勉強についていけず不安を抱える子ども。不登校となり勉強ができなくなってしまう子ども―。そんな子どもたちに心の面からサポートする学習塾が福岡・北九州市にある。その塾の取り組みを取材した。

最大で月4000円で受講可能

2022年4月に開校した学習塾。

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ここで子どもたちに勉強を教えているのは、高校生だ。現在、35人の高校生が講師としてボランティアで勉強を教えている。

ボランティア・吉村心花さん(高校2年生):
学校の探求活動の一環で「子どもたちの不平等をなくそう」というテーマで、私たちのグループは活動していて、その一環としてこの塾を見つけて「みんなで、ここでボランティアしてみよう」となりました

文科省によると、塾にかかる費用は中学3年生1人あたり年間約40万円(2021年度)。子どもの7人に1人が貧困と言われる中、塾に通いたくても金銭的な理由から通えない子どもは多い。

この塾を運営するNPO法人「フードバンク北九州ライフアゲイン」では、家庭の年収ごとに受講費用を決めていて、最大でも1人月4,000円で受講可能だ。

年齢の近い高校生が勉強を教えてくれるため、子どもたちにとってこの場所は「年齢の近い人としゃべられる楽しい場所」だといい、塾としてだけでなく大切な居場所にもなっている。

塾で学ぶ中学生は「もしここがなかったら多分勉強しないと思う。ここに来たから勉強を頑張れていると思う」と話した。

食事は無料で提供 作っているのも高校生

この塾は、フードバンクが運営するため無料で食事が提供される。

企業などから寄付された賞味期限間近の食材などを使って料理を作っているのも高校生だ。この日のメニューは、もずくスープにソーセージの炒め物、そしてマカロニサラダだった。

ボランティア・城戸葵さん(高校生2年生):
普段から自炊したりするので、調理できるときはする

ボランティアの中には「中学3年生の時から、学校に行けない海外の子どもたちに興味があった」と話す高校生も。「夢に近づけるヒントがあるんじゃないか」と思いここに来たという。

子どもたちにとっては、なくてはならない場所となっているこの塾。それはボランティアの高校生にとっても同じようだ。

高校生ボランティアは「教えることは楽しい」と思いながら授業をしているようで、ここに通い始めて、将来は「教師とかもいいかな」と思い始めたという。

「僕はやれるんだ」という気持ちが育まれる

この塾を運営する「フードバンク北九州ライフアゲイン」の原田昌樹理事長も、子どもたちの成長を肌で感じている。

「フードバンク北九州ライフアゲイン」原田昌樹理事長:
勉強を通して、さまざまなコミュニケーションを通して、心が開かれていって、若い先生や私たちに伝えることで勉強することの楽しさがわかってきたり、子どもたち自身の心の中にある「僕はやれるんだ」と育まれる姿を見たら、よかったなという思い

「フードバンク北九州ライフアゲイン」の学習塾では、北九州だけにとどまらず、より幅広く子どもたちを支援している。

塾では対面以外でも受講できるようにと、高校生がパソコンを使ってオンラインでも授業を教えている。取材に行ったこの日も、東京や大阪など県外から受講している子どもたちもいた。

子どもたちのさまざまな悩みに寄り添う北九州の学習塾の取り組み。本来は政治が担わなければならない仕事なのではないだろうか。

(テレビ西日本)

テレビ西日本
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