「就労継続支援B型事業所」とは、障害があって就職することが難しい人が雇用契約を結ばずに軽作業など仕事の機会を得ることができる事業所のことで、山形県内に173カ所ある。仕事の対価「工賃」の引き上げを目指す現状と課題に迫った。

尾花沢市の事業所では…

山形・尾花沢市の就労継続支援B型事業所「はながさ」で12月に始まったのは、冬の人気の商品「くじら餅」づくり。利用者たちは米粉や餅粉・砂糖などを混ぜ合わせる作業を丁寧に行っていた。

「くじら餅」づくりの様子
「くじら餅」づくりの様子
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就労継続支援B型はながさ・小松純子さん:
こぼさないように混ぜる。丁寧に、愛情込めてかき混ぜている

はながさ利用者:
楽しいです。食べてくれる人もうれしいし、まだ食べてもらえていない人もいる。たくさん売って全国のみなさんに届けたい

はながさでは、18歳から60代の12人が、菓子や小物の製造・野菜づくり・空き缶のリサイクル作業などを行い、その対価として「工賃」を得ている。

就労継続支援B型はながさ・小松純子さん:
「おいしかった」と言われると、みなさんの自信にもなるし、工賃をもらえるという自信にもつながる。社会との接点がない中で、こういうことをきっかけにつながっていくことは大事なこと

頑張って仕事をし「工賃」をもらうことは、利用者にとって大きなやりがいになっている。しかし山形は、47都道府県の中で工賃が2番目に低いのが現状だ。

県が「共同受注センター」立ち上げ

「工賃」の全国平均は月額1万6,507円なのに対し県内では1万2,943円。さらに最も高い福井県と比べると、その差は9,000円あまりだ。

県共同受注センター・粟野政典コーディネーター:
B型事業所の、県内の平均工賃が月額1万3,000円にも満たない。全国でも最低レベルの実績。底上げをしなければいけない

県は工賃の引き上げを目指し、2022年11月に「県共同受注センター」を立ち上げた。県経営者協会が運営し、2人のコーディネーターが県内各地の企業とB型事業所を回って仕事のマッチングを行う。

既存の仕事ではこれまで採用されてきた工賃があり、それを引き上げることは難しいのが現状。そのため、新しい仕事をマッチングし、さらに工賃を高い水準で設定できるかが工賃アップのカギとなる。

県共同受注センター・粟野政典コーディネーター:
私どもも「既存の仕事の工賃を上げてほしい」というのは難しいと判断している。お互いにメリットがどこにあるか追及して仕事を開拓している

それぞれの“強み”で価値を見いだす

共同受注センターの立ち上げから一年がたち、新たな仕事のマッチングに成功したのは143件と、着実に成果は上がってきている。共同受注センターがマッチングに加えて力を入れているのが、それぞれの事業所が持つ“強み”の掘り起こしだ。

コーディネーターの粟野さんは、山形市の「ブライダルハウスささき」から提供してもらった着物や帯を使った、新たな商品の開発をはながさに依頼していた。

担当したのは、利用者の菊池祐子さん。聾学校時代に学んだ和裁の技術を生かし、バッグや数珠を入れるケースを作った。模様をいかし、丁寧な縫製で仕上げた商品のできに、粟野さんも驚いた様子。

菊池さんが仕上げた商品
菊池さんが仕上げた商品

県共同受注センター・粟野政典コーディネーター:
こんなに上質な、グレードの高い商品になるのかと。これだけの製品をB型事業所で作れるということと、その価値を認めてもらい、買ってもらう

この反応に菊池さんは「腕前はないが、忙しくすることが、頑張ることがうれしい、たのしい。やる気が満ちてくる。また持ってきてほしい」と力を込めた。

就労継続支援B型はながさ・小松純子さん:
わたしたちは、支援もしないといけないのでなかなか営業に回れない。営業をしてもらえることで、職員は支援に集中できるし、利用者の仕事の幅も広がる。すごく助かります

事業所の隠れた価値を掘り起こすことで生まれる、新たな「やりがい」。こうした取り組みの積み重ねが、工賃の引き上げにつながっていく。

県共同受注センター・粟野政典コーディネーター:
我々の最終目的は工賃向上。付加価値の高いものができれば、それだけ工賃アップにつながる。熱意をもって企業に説明をすれば、その熱意は通じると思う。我々の頑張り次第です

県は工賃の引き上げや障害者施設の売り上げ増加に向け、協力・連携する「ふれあいパートナーシップ企業」を募集している。詳しくは、県共同受注センター「023-616-7188」まで。

(さくらんぼテレビ)

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