大阪に本社を置く自動車メーカー・ダイハツ工業で大規模な不正が明らかになり、その余波がさまざまな所に広がっている。中古車販売店からは、ダイハツの車を客に勧めることができないといった声が聞こえてくる。

■ダイハツ174件の不正 対象は64種…トヨタやマツダで販売の車種も

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大阪市平野区大阪市にある中古車販売店には、ダイハツ製タントがずらりと並んでいる。

記者リポート:
こうした中古車販売店でも、今後、不正の影響を受けると思われます。

中古車販売店を営む小森竜司代表取締役:
命のかかわることなんで、今回のダイハツは信用かなり落としたと思う。今回のアレでだいぶお客さん離れると思う。

 前代未聞のダイハツの不祥事に販売店も困惑している。

 

不正行為について、調査を行った第三者委員会は20日の会見で…

第三者委員会 貝阿彌誠委員長:
認定した不正行為は合計174個。一番古いものは1989年ですが、2014年以降に件数が増加しております。

ダイハツでは、国の認証を受けるために安全性を確認する試験で174件の不正行為が行われていた。不正の対象は、64車種にのぼり、中にはダイハツが車を生産して、トヨタやマツダなどで販売される車種も含まれている。

ダイハツ工業 奥平総一郎社長:
今回、その認証を軽視していると指摘されても仕方がない不正が行われております。自動車メーカーとして根幹を揺るがす事態であると大変重く受け止めております。

ダイハツは、国内外全ての車種の出荷をいったん停止することを決めた。

■中古販売店「客に勧められない」 不正の原因は過度な生産スケジュールか

軽自動を専門に扱うこちらの中古車販売店では、ダイハツ車は売り上げの半分を占めていて、大きな影響となりそうだ。

中古車販売を営む小森竜司代表取締役:
軽自動車ばっかりやっていて、スズキ・ダイハツはメインで置いているんで。トップ2というか、やっぱり信頼あるんですよ。結局ブランドのイメージも信用も、今回で。僕やったら、いま『命にかかわることやからやめとき』『違う車にしい』とは言う。

不正は、ごく普通の従業員が過度な生産スケジュールに追われる中で行ったと第三者委員会は指摘している。

第三者委員会 貝阿彌誠委員長:
特に衝突安全試験の担当者は、破壊試験のため、絶対に合格しなければならない、不合格は許されないという、まさに“一発勝負”の強烈なプレッシャーにさらされながら、業務を行っていました

ダイハツ工業 奥平総一郎社長:
(不正行為の原因は)経営陣、管理職が現場の負担やつらさを十分に把握せず、困ったときに声をあげられない職場環境風土を放置してきたことにあると考えている。プロジェクト推進を優先し法令、ルールを守れない企業文化が形成されたと考えており、“全ての責任は経営陣にあります”

■本社に立ち入り検査 社員「上の人が下の人たちのこと考えたら良かった」

21日、大阪府・池田市にあるダイハツ本社に立ち入り検査が行われた。

記者リポート:
午前9時前です。ダイハツ本社に国土交通省の職員が立ち入り検査に入ります

 国土交通省は、立ち入り検査を行って、試験データが記載された資料の確認や関係者の聞き取りを行い、現在生産されている車が基準に適合しているのか、技術検証を進めている。

この適合性が確認されるまでダイハツに対して、すべての車の出荷を停止するよう指示している。

ダイハツコーポレート統括本部 井出慶太統括部長:
当局の目で、私どもの中身を見ていただくのは必要な措置だと思っているので、全面的な協力をさせていただいて、一日も早い信頼回復に取り組んでいきたい

今回の不正問題について、従業員は…

ダイハツ従業員:
上の人も下の人たちのことを考えてくれたら良かったんじゃないかな。
(Q. 管理職とのかかわりは?)
ほとんどないのがちょっと実際のところでしたね。
(Q.会社に求めることは?)
正直に何があったかを伝えてもらって、うまく対応してもらえたらいいな

■車の出荷は停止 今走っている車に…ダイハツ社長「安心して乗り続けて」

車の出荷は停止されましたが、街には今もダイハツの車がたくさん走っている。こうした車の安全性は担保されているのだろうか?

