自殺した富山市の中3女子生徒の遺族が調査組織の報告書が不十分として、再調査を富山市に要望。専門家は「調査のやり直しは難航するおそれも」。いじめの「重大事態」調査の課題とは?
この記事の画像(11枚)遺族の代理人 水谷敏彦弁護士:
「何のための調査結果ですかとか言いたい。(報告書は)欠陥だと。申し訳ないけど調査組織は任務を果たさなかったと言わざるを得ないと思う」
生徒からいじめの訴え…原因や経緯明らかにせず
2022年11月、富山市立北部中学校に通っていた当時3年生だった女子生徒が自殺したことを受け、富山市教育委員会が公表した調査結果は、遺族にとって納得できない内容だった。
報告書では、女子生徒に対するいじめがあったことは認めたものの、自殺した時点では過去のこととして整理できていたとして、いじめが自殺の直接の原因ではなかったとした。
さらに、学校や教育委員会が生徒からのいじめの訴えを「重大事態」として取り扱っていなかったことは厳しく指摘されているが、その原因や経緯までは明らかにしていない。
遺族の代理人 水谷敏彦弁護士:
「重大事態を学校が見落とした。校長が気がつかなかった。あるいは組織的に対応しなきゃいけないんだってことをわかっていなかった。『なぜ、どうしてこうなったんだ』ということを調べてくれというのが(調査組織の)いちばん大事なミッションだったと思うんですよ」
いじめの過程や背景を探り、原因まで掘り下げた調査を
「いじめ防止対策推進法」では、重大事態の調査は「事実関係を明確にするため」に行うと規定していて、文科省のガイドラインには調査は再発防止が目的で、「体制を見直す姿勢をもつこと」と明記されている。
ところが、今回の調査で富山市教育委員会は「学校や市教委の対応が適切だったかどうかについては触れても構わない」と委員会に伝えていて、積極的に「再発防止」に重点を置いた調査ではなかった。
遺族側は「いじめの過程や背景を探り、いじめの原因まで掘り下げた調査をしなければ事実関係を明確にすることはできない」と主張し、藤井市長に対して調査のやり直しを求めた。
一方、藤井市長は「調査そのものはしっかりなされたと思う。(意見書の)中身をしっかり確認して真摯に対応してまいりたいと思っている」とコメントしている。
専門家「調査のやり直し」は難航するおそれも
いじめ防止対策推進法では、市長の判断によって再調査を行うことが出来ることになっているが、「調査のやり直し」は難航するおそれもあると、いじめ関連の調査・研究などを行うNPO法人の須永祐慈さんは話す。
NPO法人 ストップいじめ!ナビ 須永祐慈さん:
「端的に言うとジレンマです。時間がかかればかかるほど、証言してくれる人は確実に少なくなってしまう。記憶も変わってしまう、薄れてしまう部分もある。長引けば長引くほど実はなかなか被害者、遺族にとっても酷な状況になっていくというのは確かなので早めにどうするか、早めにどういう体制をつくれるかというところは再調査においても重要なポイントになってくる」
調査のやり直しのためには早急な判断が求められるが、富山市教育委員会は、11月27日に開く教育委員会の定例会で遺族側の意見書を報告。その後、藤井市長に伝えるとしている。
富山テレビではこどもの居場所や環境を考える年間キャンペーン「こどものミカタ」を展開。いじめや虐待、不登校、現状と課題についてみつめている。
(富山テレビ)