元日に石川県・能登半島などを襲った最大震度7の地震。発生から1週間以上が経過した今なお被害の全容はわかっておらず、災害派遣を終えた県内関係者の言葉からも現地の“厳しさ”が伝わってくる。

発災当日から現地へ しかし…

能登半島地震の発生を受け、静岡県は発災当日から県内にある16の消防本部で編成した緊急消防援助隊や警察の広域緊急援助隊 警備部隊を派遣したほか、災害派遣医療チーム(DMAT)や災害派遣精神医療チーム(DPAT)、県災害派遣福祉チーム(DWAT)などが現地で被災者のケアにあたっている。

被災地に向かう県警の広域緊急援助隊 警備部隊(1月1日)
被災地に向かう県警の広域緊急援助隊 警備部隊(1月1日)
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こうした中、磐田市消防本部では県緊急消防援助隊・1次隊としての任務を終えた隊員が6日に帰任し、草地博昭 市長へ活動報告を行った。

磐田市長への活動報告(1月6日)
磐田市長への活動報告(1月6日)

1次隊に与えられた役割は安否不明者の捜索と救助だ。

ただ、大場直人 隊長は「『助けたい』という思いで現地に行ったが、道路状況からなかなか現場までたどり着かず、正直、悔しい思いはある」と視線を落とした。

提供:磐田市消防本部
提供:磐田市消防本部

派遣期間は1日から5日の5日間で、支援先は石川県珠洲市ということになっていたが、実際に珠洲市で活動出来たのはわずか1日だけだったという。

しかし、現地の人たちが「消防車を見るたびに頭を下げてくれたり、手を振ってくれたり、『ありがとう』と言ってくれたりしたので大変励みになった」そうだ。

捜索を阻む余震と道路の寸断

こうした被災地の厳しさは別の消防の報告からも浮かび上がってくる。

同じく県緊急消防援助隊・1次隊に御殿場市・小山町広域行政組合消防本部から派遣された御殿場消防署の小見山淳司 消防司令は「ひどい状況。道がふさがれ、建物の1階部分がほとんど潰れ、2階が残っているような状況。倒壊のおそれがあるため家屋の中に入ることが一番難しく、余震もあるので常に入って避難、入って避難の繰り返しを余儀なくされた」と振り返る。

御殿場市長への活動報告(1月9日)
御殿場市長への活動報告(1月9日)

小見山消防司令の活動地点は珠洲市の若山町白滝地区だったが、「かなりの道路が寸断されていて行くまでに時間を要した。消防車ではとても行ける道ではなく、救急車や司令車といったワンボックスカーに人員を乗せ、資機材も手で持てるバールやナタ・ノコギリを持って向かった」という。

提供:御殿場市・小山町広域行政組合消防本部
提供:御殿場市・小山町広域行政組合消防本部

ところが、携帯電話も無線もつながりにくく他の部隊との連絡が取りづらかった上、橋を渡ろうとした際には「橋が隆起していて、車でも徒歩でも行けない状況で、実際に倒壊家屋までたどり着けなかった」と歯がゆい思いも口にした。

また、捜索活動中にも余震に見舞われ「来た道が帰る頃には崩れて、違う道を帰ってくるような状況だった」とも話す。

土石流の被災地から能登の被災地へ

災害派遣は2021年の土石流災害に際し、多くの自治体から支援や応援を受けた熱海市からも行われた。

このうち応急給水支援として給水車とともに石川県かほく市に入り、被災の様子を目の当たりにした熱海市水道温泉課の遠藤克徳 施設室長は「復旧には時間がかかると思う。マンホールが飛び出ているということは管も破断しているおそれがあるので調査も必要になる」との見解を示す。

提供:熱海市
提供:熱海市

不便を強いられる被災者たち。

活動報告をする遠藤施設室長
活動報告をする遠藤施設室長

しかし、そんな中でも「給水拠点で給水車の補給をしていると車が停まり、小さな女の子が降りてきて、チョコレートを手に『石川県のためにありがとうございます』と言ってくれた。地元の方から『遠くから来てくれてありがとう』という声はたくさんもらい感動した」と遠藤施設室長は明かした。

医師が懸念 感染症が…トイレが…

一方、DMATとして磐田市立総合病院から能登総合病院に派遣された一谷真一 医師は、気温の低さから避難所の換気が難しくなっているとして、「集団生活でみんな密着している状態なので、1人(感染者)が出たら全員かかってもおかしくないので、かなり致命的」と新型コロナウイルスやインフルエンザなどへの懸念をあらわにした。

提供:磐田市立総合病院
提供:磐田市立総合病院

さらに一谷医師によれば能登総合病院は断水に加え、貯水槽が破損して水が貯められない状態にあり、「トイレが使えないため、職員が雨水を貯めて4階までバケツで運び、水を流しているという状態」だという。

発災から10日近く。被災地の日常は今もまったく見えていない。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
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