日々パソコンやスマートフォンを使っている人も多いだろうが、ふと気になるのが目の健康ではないだろうか。

長時間モニターを見つめていると、目が“ショボショボ”するといった影響が気になることもある。そして、その原因の一つとしてよく耳にするのが「ブルーライト」だ。

ブルーライトとは、太陽光や電球といった可視光線に含まれる青色光のことで、スマートフォンやパソコンに限らず日常的に浴びるものだが、可視光線の中でも目に対する直接的なダメージが懸念されているという。

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そんな中で、化粧品の製造・販売を行う株式会社ポーラが、この目が“ショボショボ”するといった原因の可能性がある仕組みを「デジタルデバイスの長時間使用等でブルーライトを過剰に浴びることにより、筋収縮が抑制されるメカニズム」として解析。また「筋収縮の阻害を抑制するエキス」を発見した。

ポーラが行ったのは、骨格筋の細胞に対してブルーライト(波長が425nm~495nm)を照射し、筋肉を構成している「筋細胞」から分泌される物質「アセチルコリンエステラーゼ」を定量する試験だ。

(画像提供:ポーラ)
(画像提供:ポーラ)

体の筋肉が収縮するためには、まず、運動神経細胞から筋細胞に「筋肉を収縮させろ」という神経信号を伝える「アセチルコリン」が放出され、筋細胞の受容体に結合。この結合が起きることで、筋肉が収縮するのだという。

筋肉が収縮したあとは、筋細胞がアセチルコリンエステラーゼを分泌。アセチルコリンエステラーゼがアセチルコリンを分解することで、筋肉への刺激が起きなくなり、筋肉が元の状態に戻るという仕組みとなる。

(画像提供:ポーラ)
(画像提供:ポーラ)

ポーラが行った実験では、ブルーライトを照射された骨格筋の細胞は、照射されていない細胞と比較して、生産されるアセチルコリンエステラーゼの量が約4倍になることが判明。

アセチルコリンエステラーゼが過剰になると、アセチルコリンの分解が加速し、アセチルコリンが筋細胞に神経信号を伝える前に消えてしまう。つまり「筋肉を動かせ!」という“指令”が筋肉に伝わる前に消えてしまうことで、筋収縮が起こりにくくなる可能性があるのだという。

(画像提供:ポーラ)
(画像提供:ポーラ)

さらにポーラはこの仕組みだけでなく、「筋収縮の阻害を抑制するエキス」を発見。アセチルコリンエステラーゼの活性を抑制することを目的に有効な素材を探したところ、「マキベリー」(南米チリ原産の濃い紫色の果実)と「カシス」のエキスにアセチルコリンエステラーゼの働きを阻害する効果が認められたという。

この2つのエキスを含むサプリメントを12週間飲み続ける試験を行った結果、「まぶたの重さを感じるか」「目の開けにくさを感じるか」という2つのアンケート項目において、サプリの飲用前後でそれぞれ「感じない」とする人の割合が増えるという結果が出たという(24~65歳の男女25人を対象とした実験)。

(画像提供:ポーラ)
(画像提供:ポーラ)

ブルーライトが目にもたらす影響と、それを緩和する素材の発見。多くの人がパソコンやスマホを使わない日が少ない現代でなんとも嬉しい発見だが、これらはどんな製品に応用されていくのだろうか?ポーラの担当者に話を聞いた。

電子機器の使用「眼精疲労や目元の美容の悩みに」

――この研究を始めたきっかけは?

目元がぱっちりしていると健康的に見えますが、たるんだ状態になっていると不健康的に見えることから、目の開き(目を開いた際の縦の長さ)を測定したところ、加齢に伴い目の開きが低下することがわかりました。

そこで、加齢以外にも何か目の開きを妨げるものがないか考えた際に、自社調査から目の不調を感じる方のうち約73%がデジタルデバイス使用によって不調を感じていることがわかり、電子機器から発せられるブルーライトに着目しました。

ブルーライトの影響で「目が開きにくくなる」ことも(イメージ)
ブルーライトの影響で「目が開きにくくなる」ことも(イメージ)

――ブルーライトを照射する実験、これはどんな状況を想定しているもの?

筋細胞に対し直接ブルーライトを照射した実験ですので「目からブルーライトのダメージを受けている」時と同じ状態を再現した試験となります。今回は425~495nmの波長域で8J/cm2の強度で照射し細胞実験を行いました。 (編集部注:Jはエネルギーを表す単位)

スマートフォンを3時間眺めた場合、425~495nmの波長のエネルギーは約0.1 J/cm2程度と想定されています。生活していく中でダメージは徐々に蓄積すると考えられ、年間に換算するとスマートフォン使用によって浴びるブルーライトの量だけでも36.5J/cm2に相当します。

今回の試験では、新たに普及したデバイスを日常的に使用することで蓄積するダメージ(スマートフォンを毎日3時間ほど使った場合、1カ月半ほどで目に蓄積してしまうダメージと同等)を想定した試験を行っております。


――「筋収縮が起こりにくくなる」と、体にはどのような影響が出てくる?

「筋収縮が起こりにくくなる」のは、「目が開けにくくなる」「目がショボショボする」現象を引き起こす一つの要因ではないかと考えております。

今回は目の周りの不調に焦点をあてた試験であり、体全体への影響については検討できておりませんが、このような症状以外の関係として、デジタルデバイスの使用は眼精疲労や目元の美容の悩みにつながると考えております。

エキスはサプリメントに応用

――2つの植物エキスには「増えすぎたアセチルコリンエステラーゼを阻害する」効果があると判明。これは「ブルーライトを浴びていない」時に摂取しても体に悪影響はないの?

今回明らかになったエキスは、過剰に増えたアセチルコリンエステラーゼを阻害しますが、必要時に放出されるアセチルコリンエステラーゼは阻害しません。


――「ブルーライトを過剰に浴びることにより筋収縮が抑制されるメカニズム」「筋収縮の阻害を抑制するエキス」の解析・発見は、今後どのような形で活かされていくことが期待できる?

本発見で明らかになったエキスを利用した、毎日のデジタルリセット美容に着目したサプリメント「ブライトフォーカス(2024年1月1日発売予定)」への展開を行っております。

デジタルデバイスの長時間使用が原因となって、目の筋肉に“眼筋サビ(R)”(長時間のデジタルデバイスの使用によって発生する活性酸素種やアセチルコリンエステラーゼの総称で、ポーラが名付けた名称。目の筋力低下を招き、様々な目の不調を引き起こす)が発生することに着目しました。

その積み重なるデジタル依存をリセットする美容習慣を提案したいと考え「ブライトフォーカス」の開発に至りました。デジタル社会を生きる現代人の特性をふまえ、「マキベリーエキス」「カシスエキス」を含むアントシアニン素材や、ルテイン素材などを厳選し配合しています。

サプリに応用(イメージ)
サプリに応用(イメージ)

ポーラによると、今回発見した「デジタルデバイスの長時間使用等でブルーライトを過剰に浴びることにより筋収縮が抑制されるメカニズム」「筋収縮の阻害を抑制するエキス」は、目の筋力低下などで起きる目の不調を解消する効果が期待できるというサプリメントに作りに応用しているという。

現代の生活と切り離しにくいデジタルデバイス。ブルーライトの影響を完全に避けるのは難しいだろうが、その仕組みを頭の片隅に留めつつ、サプリなども利用しながらデジタルデバイスとの付き合い方を考えてみてはいかがだろうか。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。