年末年始は高速道路も混雑しがち。スムーズな移動のため、NEXCOなどが発表する「渋滞予測」を参考にしている人もいるのではないだろうか。
渋滞予測は毎年の11月末ごろに発表され、予測される渋滞の回数、渋滞のピーク日時、渋滞の長さ、渋滞の発生箇所などを、高速道路の上り線・下り線それぞれにまとめている。

今回の年末年始(2023年12月28日~2024年1月4日)の渋滞予測(全国版)だと、下り線は12月29日、30日、1月2日、上り線は1月2日、3日に渋滞の多発が見込まれるという。場所によっては30km以上の渋滞も想定され、日にちや時間帯を分散するように呼び掛けている。

ドライバーには参考となる情報だが、ちょっとした疑問も浮かんでくる。年末年始の予定や車両がどこに向かうかはそれぞれなのに、約1カ月先の渋滞をどう予測しているのだろう。
そこでNEXCO東日本(東日本高速道路株式会社)に取材。渋滞予測の仕組み、渋滞に遭遇しないためのポイント、巻き込まれたときの対処法を関東支社の“渋滞予報士”(渋滞予測を担当する社員)に聞いた。
過去3年分の渋滞情報で予測
――年末年始の渋滞予測はどのように行なっている?
過去3年分の実際に起きた渋滞から導き出しています。あくまでも過去のデータであるため、予測できるのは「ある程度の未来」です。お客さまが旅行計画を立てるのにお役立ていただけるようにすること、なるべく最新の交通状況を踏まえて予測に反映させることのバランスを鑑みて、おおむね(年末年始の)1カ月前のタイミングで公表しています。

――渋滞予測にはどのような情報を参考にしている?
日付と曜日の組合せ、道路網と料金体系の変化、イベント(フェス、花火大会など)の開催状況などを参考にしています。一般的な交通状況を予測しているため、事故などの交通障害、気象(台風や大雪など)の影響といった要因も考慮しています。
――渋滞のピーク、渋滞の長さ、渋滞の発生箇所も予測しているがどうやっている?
渋滞の発生箇所や延伸状況、時間を軸にグラフ化し、これを3年分重ね合わせると、渋滞の箇所やピーク時の長さ、渋滞が解消するまでの時間の傾向が見えてきます。連休の長さや事故による影響など、過去の状況は毎年異なるため、その分を補正して予測を行っています。
渋滞予測の信頼性は約80%
――渋滞予測の信頼性は?外れることもある?
的中率は約80%です。一般的な交通状況を想定して予測を行っているため、当日の交通状況や気象などによって予測よりも混雑している、空いていることがございます。信頼という観点で言うと、100%の的中率を目指してはおりません。
気象予測と異なり、渋滞予測はお客さまに行動変容(日にちや時間の変更、ルート変更)していただき、渋滞を緩和することが目的なためです。ただし、渋滞予測が大きく外れてしまうことは、予測を信用してもらえないことにつながるので、そこがジレンマです。

――渋滞が起きやすい高速道路に共通点はある?
2022年にNEXCO東日本の管轄で発生した渋滞のうち、約70%が交通集中によるもので、このうちの大部分が、上り坂およびサグ部(下り坂から上り坂に勾配が変化する点)での渋滞でした。上り坂やサグ部は、運転していると上り坂であることに気付きにくく、無意識のうちに速度が低下してしまうことがあります。
交通量が多い状態では後続車がブレーキを踏むことになり、渋滞が発生しやすい場所になるのです。そのため、高速道路には標識やLED表示板を立てて「サグ」「上り坂」「渋滞ポイント」「速度低下注意」などのメッセージを発信しています。これらを見かけたら、速度低下に注意して運転してください。

――道路状況などから、渋滞の兆候のようなものを知る方法はある?
高速道路本線の各情報板にて、渋滞の情報を提供しております。このうち、一部の情報板では、渋滞が増加傾向(今まさに長くなっているとき)に赤い三角マークを表示しています。
渋滞に巻き込まれたら「車間時間2秒」を意識
――運転手が渋滞を避けるためにできることはある?
最も効果的なのは、渋滞を予測している日時を避けてご利用いただくことです。日にちの変更が難しい場合は、時間をずらすだけでも渋滞に巻き込まれる度合いは大きく変わります。下り方面は夕方~夜、上り方面は午前中が比較的空いていることが多いためオススメです。

――渋滞に巻き込まれた場合、意識してほしいことは?
渋滞悪化防止・事故リスク低減のために、2つの事項にご協力ください。ひとつは「むやみな車線変更をしない」こと。後続車にブレーキを踏ませ、渋滞を発生または悪化させる原因となりますのでご注意ください。
もうひとつは「車間時間2秒」(前の車から2秒遅れるイメージで走行すること)の実践です。前の車と近づきすぎると事故リスクが高まりますし、車間を空けすぎると道路のパフォーマンスが下がる(渋滞しやすくなる)ことになります。適正な距離を保ちつつ、前の車が照明柱などの目印を通過してから、自分の車が目印に到着するまでの時間を数えて、2秒となるように走りましょう。
――今回の年末年始に関連して、伝えたいことは?
年末年始のピークは上下線ともに1月2日です。年末年始をふるさとや行楽地で過ごした方たちの“Uターンラッシュ”がこの日から始まり、上り線の渋滞がお昼過ぎから多発します。加えて、この日は初売りなどの年始イベント、スキーなどのレジャー需要で、下り線でも朝方から渋滞が多発するため注意が必要です。1月4日以降は比較的渋滞が少ないため、お休みをとれる方は休みを長くとって分散利用にご協力ください。
新型コロナウイルスが「5類」に移行したこともあり、車で出かける人も多いはず。高速道路を使うなら、渋滞予測を参考にするといいかもしれない。