出光興産と東京海上日動火災保険は、女性役員の育成を促進するため、企業をこえた「クロスメンタリング」を導入している。4日に行われた半年間の研修の最終報告会では、「社外だからこそ、正直に打ち明けられた」といった意見があがった。この取り組みについて、専門家は「社会に優しい企業を作るだけでなく、企業利益に直結するかもしれない」と評価している。

出光×東京海上日動 企業横断で助言

出光興産と東京海上日動火災保険は2023年6月から、双方の女性管理職が将来役員になることへの課題や悩みについて、相手企業の役員から助言を受けられる企業横断型の「クロスメンタリング」を導入している。

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半年間にわたった研修の最終報告会が4日に行われ、女性管理職からは「社外だからこそ、正直に打ち明けられた」といった意見や、役員側からも「人材育成のヒントを得た」などの意見が出された。

東京海上日動 東京新都心支店長・永谷麻紀子さん:
足元がふわふわしたままでは次には進めないので、そういう意味では、足元をしっかりと見つめ直して固めさせてもらったのは大きかった。

出光興産 常務執行役員・小林総一さん:
新しい仕事を受け持つプレッシャー、女性という立場でロールモデルにならなくちゃいけない。そこが非常にわかったので、逆に、当社の女性役職者も同じような気持ちがあるのではないかと気づかされた。

2024年度は参加企業を5社まで増やし、女性役員の育成に弾みをつけたいとしている。

従業員の視野を広げ、“直接的な利益”にもなり得る

「Live News α」では、エコノミストの崔真淑さんに話を聞いた。

堤礼実キャスター:
会社の垣根を越えて、助言を受けられるとのことですが、いかがですか。

エコノミスト・崔真淑さん:
ものすごく面白い取り組みだと思います。というのも、自分の会社の常識は、実は他社では通じないということはたくさんあると思います。

女性活躍に関しても、業界によっては濃淡に差があるというのはよく知られた話です。例えば、製造業と非製造業では、女性活躍の在り方、女性管理職比率にも差があるのではないかといわれています。

そうした背景を考えてみると、今回の取り組みは、従業員の視野を広げるだけではなく、直接的な利益にもなり得るのではないかとみています。

堤キャスター:
従業員が受け取る直接的な利益とは、どういうことでしょうか。

エコノミスト・崔真淑さん:
男女の賃金格差に効いてくるのではないかと思います。なぜ、男女で賃金格差があるのかといえば、出産・育児でビジネスから離れてしまいやすい20〜30代の頑張りが、生涯賃金に大きく影響してしまうというのがあります。

国も企業も、男性にも女性にも家庭と仕事の両立をしてもらうための施策をたくさん発表しているものの、まだ遅れているのが現状です。

となると、個人ベースで、どうしたら夫に家庭参画してもらえるのか、どうしたら会社、チームメンバーの理解を得られるかといった知恵が必要になってきます。

女性リーダーの経験を聞けるというのは、知恵の伝承にもなり得るのではないかと考えています。

企業利益に直結する可能性も

堤キャスター:
従業員が受け取るメリットは大きいようですが、企業にとってはいかがですか。

エコノミスト・崔真淑さん:
最近発表されたファイナンス論文をみてみると、女性管理職比率が低い業界ほど、女性活躍推進や育休制度を充実させると優秀な女性リーダーが入ってきやすくなり、それが企業価値にプラスに影響するといったことが発表されています。

ですから今回の取り組みも、単に社会に優しい企業を作るだけでなく、企業利益に直結するかもしれない、それを考えても応援したくなる取り組みだなと思います。

堤キャスター:
異なる環境で働く人と対話することで、社内だけでは得られない新たな気付きがあると思います。働く人、そして、企業が新たな視点を持って成長していくために、こういった制度が上手く活用されていくといいですね。
(「Live News α」12月4日放送分より)

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