近年、増加傾向にあり死に至る危険もある「オーバードーズ」。薬の用法・用量を守らずに過剰摂取することだが、薬の成分には麻薬に似た成分もあり依存症に繋がるケースも多く医師は危険性を訴えている。

口から泡…怖かった

街で話を聞いた20代女性は、過去に過剰摂取していた友人の様子を見たことがあるという。「ちょっと気分が落ち込みやすい、心が病みやすいという人だった。気付いたら気絶していたり、ひどい時は口から泡みたいなのが出ている時もあった。怖かったな、怖いからやってほしくないです」と話した。

街で聞くと友人が薬の過剰摂取をしていたという話も
街で聞くと友人が薬の過剰摂取をしていたという話も
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福島県でも増加傾向

郡山消防本部によると、オーバードーズで病院に運ばれた人は2022年は70人、2023年は72人と増加傾向にある。
郡山消防本部救急係の飛田清さんは「部屋に市販薬や処方薬が複数開けられた状態で、そこに具合が悪い・意識が朦朧としている方がいる現場があった」と話す。

郡山消防本部でもオーバードーズでの搬送は増加傾向
郡山消防本部でもオーバードーズでの搬送は増加傾向

女性・若年層が多い

2018年~2022年の5年間で病院に運ばれた人は313人。男性が74人に対して女性は239人と7割以上を占める。また若年層の割合が多く、15歳から34歳は150人と約半分を占めている。
郡山消防本部の飛田さんは「学校や家庭でのストレスを和らげたり、紛らわせたりすることが背景にあるのでは」と話す。

学校・家庭でのストレスが背景? 女性・若年層が多い
学校・家庭でのストレスが背景? 女性・若年層が多い

市販薬の過剰摂取が増加傾向

一方、福島県郡山市にある土屋病院の精神科・阿部正幸副院長は「風邪薬を飲むと眠くなるから少し多めに飲んでしまったとか、軽いモノも含めると外来で診ている患者の2~3割はいる」と話し患者の増加を実感している。

土屋病院・精神科の阿部正幸副院長
土屋病院・精神科の阿部正幸副院長

気軽に買える・服用できる環境

阿部副院長は「コロナ禍で、政府が自分で薬を買って自分で治療しようって誘導したの覚えていますか?熱があったら、薬局に行って薬を買おうと。あれ以降、急に増えていると思う。自己治療の延長だったり、身近なモノで自分で治療するっていう事が刷り込まれている」と話し、ネットで情報が出回り、簡単にに市販薬を購入できることが原因の一つだと指摘する。

情報入手がしやすく市販薬が手に入れやすい環境
情報入手がしやすく市販薬が手に入れやすい環境

麻薬に似た成分も

しかし、市販薬の成分には麻薬に似た成分もあり、依存症に繋がったり死に至る危険もあるという。阿部副院長は「不整脈のリスクは非常に高いし、飲み合わせで依存も多い、あと吐いたりとか。混乱する錯乱状態、幻覚や妄想のような状態になってしまって、その後、異常行動に繋がるリスクも非常に高い」と話す。

成分には麻薬に似たものも 依存症や死に至る危険
成分には麻薬に似たものも 依存症や死に至る危険

高齢者も注意 用量を守って

一方で、若年層だけではなく高齢者などにもリスクがあるという。阿部副院長によると、認知症の方で、薬を飲んだかどうか忘れてしまうことがある。分からないから、取り敢えず飲んでしまうというケースもあるという。

認知症が起因になるケースも
認知症が起因になるケースも

賑やかな時期 孤独を感じて

また阿部副院長は、年末年始にオーバードーズが増えるのではないかと懸念。「学校が休みになる。世間が浮かれてイベントがいっぱいになる。そういう中で、孤独感とか孤立する人が出てきたりするので、寂しさを紛らわすために薬を飲んでしまうのではないか」と警戒を強めている。

ストレスを取り除いたり周囲のサポートが大切に
ストレスを取り除いたり周囲のサポートが大切に

オーバードーズを防ぐために、行為そのものを止めるのではなく、その人のストレスへの対処能力とか環境へ適応する力を周囲でサポートすることが重要だと、阿部副院長は話した。郡山消防本部でも、専用窓口への相談を呼びかけている。

(福島テレビ)

福島テレビ
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