「は・か・た・の・しお」という力強いサウンドロゴで知られる、伯方塩業(松山市)のテレビCM。

実は、このCMのサウンドロゴ「は・か・た・の・しお」の作曲者と初代声優が長年不明だったことをご存じだろうか? こうした中、伯方塩業が11月4日に開催した創業50周年イベントで、不明だった作曲者と初代声優の名前を発表したのだ。

「は・か・た・の・しお」のCMは1987年から放送を開始し、36年を過ぎた今も放送している。

伯方塩業によると、2019年に実施した「二代目声優オーディション」で初代声優や作曲者について話題となったが、同社にはサウンドロゴの制作に関する資料が残されておらず、長年不明だったという。

そして、創業50周年をきっかけに本格的に調査を行い、サウンドロゴの作曲者は浦田博信さん、声優は音楽家の塩谷信廣さんであると判明した。浦田さんは「ノーベルVC3000のど飴」「眼鏡の愛眼」などのCMソングの作曲者でもある。

(写真左から)初代声優・塩谷信廣さんの代理・榎裕一さん、石丸一三社長、作曲者の浦田博信さん(提供:伯方塩業)
(写真左から)初代声優・塩谷信廣さんの代理・榎裕一さん、石丸一三社長、作曲者の浦田博信さん
(提供:伯方塩業)
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誰もが一度は聞いたことがあるであろう、あのインパクトのあるサウンドロゴの作曲者と初代声優を同社が把握していなかったことは意外だ。

これまで特定できていなかった理由は何なのか? また36年にわたって同じサウンドロゴを使い続けていることには、どのような思いがあるのか?

伯方塩業の担当者に聞いた。

「社内に当時を知る人が残っておらず」

――初代声優のサウンドロゴを使用していた時期を教えて?

1987年から現在まで使用しています。


――つまり、これまでに放送されたテレビCMは「初代声優バージョン」と「二代目声優バージョン」の2種類だけ?

スポットで別の声優を使用していた時期もありましたが、現在でも初代声優の塩谷信廣さんの声はそのままでCMを制作しています。

「伯方の塩 二代目声優オーディション」でグランプリのNovembreさんはWebのCM限定でご活躍いただいておりました。


――初代声優のサウンドロゴはそのままで、数年ごとに新しいCMを作ってきたということなの?

新商品が発売されたり、パッケージの変更などが生じたりした場合、新しいCMをつくっています。

※伯方の塩(提供:伯方塩業)
※伯方の塩(提供:伯方塩業)

――サウンドロゴの作曲者と初代声優が、これまで特定できていなかった理由は?

当社で過去に調査しましたが、社内に当時を知る人が残っておらず、制作した代理店は倒産し、制作会社も廃業しており、特定には至りませんでした。

唯一、「スタジオミュージシャンであった」ということしか分かりませんでした。

作曲・初代声優を名乗り出る人が複数

――本格的な調査を始めようと思ったのは、何かきっかけがあった?

1987年からサウンドロゴを使用したCMを放送し始め、長く使い続けていくうちに視聴者の方々に徐々に浸透していきました。

その中で「伯方の塩のサウンドロゴの声優は誰ですか?」という問い合わせが増えてきました。

特に2019年の「伯方の塩 二代目声優オーディション」では、マスコミに多数取り上げられた後、作曲・初代声優は「私だ」と名乗り出る人が複数いたことから、特定する材料が無く、当時はそれ以上の調査をすることはできませんでした。

1987年以降のCMに一時期、演歌歌手を声優に起用していた時期があり、2023年に全国ネットのテレビ番組でそのご子息が出演し、「私の父が伯方の塩のサウンドロゴを歌っていた」との発言がありました。

当社では、このまま静観していると演歌歌手が初代声優となってしまい、現在も歌っているという間違った情報が広がる懸念があったこと、また、初代声優と作曲家のお二人にも申し訳なく思い、真実を明らかにする必要性が強くなりました。

そして、当社の断片的な資料や、その当時の関係者からの記憶をたどり、照合することで浦田さんと塩谷さんであることが特定できました。

創業50周年イベントのトークショーの様子(提供:伯方塩業)
創業50周年イベントのトークショーの様子(提供:伯方塩業)

――浦田さん、塩谷さんがこれまで名乗り出てこなかった理由は?

浦田さん、塩谷さんも、2019年の「二代目声優オーディション」の時にはネット上では名乗り出られていたと思います。

ただ、当時はオーディションでマスコミに多数取り上げられたあと、作曲・声優は私だと名乗り出る人が複数いたことから特定する材料がありませんでした。


――作曲者の浦田さんは、このサウンドロゴについて、どのような話をしている?

浦田さんは、以下のようなことを話しています。

・作曲は一晩で考えた
・その時に斬新さ、親しみやすさ、力強さを意識するため、男性を選んだ方が良いと判断した
・シャウトが得意な友人の塩谷さんを起用した
・生楽器の演奏で一発録りした中から一番良いものを選んだ

サウンドロゴは「当社にとって大切な財産」

――36年にわたって同じサウンドロゴを使い続けていることには、どのような思いがある?

テレビCMを放送した当初は、それほど話題になりませんでしたが、長く使い続けていくうちに視聴者の方々に徐々に浸透し、口ずさんでいただけるようになりました。

サウンドロゴは「伯方の塩」の商標と同じく、当社にとって大切な財産と考えて、使い続けています。


――これからも、テレビCMにこのサウンドロゴを使い続けていこうと考えている?

作曲者の浦田さん、初代声優の塩谷さんに感謝し、今後も大切に使い続けていこうと考えています。

伯方塩業のテレビCM(提供:伯方塩業)
伯方塩業のテレビCM(提供:伯方塩業)

力強いシャウトが印象に残るサウンドロゴ「は・か・た・の・しお」。取材で、作曲者と初代声優を特定できないことには理由があり、その後の調査、そして特定には伯方塩業の強い思いがあることが分かった。

その強い思いを胸に、このサウンドロゴを今後も長く使い続けてほしい。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。