1週間で年間降水量の約半分の雨が…

熊本県を中心に全国で80人以上の死者・行方不明者が出た今回の豪雨災害。福岡・みやま市では、特産のミカンの畑が大きな被害を受けた。

ミカン農家・近藤誠さん:
月曜日の夕方は、道なりに下がっただけだったんですよ。火曜日の朝に来たら、こういう状況だったんで、雨で地盤が緩んだんでしょうね。ここがこういうふうになるとは思ってないもんで

崩れた山肌は、むき出しのまま。道路には、山から流れ出した雨水があふれていた。

ミカン農家・近藤誠さん:
この辺はですね、崖崩れとかですね、ミカンの段々畑があるでしょ、あれが落ちたりとかですね、結構な被害で、毎年こういう所があるんですね

みやま市の山間部にある大きな農業用のため池は満水、すでに飽和状態にあり、その先に集落が広がっている。この先の雨が非常に心配される。

この地域で生まれ育った立花英隆さん(85)。過去に集落全体がのみ込まれた土砂災害を記憶している数少ない人物だが…

立花英隆さん:
いっぺん土石流でやられとるからね、私たちも。全部道路がなくなったんですよ。下は、この谷はですね。65年ばっかし、みかんをしているが、こんなに長く雨がふるというのは今回が初めてです

今回大きな被害をもたらしたのは、積乱雲が帯状に連なった「線状降水帯」。
大牟田市では、わずか1週間で年間の降水量の約半分の雨が降り、排水ポンプの故障も相まって、80代の男女2人が浸水した住宅で亡くなった。

さらに久留米市では、田んぼの中にある養鶏場も川の氾濫によって濁流にのみ込まれた。山ノ井川が氾濫し、あふれた水が鶏舎に押し寄せてきたという。
1万8000羽を飼育している鶏舎では、出荷間近だったブランド鶏「はかた地どり」が被害を受けた。

北村農場・井上譲治さん:
1カ月後には、本来であれば正規に出荷できる状態ではあったんですけど、今回の大雨でですね、約2000羽が死鳥として発生したと

ーー死んだということですか?

北村農場・井上譲治さん:
はい

命を守るためにどう備え、どう行動するか

想定をはるかに超える豪雨を降らせる線状降水帯。いつ、どこにできるのか予測が困難で、これまでの防災の常識が通用しなくなる中、命を守るためにどう備え、どう行動すれば良いのか。

防災システム研究所・山村武彦所長:
最初から計画が逃げる計画になっている。これからは「逃げなくてもいい計画」が必要

これまで50年以上、国の内外の被災地を調査してきた防災システム研究所の山村武彦所長は、今回の豪雨でも熊本・人吉市に入った。
老人施設の入所者など19人が死亡した現地の状況をふまえ、災害弱者を守るためには、考え方を根本的に変える必要があると訴える。

防災システム研究所・山村武彦所長:
立地からすれば、1階に利用者が寝泊まりしているとしたら、いざという時は2階に上げなきゃいけない。それも階段を車いすで。それは、1人について4人必要ですよね。それを住民の応援を求めてやるにしても、夜中の大雨の最中にそれだけ大勢の人が動員できるかというと、難しいですよね。今、自力で避難できない人が1階で寝てて良いのか、その建物が浸水区域にあっていいのか、それを問い直す時代だと思います

“コロナの壁”に阻まれるボランティア

そして今回の豪雨は、新型コロナウイルスの感染拡大の中で迎えた初めての大規模災害だった。
感染防止のため、ボランティアの公的な募集が県内や近隣地域だけに限られる中、全く人手が足りない被災地では、住民レベルの動きも見られた。

被災者:
彼は、僕のフェイスブックで「被災してる」と言ったら、「助けに行きたいです」とわざわざ来てくれた。ネットはすごいですね。フェイスブックだとか、友達のインスタグラムとか

大牟田市では、被災者自身がSNSで助けを求め、窮状を知った人が手を差し伸べる動きが広がりつつある。

被災者:
(市は)50人上限で募集していますので、それだけでは全く足りないので。きょうは朝、8人ぐらいが来ていたんですけど、みんな午後からお仕事の方なんで帰っていただいて

ーー結構、支援の輪が広がっていると?

被災者:
そうですね。行政がやっていることは、申し訳ないですけど、一歩も二歩も遅いです

熊本の被災地でもボランティア不足は深刻で、山村所長は、“コロナの時代”に即した新たなあり方が求められると指摘する。

防災システム研究所・山村武彦所長:
人吉に行ってみたら、(被災から)1週間目だとボランティアの数が相当いなければいけないんですけども、本当に1人、2人。本来は、全国から集まって被災者に寄り添い、助け合うというのが日本の美学ですよ。それをコロナの壁で阻まれているのが現状です。絶対安全というのは難しいかもしれませんが、より安全な方法で、そして最低限度のルールを決めてボランティアを募る方法を考えていかないと、早期の復旧ができないのではないかと懸念しています

予測困難な豪雨が毎年のように各地を襲い、新型コロナへの対応も新たに迫られる中、山村所長は、防災意識をより一層高めるべきだと警鐘を鳴らす。

防災システム研究所・山村武彦所長:
何となく今は技術が進んで、河川は氾濫しないだろう、都市は排水機能もしっかり完備されているだろうと、そういうふうに思いたいんですけど、希望は決して権利じゃないんです。そういう認識を持って、今、我々は脆弱(ぜいじゃく)な都市、そして気象変化に対応していない都市に住んでいるという認識も大事だと思います

(テレビ西日本)