出光興産と東京海上日動火災保険では、企業の女性リーダーを育成するための「社外メンター制度」が始まった。

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出光興産と東京海上日動火災保険は、双方の部長・課長クラスの女性社員が、会社の垣根を越えて相手企業の幹部社員から課題や悩みについて助言を受けられる「社外メンター制度」を始めた。

相談者(出光興産):
キャリアの迷子というか、「どうステップアップしたい」とも思うし、このままがいいとも思うし…。

助言者(東京海上日動):
面白そうな仕事もある。でも子どもも大変だと。どっちとるの?みたいな。すごくすごく、わかります。同じ道を歩いてきました。

社内のしがらみがないため、相手に率直に意見が言えるうえ、外部だからこそ客観的な助言も期待できるという。

東京海上日動 西東京支店長・山下真粧子さん:
自分の置かれている状況を、さらな状態でイチからしゃべるというのは、それなりの効用があるんだと思った。

政府は東証プライム上場企業の女性役員比率を、2030年までに30%以上にするとの目標を掲げている。

出光興産と東京海上日動の両社は、制度を通じて女性リーダー育成を進める狙いだ。

社外メンターだからこそ見える将来像

「Live News α」では、人材の育成に長く携わるキャスター取締役CROの石倉秀明さんに話を聞いた。

堤 礼実 キャスター:
クロスメンタリング、どうご覧になりますか。

キャスター取締役CRO・石倉秀明さん:
これはいくつかの観点でも有効な施策だと思う。

まず一つは、やはり社外だということ。社内の直属の上司や同僚、人事に対しては、どうしても言えないことや言いにくいことも相談できる可能性は高まる。

もう一つはロールモデルの発見。特に自社に自分よりも上の職位で活躍してる女性が少ない場合は有効で、将来、昇進した先にどういった悩みや、喜びがあるのかなどがイメージしにくいと、昇進を躊躇(ちゅうちょ)してしまうケースも少なくないはず。他社の人でも具体的なイメージができるのは大きそう。

堤 礼実 キャスター:
一方、相談を受ける側については、いかがですか。

キャスター取締役CRO・石倉秀明さん:
仮に自分が部長だったら、他社の課長の話を聞ける機会も貴重。上司になると、部下がどんなことを考えているか悩んでいるのか、それを直接聞くのは難しい面もある。

今回のような機会を通じて、部下が考えていることや悩んでいることを想像しやすくなるメリットもある。

こういった会社の垣根を越えた取り組みや交流は、もっと頻繁に行われてもよいと思う。しかし、これは課題があることの裏返しでもある。

それは、やはり社内の人には相談しにくい、社内の人には聞けない話があるという課題。

“コンサル能力”必須の管理職

堤 礼実 キャスター:
確かに、部下の相談にのったり、いい方向に導くのも、大切な仕事の一つですよね。

キャスター取締役CRO・石倉秀明さん:
会社としては、よほど意識的に「話を聞く」スキルを身につけたり、そういった雰囲気をどう作るかを考えないといけない。

例えば、いま、管理職でコーチングを受けてる人が増えているが、それはやはり「話を聞く」スキルを身につけるためにやっている人も多く、これを課題に感じている管理職が多いということの裏返しでもある。

それ以外にも、プロのキャリアコンサルタントに有料で個人のキャリア相談をする人も増えていて、それだけ話を聞いてもらい、悩みを相談したいというニーズが社内では満たせないということ。

そういった背景を考えても、これからは「いかに部下の話を聞けるか」「部下が話したいと思えるか」というスキルを身につけられるかが、よい管理職なのか、そうでないかの分かれ目とも言える。

堤 礼実 キャスター:
業種の異なる企業、立場の異なる人と話をすることで得られるものはたくさんありますよね。社外の人だから話せることもあると思います。

こういった取り組みによって会社が変わる一つのきっかけになるのかもしれませんね。

(「Live News α」6月12日放送分より)

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