新型コロナウイルスの影響で「夏の甲子園」の出場機会を失った野球部のOBたちが、このほど3年越しに「聖地の土」を踏んだ。未練に終止符を打ち、あの夏を取り戻す大会に出場した長崎の元球児たちを追った。

3年越しの“憧れの聖地”

3年越しに甲子園の土を踏んだのは、長崎県立大崎高校の野球部OBたちだ。

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新型コロナウイルスの影響で甲子園で試合ができなかった元球児たちによる交流イベント「あの夏を取り戻せ~全国元高校球児野球大会~」が11月に開催された。
元球児が中心となり、企業の支援やクラウドファンディングで約7000万円を集め、交流プロジェクトが実現した。

聖隷クリストファーの選手による選手宣誓が行われ、「過去のすべてを取り戻せないことを私たちは知っている。それでも未練に終止符を打ち、これからも続いていくそれぞれの人生に向き合うために、私たちはあの夏にこだわり抜く」と力強く宣誓した。

元球児たちは、みな同じ思いで憧れの聖地に立っていた。

3年前の2020年5月20日。新型コロナウイルスの感染拡大で、戦後初めて夏の甲子園の中止が決まった。長崎県内でも、「甲子園」を夢見て努力を重ねてきた高校球児がやり場のない思いを抑えきれず、人目をはばからず涙を流した。

長崎県立大崎高校野球部OB 坂口航大元主将:
甲子園に行くために大崎高校を選んだのに、その目標がなくなった。2年間、甲子園を目指してやってきてたので、つらかった気持ちは大きかった

その後、長崎県高野連が代替大会を開き、大崎高校が優勝を果たした。しかし、憧れの舞台には立てなかったあの夏…。3年越しの甲子園に、選手たちの思いもひとしおだ。

当時を思い出し…念願の「甲子園でノック」

開会式後に行われた練習では、駆けつけた清水央彦監督から念願の「甲子園でのノック」を受けた。

長崎県立大崎高校野球部OB 高垣昂平元副主将:
相変わらず(ノックの)打球速い!みたいな。清水監督もとても楽しそうな表情でノックを打ってくれて、受けている自分たちも当時を思い出した

11人がこの日の試合に駆けつけた。「大崎」のユニフォームに袖を通すのも3年ぶりだ。

長崎県立大崎高校野球部OB 原田陸人さん:
仲間と3年ぶりに集まってノックして、監督の打球を受けて、純粋に甲子園もだけど、単純にノックを楽しめた

当時、主将を勤めていた坂口航大さんは現在、関西学院大学の3年生で、高校時代の悔しさをバネに野球を続けている。

長崎県立大崎高校野球部OB 坂口航大元主将:
試合は皆で楽しみながら、それでもあくまで結果は勝てるように頑張りたい

晴れやかな表情で…「やりきってよかった」

交流試合の対戦相手は、静岡県の聖隷クリストファーだ。

試合前の円陣では、「連勝記録が続いてるって話、正直けっこうやばい。最後の最後まで諦めないように行くぞ!」と気合いを入れる。

選手たちが野球に打ち込む表情は、真剣そのものだ。仲間とのプレーに時折、笑顔もこぼれる。駆けつけたのは元球児たちだけではない。保護者たちも声援を送った。

坂口選手の母親:
当時、声が掛けられないくらい落ち込んでるだろうと思った。長文のLINEを送ったのを覚えている。すごく楽しそう。見ているこっちも楽しくなるくらい、楽しそうにやってるのがうれしい

試合は0対2で敗れたが、選手たちの表情は晴れやかだった。

当時のエース 長崎県立大崎高校野球部OB 田中駿佑さん:
甲子園がなくて、高校野球でやりきったという思いがあまりなくてモヤモヤしていたが、この大会を開いてもらって、高校野球やりきってよかったなと思えた

長崎県立大崎高校野球部OB 坂口航大元主将:
甲子園本来の大会はなかったが、このプロジェクトのおかげで、少しは自分たちの気持ちも晴れた。このチームで野球をするのが一番楽しい

元球児たちは、3年の時を経て高校野球に区切りをつけ、人生の次の目標に向かって歩き出した。

(テレビ長崎)

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