障害者施設で作られたお菓子を集めた「クリスマスボックス」。工賃のためだけではなく、障害があっても毎日を楽しめる「生きがい」や「やりがい」を持ってもらおうと、この商品を手掛けた女性の取り組みを取材した。
“クリスマスボックス企画”始動
色とりどりのクッキーにハート形のフィナンシェなど、かわいらしい焼き菓子を詰め合わせた「クリスマスボックス」。
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7つの障害者施設を利用する人が作ったお菓子を集め、山形県の内外に400セット販売された。山形市で障害者の介護支援や就労継続支援などを行う「わたしの会社」も菓子製造に参加した施設の一つだ。
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12月18日、キッチンではクッキーの袋詰め作業が進められていた。ココアに抹茶・ゴマと味や色合いも様々なクリスマスツリーと星の形をしたクッキーを作った。
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「わたしの会社」のサービス管理責任者・村上和広さんは「クッキーを円になるように、それぞれ役割をもって形を作ってもらっている」と話す。
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利用者は、全ての種類が入るようにクッキーを選びながらやさしく並べていくが、利用者の1人、佐藤さやかさんは「けっこう難しい。種類が同じみたいだから間違えそう」と苦戦しているようだった。
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クリスマスボックスを企画したのは、山形・朝日町を拠点に障害者が作る商品の開発や販売を支援している吉田遥子さんだ。吉田さんは袋詰めをするクッキーを見て「いろいろな種類が入っているから間違えたら大変ですね」と利用者に声をかけていた。
「わたしの会社」では普段から利用者が作ったパンや焼き菓子を販売したり、カフェで提供したりしていて味には自信がある。
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吉田遥子さん:
いつも通りおいしい。皆さんが手間暇かけてくださったのが見た目にも味にも出ていると思う。楽しみ
今回は400セットの大量注文。さらに県内だけでなく県外にも販売されるとあって、利用者が感じるやりがいはいつも以上だ。
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「わたしの会社」 サービス管理責任者・村上和広さん:
大量の注文が入ると、“求められている”“役に立っている”という気持ちになるのかな。ただクッキーを作るだけではなくて、作っているものを媒体として、色々な人とのつながりがそこで生まれてくる
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わたしの会社の利用者・佐藤さやかさん:
おいしいと言ってくれたので、それで十分。全国に広がってもらえればありがたい
“工賃の低さ”から生まれた企画
吉田さんは県内の特別支援学校の講師をしていた2020年、「就労支援型B型事業所」の工賃の水準が低いことを知った。
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「就労支援型B型事業所」は、障害があり就職することが難しい人が雇用契約を結ばずに軽作業など仕事の機会を得ることができる施設だ。全国平均が月額1万6,000円を超えるのに対し、県内では1万2,943円と、47都道府県の中で2番目の低さとなっている。
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この状況をどうにかできないのかと思った吉田さんは「自分にできるのは商品を集めて、それをSNSなどで販売することだ」と考えた。
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施設の職員は利用者の支援で手いっぱいで、新たな商品開発まで手が回らない。そのため吉田さんは、2022年から施設に所属しない「フリー」の立場で、菓子やパンの詰め合わせの企画を始めた。母の日やハロウィンなどイベントに合わせた商品にも挑戦し、これまで15を超える施設が参加した。
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吉田遥子さん:
“何となく作れるものを作っている”というところが多かったと思う。それではダメと感じた。最初は売れるものをしっかりリサーチして作るということが大事。障害がある人は“社会とのつながり”が課題になりがち。より多くの人に知ってもらいたい
「色々な喜びを感じてもらいたい」
クリスマスボックスには、吉田さんの思いが詰まった部分がもう一つある。
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箱につけられたユーカリの葉っぱには「フォーユー」「サンキュー」の文字。山形養護学校の生徒が作ってくれたものだ。
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吉田さんも山形養護学校の授業に参加し、ユーカリの葉にスタンプを押す作業が行われた。グッと力を入れながら、1枚1枚、丁寧に400枚を目指す。
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スタンプの担当に、飾りを集める担当。それぞれができる作業を行い次々に出来上がっていく。そして400枚のユーカリの葉にスタンプが打たれた。
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吉田遥子さん:
最後の1枚。皆さんが頑張って作ってくれたこのカード、大事に日本中の皆さんに届けたいと思うので楽しみにしていてください
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山形養護学校の中学部1年・佐藤紬生さん:
きれいに押せたので良かった。みんなによろこんでもらえるように頑張った
最初はB型事業所の工賃を引き上げたい一心だった吉田さん。しかし、活動を続ける中で、障害があっても毎日を楽しめる「生きがい」や「やりがい」を持つことが何より大事だと実感するようになった。
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吉田遥子さん:
人それぞれ、お金だけじゃないうれしさがある。工賃を上げることもすごく大事だが、自分が作ったものが人の手に届いて喜んでいるという、色々な喜びを感じてもらいたい。人としてのやりがい、自分の中心にあるものをしっかり持てるようになるお手伝いができればと思っている
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吉田さんは今、年度末に向け贈答用に使えるお菓子の詰め合わせを企画しているという。
(さくらんぼテレビ)