大空を見上げる1500万本のポピー

花は言葉を持たないが、わたしたちにいつも語りかけてくる。

冬を越え、芽吹いた生命が季節を彩る。
赤やピンク、白色の花びらが空に向かって広がり、風に揺れるポピーは、まるで太陽との出会いを喜んでいるかのようだ。

「天空のポピー」。

埼玉・秩父高原牧場には、東京ドームとほぼ同じ広さの土地に1500万本ものシャーレ―ポピーが咲いている。
 

実際にポピー畑を前にすると、それまで毎日見ていたウェブサイトの写真とは、まったく違う世界が広がっていた。

美しいという言葉だけでは表現できない絶景。

取材に追われる日常を一瞬忘れ、世界がすっと広がっていくような気持になった。
小型無人機ドローンを使い、朝日に照らされたポピー畑を上空から撮影した。

撮影に立ち会った東秩父村役場の男性のポピーを見つめるやさしい眼差しが印象的だった。

 
 
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来場者数は住民の3~4倍!

埼玉・皆野町と東秩父村にまたがる秩父高原牧場の牧場主が、多くの人に見てもらいたいとの思いから始まったこのイベント。
2014年には、地域活性化を目指した秩父高原牧場と皆野町、東秩父村なども加わり「ポピーまつり実行委員会」が発足。
今では、県内のみならず県外からも見学者が訪れるようになり、2017年の来場者数は約3万9000人に上る。

牧場がある皆野町、東秩父村の人口は合わせて1万2000人ほど。
実に、住民の3~4倍の人がポピーを見に訪れていることになる。

1500万本の種をすべて手作業で・・・

取材をして驚いたのは1500万本のポピーの種蒔きが、手作業で行われていることだ。

イベントを運営する実行委員会の20人程のスタッフが、前年に採取した種を半日かけて蒔いている。
雑草の除去もすべて手作業だ。
 

雨水で荒れた畑(提供:秩父高原牧場)
雨水で荒れた畑(提供:秩父高原牧場)
種まきはすべて手作業
種まきはすべて手作業

今年開花したポピーの種蒔きは、もともと去年10月に予定されていたが、台風による雨水の影響で畑が荒れた為、耕し直すこととなり、種まきは例年より3週間遅れの11月になってしまったが、4月に気温が高い日が続いたことで、例年通りとなった。

 
 

取材中、あちこちで「綺麗だね」という言葉が聞かれ、ポピー畑は来場者の笑顔であふれていた。

ポピーまつりの運営にあたっている東秩父村役場の篠崎さんは「種まきや手入れは大変ですが、来てくれた方に綺麗だと言ってもらえる事がやりがいです。」と語っていた。
日に焼けた笑顔が素敵だった。

1本1本、手作業で育てられた人の温もりを感じる花が、高原の風に揺れている。

背丈が80センチほどのポピーが揺れる様子は、花びらが風を受け喜んでいるように見えた。

そんな光景を目にした人たちに、温もりが伝わる。
私も温もりを感じた一人だった。
 

 
 

新米ビデオエンジニア 初めての企画取材に挑戦!

社会人2年目の新米ビデオエンジニアとして、初めてディレクターに挑戦しました。

ビデオエンジニアは音声や照明などを担当する仕事で、マイクを付けた長い棒を持ってカメラマンと共に行動している姿を、テレビの映像などで見たことがある人もいるのではないでしょうか。

普段は、政治経済事件などジャンルを問わずニュースの最前線で取材をしています。
今回は初めてディレクターに挑戦しました。

取材現場で、音声収録や映像環境をつくることに集中するいつもの仕事と違い、事前の調査、取材依頼、4Kカメラを使った撮影機材の準備、テレビ放送用のリポート、編集から放送の送り出しまでを経験しました。
人生で初めてリポートも体験しましたが、何をどのようにリポートすればいいのかわからず、気づけばカメラに向かって仁王立ちしていました。

企画案を提出してからずっと、ポピーのことで頭の中がいっぱいでした。報道のさまざまな現場に立ってきたものの、企画取材となるとわからないことばかりでした。

どうしたら素敵な放送になるか考え抜いて、たどり着いた答えは「しつこく一所懸命に取り組む」事でした。1分前後の短いテレビ放送時間で伝えられることは多くはありませんが、取材を積み重ねれば、積み重ねただけ、納得できる放送になるだろうと考えました。

放送を終えた今も、モニターに映ったポピーの赤い色が目に焼き付いています。

(取材撮影部・永岡清香VE)

 
 

<施設情報>
「天空のポピー」秩父高原牧場(ポピーまつりは6月8日まで開催)
埼玉県秩父郡東秩父村大字坂本2949-1
電話:0493-82-1223(午前9時~午後5時)