2023年、北海道ではクマの目撃や捕獲件数が過去最多となった。
人身事故は8件、あわせて10人が死傷した。
またシカによる農作物の被害額も深刻で、約48億円(2022年度)にのぼっている。
一方で獣害駆除にあたるハンターは、どんどん高齢化が進み、緊急時の出動にも支障が出る事態となっている。
クマ被害が深刻化する北海道とハンター不足
この記事の画像(7枚)北海道猟友会によると、北海道内のハンター登録者数は年々減り続けていて、ピーク時の1978年に比べると、2023年は約4分の1にまで減少。
ハンターの半数が60歳以上と、高齢化も深刻な問題となっている。
狩猟免許の受験者が増加?新たな変化が
しばらく、なり手不足が続いていたハンターだったが、実は北海道の狩猟免許試験の受験者数が3年ほど前から増加傾向に転じている。
2019年は800人ほどだった受験者が、2023年は1276人に増えた。過去5年で最も多い人数となった。
狩猟免許取得をめざす若者が増加 なぜ?
なぜ今、ハンターを目指す人が増えているのだろうか。
受験会場をのぞいてみると、以前は多かった高齢者にかわり、今は20~40代の若い世代も目立つ。
受験者にハンターを目指す理由を聞いてみた。
普段はIT会社に勤務しているという男性(26)。もともと釣りやキャンプなどアウトドアが趣味だったが、大阪から札幌に転勤したことがきっかけで、北海道の獣害事情を知ったという。過度に増えすぎた動物を間引きすることで、生態系を維持したいと語る。
札幌市在住の女性(35)は、狩猟免許を持つ父親(65)と一緒に猟をしたいと語る。
測量や地質調査に従事する男性(59)は、仕事で山に入る際、護衛を頼むハンターが見つからず、自分で身を守るため狩猟免許の取得を目指したということだ。
大学に通う女性(21)は知り合いの農家が自ら狩猟免許をとり獣害対策にあたっているのを見て、狩猟に興味を持ったということだ。
目指すは「熊撃ち」ハンターになり分かったこと
ハンター歴5年の道上綾子さん(33)は、農業被害の対策として発足した「ボランティア駆除隊」に所属している。
普段はテレビカメラマンの仕事をこなしながら、早朝から「駆除隊」の活動にも参加。
足跡の見分け方や、わなを仕掛けるポイントなどについて、経験豊富な先輩ハンターからひとつひとつ地道に学んでいく。
いずれは「札幌市ヒグマ防除隊」に入りたいという道上さん。
自らシカ猟を経験したことで、命の大切さに気づき、いかに食べ物を無駄にしないかを日々考えるようになったという。
危険と隣り合わせのハンター…ヒグマと対峙するにはかなりの経験が必要
北海道猟友会札幌支部の奥田邦博支部長は、ハンター志望者の増加を歓迎しつつも、実際にクマやシカを駆除するためには、かなりの“経験”が必要だと強調する。
奥田支部長によると、ヒグマの場合、3発銃弾を撃ちこまれてもハンターに向かってくることもあるという。5年、10年の経験を積んで十分にスキルアップしないと命の危険があると警告する。
またエゾシカも、オスの場合はツノで向かってくることもあり、刺されると大けがをする恐れがあるとのこと。
試験を受けてすぐハンターになれるというわけではなく、一人前の狩猟者になるには、長い時間と経験が必要なのだ。
ハンターの活動を後押しする動きも…ジビエ肉の工場新設
そんななか、北海道釧路市でハンターの活動を後押しする新たな動きがあった。
東京の食肉会社が北海道最大級となるシカ肉工場を建設。2024年12月に稼働予定で、年間5000頭を加工し販売する予定だ。
2022年のエゾシカによる被害総額は、約48億4600万円。エゾシカの推定生息数は約72万頭で、そのうち約14万頭を捕獲している。
北海道としては生息数を半分の35万頭まで減らすことを目標に、今後捕獲数を増やす方針だが、捕獲後のシカ肉処理が大きな課題となっていた。
新たに衛生管理を強化した大きな工場が完成することで、首都圏などに高品質なジビエ肉が供給できることになり、シカ猟を後押しすることにもつながりそうだ。