劇団員が急死して以降、中止となっていた宝塚大劇場での公演が12月1日、2カ月ぶりに再開された。待ち望んだファン、複雑な心境のファン…反応はさまざまだ。
宝塚大劇場の前では、大勢のファンが開門と同時に、劇場内へと向かっていく様子がみられた。
記者リポート:
開演まであと1時間半となりました。宝塚大劇場には公演を楽しみにしていたファンが続々と入っていきます

2023年9月、宙組に所属する劇団員の女性(当時25歳)が死亡しているのが見つかって以降、宝塚大劇場では全ての公演が中止となっていた。雪組の公演も「心身のケアを最優先するため」と中止されていたが、1日に公演を再開。
宝塚歌劇団は関西テレビの取材に対し、「出演者・スタッフとも対話を続けた上で、十分な稽古時間をとり、正確な動きができるだけの準備・コンディションが整っていることから安全に公演を実施できると判断し、再開に至った」と話した。
「長年ファンをしていて、こんなに悲しいことはない」

12月1日の公演を見に来たファンは…
宝塚ファン:
ものすごく楽しみにしてまいりました。公演自体はぜひやってほしいと思っていたので、今回の(公演)がもしなくなってしまったら、その方がすごくショックだったと思います
再開を心から喜ぶファンがいる一方、心境は「複雑」だと語るファンも。
宝塚ファン:
再開してほしいけれど、このままでいいのかなという気持ち。こんなに悲しいことは今まで長年ファンをしていて、ないぐらい悲しい出来事でしたので
こう語るのは宝塚を見続けてもう40年というファン。劇団側の対応については、次のように語った。
宝塚ファン:
きちんとご遺族の疑問にちゃんと分かるまで調べて、直すところはきちんと直して、もちろん謝罪するところはきちんと謝罪してと。食い違いがね、きちんとご遺族の方に納得いただけるようなことになっていないのが一番残念です
ファンも心配を募らせる劇団側と遺族側の食い違い。それは、劇団員の女性に対する上級生などからのハラスメントがあったかどうかだ。

遺族はハラスメントを認めた上で謝罪と補償を行うよう求めているが、劇団は調査報告書で、過密なスケジュールなどで女性に心理的負荷がかかっていた可能性を認めたものの、「ハラスメントの事実は確認できなかった」と発表。遺族は「合意できない」として、再調査を求めている。 問題を受け、12月1日付けで就任した村上浩爾(こうじ)理事長は、関西テレビの取材に対し、再調査については明言しなかった。
Q.劇団員が急死した問題を再調査はしないんですか?
村上浩爾理事長 :
広報を通していただければと
「働き方を改善していこうという姿勢は全くない」と元スタッフ

組織風土そのものの改善も急務だ。労働基準監督署は11月、劇団員が急死した問題を受けて立ち入り調査を行ったが、歌劇団が調査を受けるのはこれが初めてではない。
2年前に在籍していた元歌劇団スタッフ:
(労働基準監督署に)言われたことだけはピンポイントで対処したかもしれないけど、それ以外は劇団として問題に思わなかった感じはある
こう話すのは、2021年の立ち入り調査の時に歌劇団に所属していた、元スタッフの男性。 この男性と歌劇団側が交わしていた雇用についての契約書を見ると、気になる文言があった。就業時間について「裁量労働制とし、労働者の決定に委ねる」と書かれている一方、「就業規則、その他諸令達に従わなければならない」とも記載されている。 この契約書について、労働契約に詳しい弁護士は…
中島経営法律事務所・中島茂弁護士:
少しおかしいですね、そこは。“その他諸令達”というのは、職場での命令のことだと思うのですが、“従わなければならない”というところが、これで裁量労働なのか、ちょっと疑問が生じます
こうした状況は2021年、労働基準監督署から、是正勧告を出されたことで変わった。初めて申告するように求められた残業時間は月100時間以上。しかし、業務量そのものの見直しなどはなかったということだ。
2年前に在籍していた元歌劇団スタッフ:
労基署が入ったところ(のスタッフの勤務)は改善したことはあると思うんですが、全体としてみんなの働き方を改善していこうというような姿勢は、全くないかなと思います
公演前に理事長からお詫びの言葉

1日に行われた公演の様子について、実際に公演を見たファンに聞いた。
まず、公演前に冒頭で理事長が観客に謝罪をしたとのこと。「ご迷惑をおかけして申し訳ない」という趣旨と、「今後とも応援をよろしくお願いします」という趣旨の発言を5分ほど行ったということだ。その時の印象については、感情を込めるような感じではなく、形式的な印象だったと話した。そして理事長が退いた後に舞台の幕が上がり、公演がスタートしたそうだ。
さらに、「場内は立ち見が出るほどの満席で、すごく熱気があった」「カーテンコールは(通常は2回ほどだが)5回あり、団員が涙ぐむ場面もあった」ということだ。
なお、今回公演を行ったのは雪組。亡くなった女性が所属していた宙組の公演は11月25日から12月14日までは中止が決まっていて、12月15日以降については、12月8日に発表される予定となっている。 問題が山積する中で再開された公演。歌劇団にとって、本当の意味での再スタートが切れる日はいつになるのか?
(関西テレビ「newsランナー」2023年12月1日放送)