今回の能登半島地震で明らかになったのは、地震発生から津波到達までの早さだ。数分の行動が生死を分けるというが、その時どう動くべきなのかを検証した。
■地震発生から津波到達までの早さが今回の特徴
1月1日、石川県珠洲(すず)市。
午後4時10分に起きた地震の直後、次々と沿岸に津波が押し寄せた。 今回の地震の大きな特徴の一つは、揺れが起きてから津波が到達するまでの時間の早さだ。 東北大学の研究グループが作成したCG動画では、地震が発生した直後から海面の変動がみられ、石川県珠洲市ではわずか1分後に津波が観測されたと推測される。

情報カメラにも、大波が堤防を乗り越える様子が記録されていた。 地震の直後に津波の計測器が途切れてしまったため、どれくらいの高さの波が押し寄せたのか、明らかにはなっていない。
しかし一夜明け、港には津波の被害を受けたたくさんの船が打ち上げられていた。また、住宅が立ち並んでいた沿岸周辺には、ごっそりと家屋が流されたような跡が。 海上保安庁によると、珠洲市の漁港周辺では津波に流されて1人が行方不明という情報も寄せられている。
多くの住宅が津波の被害に遭ったという地区。ここで津波に車庫ごと車が流されたという女性は、発生時のことをこう振り返った。
津波の被害に遭った人:
震度7っていうのは必ず津波が来るからということで逃げたのよ。この浜通りをだーっと。だけどすでに道路がぼこぼこしていて、車で行けなかったから壊れた屋根の上を通って避難所へ行ったの

■温泉旅館が並ぶ沿岸部では正月で普段より多くの人が…この時避難は
地震から12分後、津波は関西にも到達する恐れがあるとして、京都府には津波注意報、兵庫県北部には、津波警報が出された。 日本海側に面する兵庫県北部では、予想される波の高さが最大3メートルだった。
正月ということもあり、温泉旅館が立ち並ぶ香美(かみ)町には、普段より多くの人たちが滞在していた。この時、避難はスムーズに行われたのか?
香美町にある温泉旅館の支配人の横溝さんは、厨房で地震の揺れを感じ、その直後スマートフォンに津波のアラームを受信したことから、スタッフに客の避難誘導を行うよう指示をした。

目指すは、町が津波の避難場所として指定する高台だ。 避難を始めた直後の映像では、避難の様子が記録されていた。
にしたにや海華 横溝友弘支配人:
(Q.どちらに連れていくのですか?)丘、高いところ
電車で来た客は高台まで逃げる手段がなかったため、横溝さんは旅館の車を使って客をピストンで輸送していった。
にしたにや海華 横溝友弘支配人:
どちらのお客さんも結構です、どうぞ。誰でもいいです
客らを車に乗せる横溝さん。旅館から高台まで2往復して、10数人の客を避難させることができた。かかった時間は、およそ5分。
にしたにや海華 横溝友弘支配人:
皆さんマナーは良かったですね。非常に大人の対応で、高齢者の方を優先させたり、小さい子どもを優先されたり、本当にすてきでしたね。お客さまに慌てられると、こっちも慌てますので、どうしても

■適切な方法で避難することも大切
いざ津波が来るとき、適切な方法で避難できるかも重要なポイントとなる。消防庁は、地震が起きてから避難する際の注意点をまとめたマニュアルを作っている。
自宅で揺れを感じた時は、揺れが収まるのを待ってからコンロなどの火を消す、テレビ・ラジオ・防災無線を聞いて、避難すべきか判断する。避難する際は火災を防ぐために、電気のブレーカーやガスの元栓を閉める。携帯品は歩きやすいよう背負える範囲のものにとどめるなどだ。

こうした注意点に留意しながら避難すると、どれくらいの時間がかかるのか。香美町の沿岸部に住む尾崎隆幸さんと、妻の和代さんに体験してもらった。
まずは、近くにあった電気ストーブのスイッチをオフ。避難する前に、台所のコンロの元栓も閉める。さらに、火の元だけでなく、屋外にある電気のブレーカーを落とすことも大事なポイントだ。そして、避難の邪魔になる物は持たず、携帯品は最小限に。
Q.高台まではここから歩いて何分くらい?
尾崎隆幸さん:
すぐです
尾崎さんたちが目指すのは、町が指定している高台にある避難場所。毎年1回は、地震を想定した訓練でこの場所を訪れていて、1日に起きた地震でもここに避難してきた。

到着したのは、海抜17.8メートルの高台。仮に3メートルの津波が来ても身の安全を守れる場所だ。 揺れが収まってから避難するまで、4分42秒かかった。
尾崎隆幸さん:
マニュアルは知っているけど、なかなか。防災のパンフレットには書いてあるけど、やはり、まさか、その場になったら避難袋もあるけど、なかなか持ち出しもできないし…
尾崎和代さん:
ブレーカーを落とすっていうのは分かってなかったですね。だから、今回すごくいい勉強させてもらいました

津波から逃げる時は時間との戦い。さらに、安全に避難する必要もある。
(関西テレビ「newsランナー」1月5日放送)