イスラエル軍が、隊列を組んでガサ地区北部に侵入し砲撃を繰り返すなど、これまでで最大の地上作戦を行った。FNNは、ハマスの奇襲攻撃を受けたイスラエル南部の街を取材。現地には多くの人が虐殺された痕跡が残っていた。
イスラエル軍が“最大”の地上作戦
日本時間の10月26日午後1時半過ぎ、イスラエル軍がSNSで映像を公開した。

闇の中、隊列を組んで進むイスラエル軍の戦車が、イスラエルとガザ地区を隔てる境界のフェンスを破壊し、ガサ北部と侵入していく。道なき荒野を進むイスラエル軍の戦車は、映像で確認できるだけでも、10台以上が隊列を組んでいるのがわかる。そして、次の瞬間、戦車は砲撃を繰り返しながら進み、砲撃のたびに大きな白煙と大量の土煙があがった。
イスラム組織ハマス掃討に向け、ガザ地区を包囲してきたイスラエル軍による、これまでで最大規模の地上作戦。

SNSの映像には、舞台に指令を送るイスラエル軍の指揮官の姿も収められていた。
イスラエル軍の指揮官:
指揮官だ。確認する。作戦通り続けろ。命中した。100%だ!確認したぞ、よくやった。敵を見極めながら攻撃しろ!たった今、最後の一発の発射を確認した。

廃墟と化したガザの街を砲撃するイスラエル軍の戦車は、ハマスの拠点となるインフラ設備や対戦車ミサイルの発射基地などを破壊したとしている。

これまでで最大規模の地上作戦について、イスラエル軍はSNSの投稿で「次の戦闘段階に備えた準備の作戦」と説明。作戦終了後、戦車などの舞台はガザを離れイスラエル領内に戻ったとしている。
子の遺体をロバで運ぶしかなかった父
戦闘が新たな局面を迎える中、ガザ地区では燃料切れが深刻となり市民の生活を脅かしている。

SNSで拡散された動画では、病院では暗闇の中、救急患者が携帯の明かりを頼りに搬送されていた。

ガザ地区の医療施設の所長は、「病院の緊急治療室は電気で動いていて、もしガソリンがなくなったら“避けられない死”を宣告されることになります」と話した。

NASAの衛星画像を見ると、イスラエルに包囲された後、次第に夜のガザ地区一帯から明かりが消え、暗くなっているのがわかる。

燃料切れが深刻となったガザ地区では、犠牲となった子どもを運ぶ車も用意できず、ロバで遺体を運んでいた。犠牲となった子どもの父親は、「私たちの子どもを埋葬するためなのに、このロバしか見つけられなかった」と憤る。
奇襲攻撃を受けた街・ベエリの今
こうした中、FNNは7日にハマスの奇襲攻撃を受けたイスラエル南部の虐殺の街、ベエリを取材した。

ベエリはガザ地区から約4キロのところにある街。記者は攻撃に備えて、分厚い防弾ガラスが入っているバスで現地へ。ベエリに到着し取材している最中にも、イスラエル軍による攻撃の音が絶えず聞こえてくる状況。周囲にはハマスの戦闘員が潜んでいる可能性もあり、緊迫した空気の中、1時間の取材が許された。

加藤崇記者:
あちらの壁は、ハマスにはロケットランチャーで穴が開けられたということです。民家にかなり激しい攻撃をしていることがよくわかります。

ロケットランチャーの攻撃で、住宅の壁に開いた巨大な穴。さらに窓ガラスにも銃弾の跡が残るなど、ハマスがこの住宅街に激しい攻撃を加えた痕跡が残っていた。
攻撃が行われたのは、家の外からだけではない。

加藤崇記者:
こちらの家は、住民がシェルターに逃げた後、その住民をシェルターから外に出させるためにわざと燃やしているということです。
ハマスはシェルターに逃げ込んだ住民を家に火をつけ、いぶりだして襲ったとみられ、7日の襲撃では100人以上が犠牲になったという。

そのハマス掃討に向け、ガザへの攻撃を続けるイスラエル軍。24日にはハマスの軍事拠点など、400カ所に空爆を行ったという。
“退避先に指定”ガザ南部での死者が65%
市民への被害も拡大し、ガザ保健当局は今週に入ってからの死者の65%は、イスラエル側が退避先として通告したガザ南部での死者であると発表した。

ガザ地区南部の街・ハンユニスの住民は、「子どもたちも女性も犠牲になった。イスラエルの目標は罪のない人々、子どもたちや女性を殺すことだ」と話した。

多くの市民が人道危機にさらされる中、アメリカのバイデン大統領は、「イスラエルは攻撃すべき相手を再確認する必要がある」と発言。イスラエルには自衛する権利があるとした上で、これ以上民間人の被害が拡大しないよう、全力で尽くすべきだと要望した。
(「イット!」 10月26日放送より)