厳しい経営を強いられ、牛乳離れや円安による飼料高騰が拍車をかけている国内の酪農。そんな中、富山の酪農家が牛舎を新築し、酪農を軸にした地域での資源循環の取り組みを開始。若手酪農家の挑戦に密着した。
本業の傍ら、消費者に酪農を知ってもらう活動も積極的に行う
11月3日、東京で開かれた牛乳の需要喚起、消費拡大を図るイベント。
全国の牛乳の飲み比べやソフトクリームなどの加工品の販売、牛の乳しぼりの実演など多彩な催しが行われ、大勢の家族連れで賑わっていた。
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ステージに上がったのは高岡市の酪農家、青沼光さん(37)。
生産者を代表して、講演を行った。
テーマは「牛と酪農家とSDGs」
持続可能な開発を目指すSDGsの目標に、酪農が密接に関わっていることを丁寧に説明した。
![高岡市の酪農家・青沼光さん](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/f/0/700mw/img_f056b7e9d02244939614abd665ff8d6d124540.jpg)
本業の傍ら、消費者に酪農を知ってもらう取り組みも積極的に行う青沼さん。
その姿勢は同業者からも高く評価されていて、さまざまな地域の酪農家から「ほんとすごい方ですよ。牛に対する情熱みたいなのが全然違う」、「青沼さんは酪農家にとって『神』と言われている」などと、その姿に賛同する声が多く聞かれた。
![地域交流牧場全国連絡会の加茂太郎会長](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/6/1/700mw/img_6101a9fb26bea1b6488101445e803b80168415.jpg)
地域交流牧場全国連絡会・加茂太郎会長:
変なやつですよ、すごく。いい意味でね。彼の言っていることはすごく正論だし、前向きだし、建設的だし。やっぱり農業界はすごく古いところがあるので色々な軋轢も出てきてしまう、それとすごく戦っている
牛舎を新築し、牛の数を163頭に
青沼さんは8年前、高岡市の国吉地区でリタイアする農家から設備を譲り受け、酪農業を始めた。
2023年4月には牛舎を新築し、およそ70頭だった牛の数を163頭に増やした。
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牛たちが食べていたのは、近くのコシヒカリの田んぼからコメの収穫後に集めた稲わら。エサとして与える外国の牧草の一部を、10月末からこの稲わらに置き換えている。
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酪農家・青沼光さん:
海外情勢の影響とかも受けないで済むので、消費者の皆さんに、結局今だって海外情勢に振り回されて酪農をやっていくのが大変だということで、牛乳の値上げをお願いしているので。今後は国産の資源をうまく循環させる中で、牛乳を生産させるということをすれば、より安定した価格や物量で日本の皆さんに牛乳を飲んでもらえるかな
円安などで資材が高騰し、業界はかつてない厳しさと言われる中、青沼さんは総事業費3億円をかけ、牛を増やすための新しい牛舎だけでなく、質の良いたい肥を作る設備や、田んぼから稲わらを集める農業機械を整備した。
これらの整備で2023年からスタートさせたのが、地域の農家から牛のエサとして稲わらを提供してもらい、たい肥を田んぼに還元する「耕畜連携」の取り組み。
近所の人:
若い人がこんなことをするから期待したい
![国吉活性化センター代表の金守功平さん](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/f/f/700mw/img_ff84e2ffddbcbbeee9c0e7b1122d03c2115888.jpg)
国吉活性化センター代表・金守功平さん:
自分たちの田んぼでとれたものを食べてもらったら、人であろうと動物であろうとうれしい
稲わらを提供した、農業法人の代表を務める金守功平さん。
この日、金守さんは、青沼さんが牛のふんを発酵させて作ったたい肥をとりに来た。
国際情勢の変化による価格高騰はコメ作りでも、原料を海外に依存する化学肥料などで起きている。
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金守さんはたい肥がコメの収穫量にどう影響するかを調べることにしていて、化学肥料の一部をたい肥に置き換えられないか、期待を寄せている。
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国吉活性化センター代表・金守功平さん:
収量を比較して(化学肥料を置き換えられるか)答えを出さないと。だけど、牛のたい肥を使うという流れに関しては、すごく理にかなっていると思う
地域を巻き込み、酪農を軸にした資源循環を目指し、設備の整備、頭数拡大に乗り出した2023年。
賛同の一方で厳しい意見も…
青沼さんに届いたのは、賛同の声だけではなかった。
11月、青沼さんは隣の地区で、取り組む事業や牛舎のにおい対策について説明会を開いた。
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一通り説明を終えたあと、一部の住民からは牛舎周辺の「におい」に厳しい意見が飛び交った。
地域住民:
臭い日とあんまりにおいのせん日があるのはなんで?
酪農家 青沼光さん:
やはりたい肥の切り返し(発酵させるための積み替え)のタイミングではどうしても
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地域住民:
においは全くなくならないのか?「地域のため」と言うが、私たちのためになっているのか?
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酪農家・青沼光さん:
つらい…。覚悟して臨んだけれど、何回やってもつらい。答えが見えないけれど、何とか次の世代にはこうした問題を軽減した状態で渡したいし、できればこういったことが問題になるような状況は解決したうえで、次の世代に託せるようにしたい
外国の資源に依存しない、稲作農家も巻き込んだ耕畜連携の取り組みを始めた青沼さんのもとには、果樹農家や家畜のエサの生産・流通業者などからも、2024年以降、協力したいという問い合わせが相次いでいる。
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青沼さんは、資源循環の輪を広げることで外国に依存しない食料生産だけではなく、消費者の畜産への意識の変化にもつなげられたらと意気込んでいる。
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酪農家・青沼光さん:
すごいことだと思われているうちはまだまだだなと思います。これが当たり前になって、どこででも取り組める状態にしないと。別にやれることだという形で、みんなの怖さを払しょくできるような結果を残していければ、やれるかもと思ってくれる人が増えてくると思います。そしたら、全国的にもこういった取り組みが当たり前になってくると思うので、そういったのを思い描いて目指してます。
(富山テレビ)