書店で誰もが目にしたことがある海外旅行のガイドブック「地球の歩き方」。この「地球の歩き方」がいま、福岡県の「北九州市」に限定したガイドブックを作ろうとしている。なぜ北九州なのか?編集部の取材に同行した。

九州を舞台に制作されるのは今回が“初”

1979年に創刊され、これまで120の国と地域、160タイトルを発行してきた「地球の歩き方」。

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コロナ禍で海外旅行が減った3年前からは国内版の制作も始め、55万部以上を売り上げる人気シリーズとなっている。

「丸善博多店」徳永恵子さん:
ガイドブックとしては長年、一番売れているシリーズになりますね。情報の細かさと濃度って言うんですかね、やっぱりそこが魅力だと思います

この「地球の歩き方」がいま、福岡県の「北九州市」に限定したガイドブックを作ろうとしている。

「地球の歩き方」が九州を舞台に制作されるのは今回が初めてで、「市」単位で制作されるのも全国では初めてとなる。

コロナ禍で売上部数は9割以上減と大きなピンチに直面。そこで出版社が目を付けたのが、京都・北海道などの「国内」の歩き方なのだ。

北九州市は「地球の歩き方」“読者にマッチ”

今回、なぜ北九州なのか?宮田崇編集長によると、地元愛にあふれている人が多いということ。そして歴史ある古いものとモダンなものが融合している点だ。

例えば、モノレールが出入りする近代的な造りの小倉駅から少し歩けば、レトロな旦過市場がある。こうした新旧入り交じっている点が「地球の歩き方」の読者にマッチするのでは、ということだ。

北九州市のどこにそれほどの魅力を見いだしているのか。編集部の日隈理絵さんは2024年2月の発売に向けて、足しげく北九州市に通い、取材を進めている。

「地球の歩き方 北九州市版」日隈理絵プロデューサー:
北九州に来るのは今回で5~6回目ですかね。ここ最近、毎月取材に来させてもらっております。山もあるし、海もあるし、街もあるし、歴史もあるし、おいしいものが多い。しかも安いものと高いものと幅広く両方楽しめる。魅力が本当にあふれている街だなと思っていて、それを今回、一冊にまとめられるのがすごくワクワクしてます

徹底した深掘り取材で魅力を引き出す

これまで世界50カ国を旅してきた日隈さん。この日は、若松区のレトロな雰囲気が漂う商店街に取材に訪れた。

「めちゃめちゃディープですね」と店先をのぞいたのは、創業約100年の「丸窓天ぷら店」。若松区民から愛され続け、1日800個以上が、すぐに売り切れてしまう練り物の名店なのだ。早速、買い求める。

「地球の歩き方 北九州市版」日隈理絵プロデューサー:
全然違いますね、ふわふわ、え~すごい、ふわふわ。東京とかで食べるさつま揚げみたいなのって、ペタっとして硬い。これは、すごいふわふわ

ふわふわ食感に衝撃を覚えた日隈さんは、「丸窓天ぷら店」の小山きよ美さんに取材。その秘密に迫る。

日隈さん「作り方の特徴とかあるんですか?」
小山さん「おじいちゃんの代からずっとそのままのレシピで作っているので、よく言われるんですけど、何があれなのか」

日隈さん「これ、すり身をそのまま揚げてらっしゃる?何かつけてらっしゃる?」
小山さん「そのまま。え~っと、どうかな。5時間くらい練って練って、味付けして練り込んで」

日隈さん「5時間も練ってるんですか。朝4時から?」
小山さん「そうですね、朝4時から9時くらいまで」

地元の人は当たり前だと思っていることでも、徹底した深掘り取材でその魅力を引き出し、「地球の歩き方」の紙面に反映させていく。

「地球の歩き方 北九州市版」日隈理絵プロデューサー:
初めて食べさせてもらって、すごくおいしくてびっくりです。しかもご主人が、毎日5時間かけて練ってらっしゃるっていう…。朝3時に起きて、やってらっしゃるっていうので、そのへんのストーリーとかも「ちょっと本に盛り込めたらな」とは思ってます

「地球の歩き方」の真骨頂

若松の商店街から離れ、日隈さんが続いて向かったのは「ひらやまふぁーむ」。農園の一角にひっそりとトマトの自動販売機がたたずんでいる。

若松ではフルーツ並みに糖度を高めたトマトがブランドになっていて、この自販機では、それが200円~400円という格安価格で購入できるのだ。

「ひらやまふぁーむ」の平山祐次さんによると、自販機を設置したのはコロナ前だという。

日隈さん「トマト、いま、すっごい高くて」
平山さん「全然、自分たち分からんのですよ」
日隈さん「いや、すごい安い」
平山さん「安いんですかね」

ほかのガイドブックにはほとんど載らない、知る人ぞ知るディープなネタを織り交ぜるのも「地球の歩き方」の真骨頂なのだ。

「地球の歩き方 北九州市版」日隈理絵プロデューサー:
「地元の人も知らない場所なんじゃないかな」っていう部分もありまして。「ここまで載せる?」みたいなふうに思ってもらえたら「よし!」って思って作ってます

「まずは地元の人に手に取ってほしい」

日隈さんが最後に向かったのは、若松の海岸にある夕日の絶景スポット、遠見ヶ鼻。

この日は、これ以上はないほどの美しい夕日が響灘に沈もうとしていた。

「地球の歩き方 北九州市版」日隈理絵プロデューサー:
もう、旅人気分で…。いま見て本当に感動しました

日隈さんは、まずは地元の人に手に取っていただき、「近くにこんな楽しい場所があったんだ」「こんなところ知らなかったな」と気づいていただけるような一冊にしたいという。

そして、福岡県、九州地方、そこから全国に広げていけるようなプロモーションもできたら、と話す。

「地球の歩き方北九州市版」の発売は2024年2月。制作はこれから大詰めを迎える。400ページにも及ぶという北九州市版。どんな一冊になるのか楽しみだ。

(テレビ西日本)

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