サクサク食感で人気のスナック菓子「うまい棒」。これを保管・持ち運ぶための専用ケースがあるのをご存じだろうか。いま、大阪・枚方市がふるさと納税の返礼品としたことで話題となっているのだ。
開発元はアルミケースを製造する、地元・枚方市の企業「アクテック」。
専用ケースは縦約20cm、横約10cm、厚さ約4cm、重さ約300g。素材には頑丈なアルミニウムのほか、透明なアクリル板を採用している。形状は片開きで、まるで小さなアルミケースのようだ。
内側にはウレタン製のクッション材を敷いており、うまい棒を安全かつ、美しい状態で保管できる。差し込むタイプの鍵も附属しているので“お気に入りの味”を取られるような心配もなさそうだ。
そんなユニークな製品に注目したのが枚方市。うまい棒の販売企業「やおきん」と過去に“うまいかた棒”としてコラボした縁もあり、専用ケースをふるさと納税の返礼品にしたいと思ったという。
受け付け開始は11月17日からで、寄付額が9万9000円で黒か金のどちらか好きな色を、11万円で枚方市のキャラクター「ひこぼしくん」モデル(4色カラー)も選ぶことができるという。
うまい棒はメーカー希望小売価格が12円とリーズナブルだが、なぜ、そこまで守りたいと考えたのだろう。そしてどれほどの衝撃に耐えられるのか。アクテックの代表取締役社長・芦田知之さんに聞いた。
孫の悲しみに“おじいちゃん社員”が奮起
――うまい棒の専用ケースをなぜ開発した?
60代男性社員の提案がきっかけです。その社員には幼稚園児の孫がいて、お楽しみ会でうまい棒をもらいました。しかし、バッグに入れて持ち帰り、お家で食べようとしたところバキバキに砕けていたそうです。孫の悲しそうな姿を見て「保護するケースを作らせてもらえないか」と話があり、2022年10月から開発をスタートしました。
――専用ケースはどんな流れで製造されている?
加工、組み立て、内装の流れで進めます。ケースの骨組みとなるフレーム、面となる板を加工したら組み立て、錠前や丁番、クッションなどを取り付けて完成です。基本的には手作業で製造しています。
――開発でこだわったところ、工夫したところは?
うまい棒の専用ケースとして考えたとき、中身も見て楽しめるようにしたいと思いました。そのため、協力会社にお願いして透明なアクリル板を組み込んでいます。また、うまい棒がすっぽりと収まることにもこだわりました。クッション材の形状は、うまい棒を採寸して得たデータから作られています。
――やおきんとはどのように話を進めたの?
「こういうもの考えているのですが、問題はないでしょうか」とお伺いを立てに行ったところ、快く許可をいただきました。専用ケースにはうまい棒のロゴも入れてあります。
軽自動車に轢かれても中身を守る
――専用ケースはどれくらいの頑丈さがあるの?
70cmの高さから面を変えて数回落としても、ケース内のうまい棒に影響がないという試験を行っています。また、軽自動車の前輪で轢いても、ケース内には問題がありませんでした。
――返礼品として、どんな影響を期待したい?
専用ケースは寄付額としては高めですが、枚方市のふるさと納税全体を知ってもらえるきっかけになればいいですね。私たち以外にも、面白い返礼品がたくさんありますので。
――実際にはどんな場面で活用してほしい?
「12円の商品を守るためにここまでするのか」と笑っていただければと思います。ディスプレイできるので、うまい棒ファンにはお役に立てるでしょうし、ネタやプレゼントとしても良いと思います。
――ちなみに、個人で購入することはできる?
以前にクラウドファンディングで提供したことはあるのですが、現時点で購入はできません。ただし反響を呼んでいることもあり、一般向けに販売ができないかと調整を続けています。
枚方市は寄付額の増加に期待
実は枚方市、ふるさと納税をめぐっては厳しい状況にあるともいう。市によると、2022年、市には約1億5300万円の寄付金が集まったが、市民の他自治体への寄付額は約14億円にものぼったという。
つまり、国が補填はしているが“流出超過”の状況になっているのだ。そのため、市の担当者は、枚方市のものづくりの知名度を周知するとともに、寄付額の増加にもつながればとしていた。
今回の専用ケースは、ふるさと納税の返礼品サイトから詳細を確認できるので、全国のうまい棒ファンの皆さん、枚方市を応援したいという人はチェックしてみてはいかがだろうか。