パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム過激派テロ組織ハマスがイスラエルに対する無差別テロ攻撃を開始し、イスラエルとハマス掃討作戦を開始してから3カ月が経つ。
ハマスがガザ全体を巨大なテロ基地に改造し、ガザの民間人を盾にとってイスラエルに対するテロ攻撃を続けてきたことはこれまでも知られてきたが、イスラエル軍がガザに侵攻し調査を進める中で、それを裏付ける数多くの事実が明らかになってきた。
地下トンネルの実態は…
そのひとつは地下トンネルの存在だ。
ガザ地区におけるハマス指導者ヤヒヤ・シンワールは2021年、ガザの地下には500kmにもわたるトンネル網が張り巡らされていると豪語した。エジプトから武器を密輸したり、そこに隠れて身の安全を確保しつつテロ攻撃を実行したり、トンネル経由で武器や人員、拉致してきた人質などを移動させたりしてきたことはこれまでも知られてきた。
この記事の画像(7枚)2023年12月にイスラエルが発見し、映像を公開した地下トンネル網の壁はコンクリートでできており、最大級のトンネルは地下50mに達し、入り口は金属製で大型車両が余裕で通行できる幅があり、線路も敷かれていた。発見された1500のトンネルシャフト(立坑)のほとんどが民間区域や、学校や病院といった民間施設の中にあり、それらがロケット発射台とも直結していたことは、ハマスが民間人を人間の盾にしてきたことの証拠だ。
トンネル内には水道管、電気・通信網も整備され、エアコンや換気口、監視カメラも設置されていた。ハマス最高幹部たちのものとみられる司令室や会議室、隠れ家なども見つかり、ところどころに防爆扉があり、ロケット弾や武器に加え、飲水や食料も蓄えられていた事実は、トンネルに長期潜伏することも想定していたということだろう。
避けられない“ハマスの関与”
問題は、トンネル建設に使われた金やセメントなどの建材、トンネル維持に使用されてきた電気や水、食料などが、どこから何のためにもたらされたのかという点だ。
イスラエル軍報道官は2023年12月、トンネルに費やされた何百万ドルもの資金やセメントや電気は、病院や学校、住宅などガザの民間人が必要とするものに費やされるはずだったと述べた。
ガザにはこれまで、世界中から多額の支援金、大量の人道支援物資が供与されてきた。日本政府は2023年6月、過去30年間に約3200億円(23億ドル)のパレスチナ支援を行ってきたと発表しており、ガザへの支援も行ってきたと明言している。政府によると2022年だけでも、ガザへの支援総額は約31億円(2200万ドル)に達する。
ガザを支配しているのはハマスであり、ハマスの関与なしに支援金や支援物資をガザの民間人に届けることは不可能だ。日本の支援金や支援物資がハマスにわたり、テロに利用されていないことを保証するものはなにもない。
UNRWAとハマスの“協力関係”
他にも問題はある。日本のパレスチナ支援の多くは国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)に割り当てられており、UNRWAへの支援は1953年からこれまで70年間に総額1400億円(10億ドル)以上に達するが、このUNRWAはハマスと協力関係にあると批判されている。
UNRWAは職員数3万人以上、年間予算約2280億円(16億ドル)という巨大組織であり、予算の58%は教育に費やされている。ガザ地区だけで183もの学校を運営し、28万人以上の子供を教育しているが、これらの学校が子供たちにイスラエル人に対する憎悪を教え、テロを促進・賛美してきた証拠、および調査報告がこれまでに数多く挙げられている。
2014年段階ですでに、UNRWAの学校からのロケット弾発射が確認されており、2015年に公開された国連の調査は、ハマスがUNRWAの3つの学校を武器庫として利用していたと結論づけた。
2017年には学校の下でハマスの地下トンネルが発見された。2021年にも14機のロケットランチャーとトンネルが発見され、2022年にもトンネルが発見され、今回の作戦でも学校の敷地内で無数のロケットランチャーとトンネル、トンネルシャフトに加えて、大量の武器が発見された。
UNRWAの学校の“実態”は…
イギリスを拠点とするNPO、IMPACT-se は2023年11月、UNRWAの学校で使用されている教科書が極端に反ユダヤ主義的で、イスラエル人に対する暴力やジハード、ジハードによる殉教を賛美していることや、教員が配布した教材のなかでイスラエル人に対する爆破テロを「バーベキュー・パーティー」として祝福したり、1978年に13人の子どもを含む38人のイスラエル人を殺戮したテロ実行犯を模範的人物として賛美したりしている事実を報告した。
同NPOはまた、少なくとも13人のUNRWA職員が2023年10月7日にハマスが実行した大規模テロを公然と称賛したり支持を表明したりしている事実、テロをして死亡したハマスの戦闘員18人がUNRWAの学校の卒業生であることを確認できる件などについても報告している。
ジュネーブを拠点とするNGO、UN Watchは、少なくとも20人のUNRWA教師が2023年10月7日にハマスが実行した大規模テロをSNSで祝福した事実を報告し、日本を含むUNRWAへの主要資金提供国に対し、憎悪やテロをあおる教師に資金提供しないよう、UNRWAの責任と義務を追及すべきだと提言している。
ところが日本政府は、2023年10月24日にガザに対する15億円の緊急無償資金協力を実施、うち10億ドルはUNRWAへの割り当てだと発表されている。11月3日には上川外相が「ガザ地区の人々に一日も早く必要な支援を届けることが目下の優先課題だ」と述べて、パレスチナに100億円の追加人道支援をすると発表、12月17日には約91億円の支援を実施すると発表した。これは、11月末に成立した2023年度補正予算から拠出されることになっており、この金額は昨年度(約57億円)の約1.6倍に上る。
イスラエルに対して繰り返されるハマスのテロの背景には、ユダヤ人を憎悪しテロを賛美する教師が、子供たちを憎悪とテロ思想で洗脳し続けるUNRWAの学校に、日本をはじめとする世界中の国が多額の資金を投入し続けているという構造的問題がある。
数々の証拠が提示されているにも関わらず、この問題から目を背け、UNRWAに金を供与し続けることで“かわいそうな弱者”に寄り添う善人を装っている日本政府は、テロ共犯者のそしりを免れ得ない。
【執筆:麗澤大学客員教授 飯山陽】