「ChatGPT」などの海外の企業が開発した生成AIを導入する自治体も出てきている。こうした中、神奈川・相模原市は、NECが今年7月に開発した国産のAIを活用する。

相模原市によると国産生成AIを活用するのは自治体で初めて。10月19日には市役所で、市とNECの協定締結式が行われた。

協定締結式にはNECの田中繁広執行役Corporate SEVP(左)と本村賢太郎市長(右)が出席(画像提供:相模原市)
協定締結式にはNECの田中繁広執行役Corporate SEVP(左)と本村賢太郎市長(右)が出席(画像提供:相模原市)
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そもそも生成AIとは、インターネット上のデータを学習し自然な文章や画像を自動で生成する人工知能のことで、「ChatGPT」などがある。

市では今年6月から「ChatGPT」の独自の実証実験を行ってきたが、行政用語や専門用語が含まれた場合の回答に課題があることや情報漏えいなどのセキュリティに懸念があることなどから、将来的にこれらの課題解決につながる可能性の高い国産生成AIの活用を決めたという。

NECの生成AIは、日本語に特化した仕組みや専門用語への対応等による回答精度の向上に加え、個人情報や機密情報などの情報漏えい対策が可能となる見込みだということだ。

日本語に特化されることで、「ChatGPT」などの海外の生成AIよりも回答の精度が上がることが期待でき、業務の効率化にもつながりそうだ。では、国産の生成AIは今後、どんな用途で使われていくのか?

相模原市の担当者に詳しく話を聞いてみた。

業務での実用は次のフェーズ

――自治体として、最初に国産AIを活用することをどう思う?

このたびの取組は、本市のこれまでの実証実験による課題解決のために折しもNECが開発された国産生成AIがマッチしたもので、当初から「全国初」を目指したものではありませんが、確かにNECからも同社が国産生成AIの分野で自治体と連携を行うことは初めてであると伺っております。

本市としては、今回の検証の先に自治体共通の課題解決につながる成果を得ることができれば、意義の高い取組になると考えております。


――生成AIで何を検証していく?

このたびの取組は、NECと共同で行政事務に活用できる生成AIの実現を目指すものです。主に「自治体行政分野に特化した生成AIの実現可能性の検証」「自治体に適した安全で利便性の高い生成AI利用環境の構築に向けた検討」について共同検証を進めていく予定です。

例えば当面は、市が有する情報をNECが生成AIへ学習させ、その成果を共同で確認することなどが想定されます。詳細については今後、NECとの協議の上、決定します。

(※画像はイメージ)
(※画像はイメージ)

――生成AIはどんな用途で使う予定?

このたびの取組は、NECと共同で行政事務に活用できる生成AIの実現を目指す段階であり、業務での実用は次のフェーズと考えております。

このため、あくまで現時点での想定となりますが、これまでも取り組んできた文書作成や要約などに加え、例えば内部事務で使用するマニュアル等を学習させることにより、いわゆるナレッジベース(業務に関する知見を一箇所にまとめたデータベース)を構築することなども可能ではないかと考えております。

将来的には市民へのサービス提供の実現を期待

――自治体が生成AIを使う上でのリスクはある?

「ChatGPT」のようにインターネット上のサービスとして提供されている場合には、個人情報はもちろん、機密性の高い情報を送信してしまうリスクが常につきまとうと考えます。

また、仮に独自環境を構築しての利用の場合にも、一般的に言われているハルシネーション(事実とは異なる内容の出力)や著作権侵害となる出力がある点を踏まえ、活用方法や対象事務を検討することが必要だと考えています。


――生成AIを使うことでどれくらい仕事を効率化できそう?市民のメリットは?

このたびの取組は、NECと共同で行政事務に活用できる生成AIの実現を目指す段階であり、現時点では実現化後の効率化の度合いを見込むことはできません。「2040年問題」も見据えた中で、行政事務の効率化に資する生成AIは対応策の一つとして有効と考えられることから、今回の共同検証によりその実現を目指し、取り組んでまいります。

また、市民の皆様が直接的にご利用いただけるような内容は今回の共同検証には含んでおりませんが、将来的に生成AIの完成度がさらに高まれば、皆様へのサービス提供を実現することも期待できます。



国産生成AIの活用は、まだまだ検証段階ではあるものの、将来的には、行政事務の効率化や市民へのサービス提供も期待できるということだ。今後の動向も見守っていきたい。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。