東日本大震災をテーマにした映画の上映会が、熊本地震の被災地の熊本市と益城町で開かれた。映画を見た人たちにとっては、震災の経験をどのようにして未来につなげていくか、あらためて考えるきっかけになったようだ。
「本音を入れられる作品を作ろうと…」
11月4日、熊本市と益城町で開催された、「ある春のための上映会」。
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宮城・石巻市大川地区出身の佐藤そのみさんが、東日本大震災での体験を基に監督した映画「春をかさねて」と「あなたの瞳に話せたら」の2本が上映された。
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佐藤そのみ監督:
震災後、「3.11」を取り扱った映画や報道はたくさんあったが、その中に私たちが伝えたいことが入っているか疑問に思うことが多くて、報道などではすくい取られていない言葉や本音を入れられる作品を作ろうと思った
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佐藤さんは中学時代に東日本大震災に遭い、多くの児童・教職員が津波で犠牲となった大川小学校で当時6年生だった妹を亡くし、被災直後から積極的にメディアの前に立ち、情報を発信してきた。
「春をかさねて」「あなたの瞳に話せたら」
映画「春をかさねて」は、そんな佐藤さんの経験を織り交ぜながら、被災地で生きる少女の姿を描いた作品で、震災で亡くなった妹を思い、自分の気持ちを抑えた生活を送る“祐未”が主人公。
同じように妹を亡くした幼なじみの“れい”が恋をしている姿に嫌悪感を抱く祐未だが、れいにも、彼女なりに抱えた気持ちがあった。
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佐藤監督は「”被災者だからこう生きなきゃいけない”というのはないと思っていて、それぞれの生き方があっていいけど、苦しまないでほしい」と話す。
もう一つの映画は、ドキュメンタリー映画の「あなたの瞳に話せたら」
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佐藤さんを含め、大川小学校で家族や友人を亡くした当時の子どもたちが、故人に向けて手紙を読み上げる。
![心を打たれ涙する来場者も](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/a/9/700mw/img_a91b9c9e81f54380b28bcea16270127e133483.jpg)
震災をどう受け止め、そして今までどう生きてきたか。語られる言葉一つ一つが来場者の胸を打った。
益城町ではトークセッションも
熊本地震で震度7の揺れに2度襲われた益城町の会場では、実行委員の大学生たちと佐藤さんによるトークセッションもあった。
実行委員の森崇さんと坂本昂陽さんは、2016年の熊本地震を益城町で経験。
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2018年に東日本大震災の被災地をめぐるスタディツアーにも参加し、そのような経験から今回の上映会に携わった。
実行委員・坂本昂陽さん:
“前を向く人ってかっこいいんだな”“僕もできるだけ前を向こう”と思わされるような(映画だった)
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実行委員・森崇さん:
この映画で教訓を風化させないことが大事だと思ったが、それよりも震災のことを知ってもらったり、被災地の人たちの心の復興とかがテーマと解釈して、映画を見ていた
上映会は大きな拍手とともに幕を下ろし、来場者は「風化させないで、後世に残していかないといけないので、こういう活動はずっと続けていってほしい」、「(熊本地震)当日のことをリアルに思い出した。きょうの体験を今後に生かしていかないといけないと思って、家族や周りの人に伝えていきたいと思った」などと話した。
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上映会を企画した野尻明子さん:
見た人たちが、それぞれの中で今すぐ言葉にならなくても、感じたことがあると思うので、日常って大事だよねって…。「ただいま」とか「ありがとう」とか、その大切さを感じていただけるだけでもうれしい
被災地で初めての上映「熊本でよかった」
これまでも全国各地で上映会を行ってきた佐藤さんだが、災害を経験した地域での上映会は、今回が初めてだった。
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佐藤そのみ監督:
同じように災害を体験した地域で(映画を)見てもらうことに今まで抵抗もあったが、あまり抵抗を感じなくてもいいのかもしれないなと、大きなきっかけになりました。それが熊本でよかった。同じように苦しんでいる方がたくさんいたと思うし、今も苦しんでいる方がいると思うし、一人で抱え込まないで近くにいる人を頼ってほしい。そうすることで、いつか大丈夫になるということを伝えたい
熊本地震から7年以上がたった今、改めて震災への向き合い方を見つめ直すきっかけとなった上映会だったようだ。
(テレビ熊本)