日本酒の酒蔵(さかぐら)による長崎県内で初めてのウイスキーづくりが始まっている。“メイドイン佐世保”のウイスキーを目指して、兄弟3人が情熱を注いでいる。

老舗酒蔵の3兄弟が「ウイスキー」づくりに挑戦

梅ヶ枝酒造・杜氏 長野剛士さん:
新ジャンルとして、梅ヶ枝酒造でつくるウイスキーができるように頑張っている

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長崎・佐世保市城間町にある梅ヶ枝酒造。200年以上の伝統を誇る老舗の酒蔵が、今、「ウイスキー」の製造に取り組んでいる。

手がけるのは9代目の蔵主(くらぬし)で、社長の長野 哲也さん(50)、杜氏の剛士さん(48)、製造責任者の太伸さん(46)の3人の兄弟だ。(2023年9月現在)

梅ヶ枝酒造・杜氏 長野剛士さん:
実際の麦芽は食べてもおいしい、普通に香ばしい。お酒のつまみになるくらい。

兄弟がつくるのは「モルトウイスキー」だ。酒蔵には日本酒のための米だけではなく、ウイスキーのための大麦麦芽も用意されている。

この麦芽を細かく砕き、おかゆのような状態にしてデンプンを糖分に変える。

梅ヶ枝酒造・長野哲也社長:
塊を崩してやらないと、モルト(麦芽)の成分が引っ張り出せない。いかに麦芽の成分を取れるかどうか

これをろ過して麦汁をつくり発酵させ、蒸留を繰り返す、この作業は4日続く。麦汁の冷却などに大量の水を使うため、敷地内に新たに井戸を掘った。蒸留に使う蒸留器は、ドイツ製のものを取り寄せた。

梅ヶ枝酒造・杜氏 長野剛士さん:
ウイスキーって茶色なイメージですが、蒸留して出てくるウイスキーは本当にきれいに透明なんです。それを樽(たる)に寝かせることで、琥珀(こはく)色、色と味と香りとが、ウイスキーならではの華やかな甘い香ばしい香りに変わっていく

伝統を継承しつつ…焼酎やジンも販売

ウイスキーづくりのために新たにつくられた「貯蔵庫」も見せてくれた。

ウイスキーづくりに欠かせないのが樽だ。無色透明の原酒を樽にいれ3年以上熟成させることで、味に深みを持たせ美しい琥珀色や香りが付くという。

梅ヶ枝酒造・杜氏 長野剛士さん:
栓をしてしまうと、もう開くのは3年後。おいしくなっていってくれるのではと期待するのみ。祈るのみ

1787年に創業した梅ヶ枝酒造は、長年、佐世保で酒づくりを続けてきた。敷地内には一本の梅の木がある。「梅ヶ枝」という屋号の由来となった木だ。

梅ヶ枝酒造・杜氏 長野剛士さん:
この枯れてそうな、この一枝しか今生きてないんですけどね、本当ご神木的な存在ですよね

伝統を継承しながら日本酒に加え、焼酎やリキュール、甘酒のほか、4年前の2019年からは「ジン」も販売している。

国内だけではなく、販路を海外にも求めて積極的にバイヤーに対する売り込みも行っている。

香港のバイヤー:
長崎の酒は香港ではあまり人気がなかったが、いま少しずつ人気があり、将来にかけてもっと人気が出てくると思う

海外に輸出される酒類は、日本酒をおさえてウイスキーがトップとなるなど、いま日本のウイスキーが世界で注目されている。日本酒や焼酎づくりで培った技術をいかせる、日本酒に続く次の一手に選んだのが、ウイスキーだった。

梅ヶ枝酒造・長野哲也社長:
決意というか、準備もですし、1人ではなくて、やるぞっていうのが3人いたから手を出したっていうところ。30年後、50年後には、「やってくれてありがとう。ご先祖さま」って言ってもらえるような玉になるよねと思っている

梅ヶ枝酒造・杜氏 長野剛士さん:
日本酒もつくるし焼酎もつくるし、いろんな技術を兼ね備えている。プラスアルファしたウイスキーづくりができるのでは

“メイドイン佐世保”のウイスキー 完成は3年後

2023年1月、梅ヶ枝酒造はウイスキーを製造するための免許を取得し、長崎県内で初めて製造に乗り出した。

梅ヶ枝酒造・杜氏 長野剛士さん:
華やかな香りがもうちょっと欲しい

梅ヶ枝酒造・製造責任者 長野太伸さん:
あまりマイルドじゃない

梅ヶ枝酒造・長野哲也社長:
重い香りが目立つよね。これが寝かした時に、この重い香りがずっと残っていくとやろうか

2023年6月からつくり始めて3カ月、試行錯誤の日々が続いている。

梅ヶ枝酒造・製造責任者 長野太伸さん:
今シーズンでフォームが定まると思ったが、なかなか手ごわい。勝手が違う。最終的には「この味は梅ヶ枝にしかないよね」と言ってもらえるようなお酒を目指さないとダメなんじゃない

梅ヶ枝酒造・杜氏 長野剛士さん:
つくるからには世界を目指せるようなものをつくる。理想の味をつくり出すっていうのは意外と難しい。やっぱり奥が深い

梅ヶ枝酒造・長野哲也社長:
今できたばっかりのウイスキーが3年後、樽(たる)に寝かせて製品になった時に、まだ正直想像もつかない。おいしくなってくれてたらいいなとは願う

今シーズンは3,800リットル、20樽分を仕込んだ。今後はワインやブランデーの樽(たる)なども使って熟成させ、味の違いを出しながら「梅ヶ枝酒造にしかつくれないウイスキー」を目指す。

3兄弟だからこそ生み出せる“メイドイン佐世保”のウイスキーの完成は3年後、2026年だ。

(テレビ長崎)

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