療室に今は入れない」と言われて待たされたという。

叶逢ちゃんの母・岬さん:
顔(色)も変わってて、そのまま集中治療室で処置してもらったけど、次の日に亡くなってしまった。
叶逢ちゃんが息を引き取ったのは、地震発生から4日後の5日午前11時過ぎだった。
近くにいても「ママどこ?」と…
明るく元気な子だったという叶逢ちゃん。将来はヒーローのような人を守る仕事がしたいと話していたという。

叶逢ちゃんの母・岬さん:
消防士とか救急隊員とか自衛隊とか、そういう仕事をしたいって言ってましたね。警察官とか。
岬さんは、最愛の息子と交わした最後の言葉を涙ながらに明かした。
叶逢ちゃんの母・岬さん:
「抱っこして」とかですかね。もう4日から、結構私のことがわからん状態だったんで、近くにいても「ママどこ?」とか。「ママここにおるよ」って言っても私のこと見えてない感じで、あんまり会話が成り立ってなかったですね。最後は私の存在が見えてなかったです。

地震によって失われた尊い命。母親の悲しみが癒えることはない。
(「イット!」1月11日放送より)