コロナ禍に入社した若手社員の半数が「仕事を辞めたい」と感じている…。


健康・医療のサービスを提供するティーペック株式会社が2020年以降に入社した会社勤務の男女1000人(入社3年未満)を対象に行なったインターネット調査で明らかになった。

まず調査で「仕事を辞めたいと感じたことがあるか」を質問したところ、「いつも感じる」が20.4%、「たまに感じる」が30.6%で、合わせて51%が「仕事を辞めたいと感じている」ことがわかった。

仕事を辞めたいと感じたことがありますか?(画像提供:ティーペック)
仕事を辞めたいと感じたことがありますか?(画像提供:ティーペック)
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「仕事に関することでストレスを感じているか?」については、「非常に感じている」が20.4%、「やや感じている」が39.4%で、合わせて59.8%がストレスを感じていた。

この回答者に詳しく原因を聞くと、「同僚や上司との人間関係」が34.8%で最も高く、「仕事の内容や質」(24.4%)、「仕事の量」(12.7%)が続いた。

ストレスの原因(画像提供:ティーペック)
ストレスの原因(画像提供:ティーペック)

また「仕事に関することで悩みを抱えたとき、社内に相談できる人はいるか?」については、「いる」が54.0%。「いない」が46.0%。

そして社内の相談相手の有無で仕事を辞めたいと感じるかを比べると、仕事を辞めたいと感じるのは、相談相手がいない人の方が高かった。

「入社直後から業務がテレワーク」など、コロナ禍の会社の在り方は従来と異なっていた。そんなタイミングで入社した若手社員はいろいろと大変なこともあったと思う。

そして、これら若手社員の離職について悩んでいる会社も多そうだ。ではどうすれば若手社員の早期退職は防げるのか? 調査を行ったティーペック株式会社の担当者に詳しく話を聞いてみた。

コロナによるコミュニケーション不足

――まず51%が退職したいという結果をどう思う?

ある程度高い数字が出ることは想定しておりましたが、51%という半数以上の結果が出たことには驚いております。


――なぜこの調査を行った?

ティーペックではこころとからだの健康相談サービスを提供しており、定期的に相談内容をレポートしております。職場内のこころの相談としては「上司や同僚との関係」や「業務内容」についての相談が多い傾向にあります。

また、若手社員のメンタルヘルス不調にも課題があるとの声も聞いております。また、ストレスチェックの組織分析でも2023年度は若手のメンタルヘルス不調が増加傾向にあるという所感がありました。おりしも、本調査の後で日本生産性本部の調査でも若手社員のメンタルヘルス不調が増加していることが示唆される結果も出ています。

そこで、若手社員のメンタルヘルスを調査することを検討し、その中でも「コロナ禍に入社した若手社員」にフォーカスした場合、どういった結果がでるのか、その実態を把握・改善案を提案することで若手社員のエンゲージメント向上のお力添えにつながるのではないかと考え、調査の実施に至りました。


――退職したい人が多い理由は?

そもそも働き方改革やキャリアの多様性が推進されたことで、日本社会全体の流動性が高まっていることと、コロナ禍で一時的に落ち込んだ転職市場が、コロナ禍が徐々に明けて活況になっていることが根底にあると思います。

ただ、個人レベルでの転職か定着かの分かれ目は、組織に適応するためにコミュニケーションを通して、上司・同僚・組織に対して帰属意識を持てるかどうかだと考えます。そのため、コロナによってコミュニケーションが取れないことによる影響は出ているのではないかと思います。

ポイントは「上司からの声かけ」「ワークライフバランス」

――やはり社内に相談相手がいることが大事?

ストレスの原因のさらなる詳細データはありませんが、社内の相談相手を聞いたところ、相談相手のほぼ大半を占めるのが「同僚」と「上司」という結果も出ております。そのため、同僚、上司との関係性がうまく築けない場合、社内に相談相手がいなくなってしまうので、社内で孤立してしまう傾向にあるのではと考えられます。相談相手がいない人の方が、いる人に比べて退職意思が高いことが調査結果として出ておりますので、やはり相談できる相手がいることは重要かと思います。

なお、本調査では、社外窓口へのニーズについても調査しました。その結果の概要は、社外窓口のニーズは社内の相談相手の有無にかかわらず一定以上あること、そして社内に相談相手がいない人は、社外窓口へのニーズが社内に相談相手がいる人と比較して高いことが示されました。それゆえ、社外であっても相談相手がいることが重要と存じます。

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――若手の早期離職を防ぐには、会社としてどんな対策をすれば良い?

上司や同僚との交流の機会をつくることや、社内の相談先を設置することに加えて、相談内容や相談相手との関係によっては、第三者に相談したほうが適した場合もあるので、プライベートな内容も相談できる社外の相談先を設置することがよいのではと思います。


――上司たちは若手社員に対しどう接するのが良い?

気軽に相談してもらえるように若手社員に接していただくのが良いかと思います。就労環境や業務の都合もあると思いますので、会社として交流の機会をつくることも行っていただくとなお良いと思います。ポイントは2つで、上司から声をかけること、ワークライフバランスについての話が若手社員から話してもらえるようになることが挙げられます。

まず、最近の若手社員は、空気を読もうとして委縮すること、リスクマネジメント意識が高い傾向があります。それゆえ、上司側はいつ話しかけられてもいいと思っていても、若手社員側は忙しくしている上司に気を使っていつ話しかければいいかタイミングを逃し続けたり、邪険にされる可能性を恐れて話かけられずにいることがあります。特にコロナ禍により非対面が増えたり、歓送迎会など互いの人となりを知る機会が乏しくなったことが拍車をかけています。そのため、上司側から10秒でもいいので挨拶がてら声掛けをすることが肝要です。


――他にも気をつけた方が良いことはある?

次にこれも最近の若手社員の傾向ですが、ワークライフバランスについての意識が高まっています。仕事のモチベーションは、余暇の趣味のためのお金稼ぎと位置付けていることもあります。そのため、その方の勤続意欲を把握するとき、仕事のことばかりでは全体像を把握できず、どうモチベーションを上げるような声掛けをすればいいかわからない、ということにつながります。しかし、上司側から無理に聞き出すと個人の侵害というようなハラスメントになりかねないので、部下側から安心して話せるような、心理的安全性を確保した関係を形成するよう努めることが肝要です。


コロナ禍以降の社員が退職を考えている要因には「コミュニケーション不足」や「一時的に落ち込んだ転職市場が活況になっている」ことがあるようだ。

若手社員が辞めてしまうのを防ぐのは、相談窓口の設置や上司の声かけなどがポイントになるという。この問題で悩んでいる会社は参考にしていただきたい。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。