福島県会津若松市の認定こども園で、虐待の疑いがある不適切な保育行為があったことが分かった。複数の職員が行為を認めたが、虐待の認識はなかったという。保育の現場を知る人は、人手不足により安定した保育体制が維持できなかったのではと指摘する。

複数の職員が不適切保育

福島県によると、2023年4月中旬に匿名で会津保健福祉事務所に通報があり、県と会津若松市が調査を行った。その結果、複数の職員が園児を叩いたり狭い場所に閉じ込めたり、乱暴な言葉使いをしたりと、虐待が疑われる不適切な保育が確認されたという。

県と会津若松市が調査 虐待が疑われる不適切な保育を確認
県と会津若松市が調査 虐待が疑われる不適切な保育を確認
この記事の画像(7枚)

虐待の認識はない

複数の職員は県と市の調査に対して「こどもが園の外に出るのを防ごうと大声を出したり、手を引っ張ったりした」などと不適切な行為を認めた。一方で虐待などの認識はなかったという。この事態に保護者は「ショックではあるが、先生たちのことを信じている。お任せして様子を見ていきたい」と話した。

子どもを通わせる保護者は「ショックだが様子をみていきたい」
子どもを通わせる保護者は「ショックだが様子をみていきたい」

職員不足が不適切保育拡大に

なぜこのようなことが起きてしまったのか、不適切保育があった認定こども園の園長は「職員の人数が少なく、新しく雇った職員ともコミュニケーションがうまくいっていなかった。昨年度から雇った職員が辞めたりしたために、結果的に8月・9月で職員が辞め不適切な保育が拡大していったのだと思う」と話した。

園長は職員が辞め不適切な保育が拡大していったと説明
園長は職員が辞め不適切な保育が拡大していったと説明

職員の過酷な労働環境

福島県二本松市で認定こども園などを運営し、0歳から5歳までの子どもたち375人を預かる「まゆみ学園」 理事長で福島県認定こども園協会・会長の古渡一秀さんは「我々にとっては一番あってはいけないこと」としたうえで、背景の一つに過酷な労働環境を挙げた。

まゆみ学園理事長で福島県認定こども園協会・会長の古渡一秀さん
まゆみ学園理事長で福島県認定こども園協会・会長の古渡一秀さん

「今、人材不足は一番大きな問題。それで数多くの子どもたちの保育をする。あと1割強を増やさないと、11時間開所には対応できない」と窮状を訴える。不適切保育があった認定こども園では、退職者が相次いだことで職員が入れかわり「安定した保育体制ができていなかったのでは」と古渡会長は指摘する。

まゆみ学園では複数の職員で保育にあたる
まゆみ学園では複数の職員で保育にあたる

保育の質を評価する制度を

古渡会長は「我々自身も、保育の質を上げるためにかなり努力もしている。でもその努力を評価するシステムがない」と話し、現在の監査制度は業務や運営上のチェックだけで「保育の質」自体を評価する制度になっていないという。人材の確保と保育の質を向上させるための仕組み作りが急がれる。

業務や運営上のチェックだけの監査制度ではなく「質」を評価する制度に
業務や運営上のチェックだけの監査制度ではなく「質」を評価する制度に

不適切保育があった認定こども園では、10月26日に保護者に対し説明し、10月末までに福島県などに改善結果報告書を提出する予定。

(福島テレビ)

福島テレビ
福島テレビ

福島の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。