車はとても便利な交通手段だが、その一方で乗り物酔いに悩まされている人も少なくないだろう。また自動運転技術が実用化された後は、乗り物酔いが増加するという試算もあるようだ。

こうした中、ロッテが「ミントガムを噛むと“車酔い”が軽減する」という研究結果を11月16日に発表。この研究成果は「人間工学(2023年59巻5号)」に掲載された。

ロッテは、三重大学工学研究科の小川将樹助教とともに、「ミントガムによる乗り物酔い軽減効果」の研究を行い、「乗車中にミントガムを噛むことにより、酔いによって生じる主観的な気持ち悪さが軽減される」ことが確認されたという。

マイクロバス乗車中に携帯電話で課題を実施

研究対象は、健康な20~25歳の成人男女47人。マイクロバスに乗車中の20分間、「何も食べない」または「ミントガムを咀嚼しながら」、配布された携帯電話で課題を行った。

そして、2分ごとに気持ち悪さを10段階で直感的に答えてもらい、乗車中の気持ち悪さがガムのありなしでどのように変化するかを比較。その結果、「何も食べない条件」に比べて、「ミントガムを食べている条件」のほうが、2分ごとの主観的な気持ち悪さが軽減することが確認されたのだ。

また、乗車前後での酔いの症状について、酔いによる目の疲れやふらつきという症状が軽減することも確認されたという。

研究結果(提供:ロッテ)
研究結果(提供:ロッテ)
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ミントガムを噛むだけで車酔いが軽減されるのであれば、手軽な対策になりそうだ。

ではなぜ、軽減されたのだろうか?今回の研究結果を踏まえ、車に乗るとき、どのようなタイミングでどのぐらいの数のガムを食べればいいのか?

ロッテの担当者に「理由と実践法」を聞いた。

車酔いは様々な人が悩んでいる症状

――そもそも人はなぜ車酔いをする?
 
様々な仮説がありますが、一般的には脳の混乱によるものと言われています。私たちは目、内耳、筋肉や関節などから揺れやスピードなどの情報を受け取り、脳で処理しています。しかし、受け取った情報が互いに矛盾したりしていると、脳が混乱してしまいます。

例えば、乗り物に乗っていて、揺れていることを筋肉や関節で感じ取っているのに、視覚情報では携帯画面などの静止しているものをじっと見ていると、よく起こると言われています。

反対にゲーム画面や手ぶれしている動画を見ているときのように、体はじっとしているのに目が激しく動くものを捉えているときにも、情報が矛盾していると受け取って、脳は混乱してしまいます。

このように脳が混乱すると、体の機能を調節する自律神経系が混乱し、乗り物酔いの症状があらわれてしまうと考えます。

画像はイメージ
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――「ミントガムによる乗り物酔い軽減効果」に着目した理由は? 
 

車酔いは子供から大人まで様々な人が悩んでいる症状です。そこで、これらを少しでも軽減する方法があれば、皆様の役に立てると考えました。

もともと、弊社ではお菓子が乗り物酔いに効くのではないかという感覚を持っている人が複数いました。そこで、2000年には振動再生装置を使い、ガムやアメの酔い軽減効果について調べていました。

その結果、ガムやアメに酔いの軽減効果があることが分かっていました。また、ガムやアメは香りのお菓子と呼ばれています。香りには様々な生理機能を持つものがあることはアロマセラピーの分野で分かっています。

2019年に弊社内で、お菓子で使う香りで、最もVR酔いを軽減する香りは何かを実験した際に、ペパーミント香料が最もVR 酔いを抑制することが明らかになりました。また、海外でも同様に「ペパーミントガム」や「ジンジャーガム」がVR酔いを軽減することが報告されています。

そこで今回は、以上の結果を踏まえて、実際の車でのミントガムの車酔い軽減効果を実験いたしました。

「香り」と「噛むこと」の両方が影響

――乗車中にミントガムを噛むことで車酔いが軽減される理由は?

あくまで考察となりますが、「香り」と「噛むこと」の2つが影響を与えていると考えております。

ミントの香料はVR酔いを軽減することが報告されています。その作用の仕組みとしては、ミントの香りが自律神経を整える効果が報告されていることから、受け取った情報の齟齬から、混乱し始める自律神経を整えることによる効果が考えられています。

また、先行研究において、ガムを噛んでいると酔いが軽減される理由について、気晴らし的な効果による受け取った情報の齟齬を軽くする効果や、咀嚼による骨振動が前庭(内耳の器官)を刺激し、その刺激が酔いを軽減する可能性が考察されています。

以上のことから、「香り」と「噛むこと」の両方が影響を与えたと考察しております。


――今回の結果を踏まえ、車に乗るとき、どのようなタイミングでどのぐらいのガムを食べればいい?

今回の実験においては、車が発進する前にミントガム2粒を口に入れていただき、走行中、ずっと噛んだ結果、気持ち悪さの上昇が抑えられることが確認されました。

完全に酔ってしまった後に噛み始めて効果があるかについては、今回は検証できていませんので、乗る直前から食べ続けるのが良いのではないかと考えております。

(画像はイメージ)
(画像はイメージ)

乗車中にミントガムを噛んでいた人の方が、車酔いが軽かったという今回の研究。理由については「あくまでも考察」とのことだが、「香り」と「噛むこと」の両方が影響を与えた可能性があるという。

車酔いに悩んでいる人は「車が発進するまえにミントガム2粒を口に入れて、噛み続ける」のを試してはどうだろうか。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。