山形・遊佐町に新しく誕生したウイスキーの蒸留所で、新酒の仕込みが始まった。仕込みから販売まで最低3年かかるウイスキー。月光川らしい味わいのウイスキーを目指して、毎日新しい挑戦を繰り返している蒸留所を取材した。

遊佐町に誕生 新たな蒸留所

山形・遊佐町に誕生した「月光川蒸留所」。酒田市の「楯の川酒造」の子会社として創設され、10月からウイスキーの仕込みを本格的にスタートさせた。

月光川蒸留所・佐藤淳平社長
月光川蒸留所・佐藤淳平社長
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月光川蒸留所・佐藤淳平社長:
実際の粉砕を始めたのが10月の第1週から。やっと蒸留もスタートして、今で4ロット目くらい。「やっと動き出した」というのが率直な感想

プラントを稼働させたところ、配管にミスがあったり、廃液の処理に問題を抱えたりと初期トラブルに悩まされたが、1つずつ問題を解決しながら発酵と蒸留を続けている。

月光川蒸留所では、仕込みのノウハウがまだ確立されていない。原料の配分・麦汁を作るために使う湯の温度や蒸留時間など、仕込みを何パターンか変えながら良いウイスキーを作るため試行錯誤している。

月光川蒸留所・長谷川千浩製造部長
月光川蒸留所・長谷川千浩製造部長

月光川蒸留所・長谷川千浩製造部長:
まだまだ改善の余地はいくらでもあるので、これからもっとしっかり月光川蒸留所を育てていきたい

日本酒からウイスキー ビジネスを多様化

ウイスキー作りは大麦を砕く作業から始まる。

完成したウイスキーの原酒は透明
完成したウイスキーの原酒は透明

イギリスから輸入した大麦を機械へ投入し、粗いものから細かいものまで3種類に粉砕する。
そのあと、粉砕した3種類の粉から麦汁を作り、酵母を加える。仕込みに使う水は鳥海山の伏流水。遊佐町に蒸留所を作った理由の1つがこの伏流水の存在だった。

麦汁は4日間の発酵を経てアルコールに変わる。そしてポットスチルという蒸留装置を使って、アルコール濃度を65%から70%に高める。こうして出来上がるのが「ニューポット」と呼ばれるウイスキーの原酒だ。

月光川蒸留所・佐藤淳平社長
月光川蒸留所・佐藤淳平社長

月光川蒸留所・佐藤淳平社長:
たるに漬ける前の原酒。初めて自分のところのニューポットを味わったが、香りもパンチもあって、まあまあの出来ではないかと思う

1832年に創業し、190年の歴史を持つ「楯の川酒造」は、2010年以降、純米大吟醸だけを作る日本酒メーカーになった。

しかし、日本酒は新酒の販売がメインで短期間で売り切る商売だ。佐藤社長は自社のビジネスを多様化させようと、仕込みから販売まで最低3年の時間がかかるウイスキー事業への参入を目指した。

販売は3年後 夢が詰まった蒸留所

6~7年前から準備を開始し、ついに2023年に最初の一滴が生まれ出た。

月光川蒸留所・佐藤淳平社長
月光川蒸留所・佐藤淳平社長

月光川蒸留所・佐藤淳平社長:
リリースするまで最低3年はかかりますので、品質を磨くことをまず最優先にウイスキー作りをやっていきたい

樽(たる)詰めから要する“最低3年”という時間。
ウイスキーを豊潤でまろやかな味に熟成させるため必要なものだが、この間、現金収入はない。ウイスキー蒸留所の立ち上げは大きなリスクがともなっている。

月光川蒸留所・佐藤淳平社長
月光川蒸留所・佐藤淳平社長

月光川蒸留所・佐藤淳平社長:
奇をてらったビジネスではなくて、本当に王道のビジネスのやり方で、きちんといいものをしっかり提供する・伝えるのが大事だと思う。月光川らしい、きれいでピュアでエレガントな味わいのウイスキーを目指したい

日本に初めてできたウイスキーの蒸留所は、サントリーの「山崎蒸溜所」で、1923年に誕生し、2023年でちょうど100年がたつ。「そんな記念の年に、月光川蒸留所ができたのは感慨深い」と佐藤社長は話していた。

佐藤社長の夢が詰まった「月光川蒸留所」。3年後の販売に向けて、仕込みは毎日続く。

(さくらんぼテレビ)

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