ダイハツ工業 奥平総一郎社長:
社内での検証ではございますが、安心して乗り続けいただいて。問題のあるという事象は生まれてきませんでした。今まで通り安心して乗っていただければと強く思っております。

不正行為はあったものの、「乗り続けて問題ない」と説明した奥平社長だが、この言葉に、ダイハツユーザーは…

ダイハツユーザー:
こわいですね、乗っている方からしたら…スズキももう1台あったんですけど、それも前、リコールで2年くらいで持っていっているんで…。“ちゃんとする”を徹底してほしいと思います。もうどうしようもないと思う。車が悪くて事故した場合は補償してほしいけど改善して新しいもの作っていったらいいんちゃう

■事故と不具合の因果関係の立証は難しい

国土交通省は、22日も立ち入り検査を行う予定で今後、不正の詳細を調べたうえでダイハツに対して、行政処分を行うか検討する。 ダイハツによる不正行為に大きな波紋が広がっているが、ユーザー側として最も不安なのはダイハツの車に乗り続けて大丈夫なのかという点ではないだろうか。

20日の会見では、ダイハツの社長から「乗り続けて問題ない」との説明があったが、今の状況の中でなんらかの不具合で事故が発生すれば、ダイハツの責任が問われる可能性はあるのだろうか?

菊地幸夫弁護士:
事故と不具合の因果関係が立証されれば…ですね。ただ、その立証はなかなか難しいと思います。今の裁判は何か問題があって損害が発生してこれを賠償請求するというカタチなんですよね。ところが不正があった、不安だ、でも乗っていられる…だと請求する理由がありません。結局そのうちあやふやになってしまうのでは…と。でもそれでは許されないですよね、国交省の行政処分は厳しくやっていただく必要があるのではないでしょうか

■生産中止は6000社以上の関連会社に影響

国交省が21日、ダイハツに立ち入り検査に入ったが、今後どうなるのか専門家・自動車評論家の国沢光宏に聞いた。 国沢さんは今回の問題について親会社であるトヨタの経営陣に取材、その際、トヨタの経営陣から問題発覚後に、ダイハツ・トヨタ・第三者による大規模な検査を行った結果、安全だと考えられるとの結論に至ったという回答を得たということだ。

ただ、最悪のケースも考えられるということだ。それは国交省が「安全認証」を取り消したら車の生産ができなくなることだ。生産再開には再認証される必要があるが再認証まで1年ほどかかるということだ。もし1年も生産ストップとなればユーザーだけではなく、部品工場など経済へも影響を及ぼす可能性があるということだ。

国交省は21日、ダイハツの本社に立ち入り検査に入ったが、今後の調べ次第では安全認証が取り消される可能性も考えられる。

菊地幸夫弁護士:
可能性としてはそうですね。ただ、われわれの安全・命をあずけて買わせていただいた車に乗る。その安全性に関する不正があった、だけど結局(処分は)曖昧だったではすまされない

ダイハツといえば軽自動車市場のシェアの3割を占める。そもそも自動車といえば日本の主要産業なので、もし1年も生産停止となれば、相当な影響が考えられる。

関西テレビ 神崎博デスク:
自動車1台で部品が3万点あるとも言われます。ダイハツとの取引企業は直接・間接含めて全国で6000社以上ということなんですね。もしダイハツがこの先1年間クルマを作れないとなるとダイハツ本体だけじゃなく、そうした取引関連企業、販売店、部品会社な度も含めて業界全体でどうやって1年間食いつなぐのかっていう問題も出てきます。 自動車業界は非常に裾が広いので、非常に根深い問題だと思います

親会社のトヨタにできることはあるのか?

関西テレビ 神崎博デスク:
少し前に日野自動車で不正があった。日野もダイハツもどちらも豊田の傘下です。ダイハツに関しても1980年代からこういう不正はあったのですが、その件数が増えたのは2014年とかそのあたりです。トヨタの資本参加が強くなるにつれて、不正の件数が増えています。 トヨタとしてはちゃんとダイハツに対して、ある種グリップを効かせると言いましょうか、管理ができていたのか…と。親会社としてのトヨタの責任っていうのは大きいと思います

生産再開の時期が見通せない中、各方面に大きな影響を及ぼす問題だけに、国交省による今後の調査の行方が注目される。

(関西テレビ「newsランナー」12月21日放送)

関西テレビ
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